【掌編400文字の宇宙】老人と孤独な娘
そのとき、突然、「Q町四丁目は何処でしょうか?」とひとりの娘が訪ねた。風呂敷包を持っていた。老人は咄嗟に口が言えなかった。
「さあ、……」と黙っていた。娘は黙礼して立去ったのだが、左足は跛であった。老人は「あっ。」と思わず息を呑んだ。跛のためか、不便であった。
そのうち、老人はQ町四丁目の一膳飯屋に寄った。いつも夕方に、ときどき飯屋に寄るのであった。アジが好きだった。見ると、そこに跛の娘が店に立働いていた。老人は娘の顔を見ていたが、娘は知らぬ顔をしていた。娘は老人に膳