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【行間を読む】猪木・川合「量子力学I」p. 163 (3次元調和振動子型ポテンシャルのエネルギー固有値とパリティ)

キーワード

  • 量子調和振動子

  • エネルギー

  • パリティ

該当箇所

$$
\therefore\quad E_i=\hbar\omega\left(n_i+\frac{1}{2}\right),\qquad i=1, 2, 3; n_i=0, 1, 2, \cdots\qquad\textcircled{a}
$$

(中略)

パリティは、

$$
P=P_1\cdot P_2\cdot P_3=(-1)^{n_1+n_2+n_3}=(-1)^n\qquad\textcircled{c}
$$

疑問

$${\textcircled{a}, \textcircled{c}}$$の式は何を根拠に持ってきたのか。

解説

エネルギー

各成分に対してはp74の1次元調和振動子の理論を使うことができ、(3.98) と (3.104) から

$$
\frac{2E}{\hbar\omega}=2n+1
$$

である。これを計算することで$${\textcircled{a}}$$を得る。

パリティ

まず1次元調和振動子のパリティを調べる。1次元調和振動子の波動関数はn次のエルミート多項式 $${H_n}$$を用いることで (3.100) を参考に

$$
\varphi(\xi)=H_n(\xi)\exp\left(-\frac{1}{2}\xi^2\right)
$$

となる。従って$${\varphi(-\xi)=\pm\varphi(\xi)}$$の符号はエルミート多項式のパリティによって定まる。ここでエルミート微分方程式の間の漸化式(導出は岡山理科大 若松寛「量子化学ノート」などに詳しい)

$$
H_{n+1}(\xi)=2\xi H_n(\xi)-2nH_{n-1}(\xi)
$$

と初項

$$
\begin{array}{l}H_0(\xi)=1\\H_1(\xi)=2\xi\end{array}
$$

からエルミート多項式$${H_n}$$は$${n}$$が奇数なら奇関数、$${n}$$が偶数なら偶関数であることがわかる。以上によって1次元調和振動子のパリティは$${P_{n_i}=(-1)^{n_i}}$$であることがわかった。

3次元調和振動子に戻る。3次元でのパリティは

$$
\begin{array}{rcl}\varphi(-\bm{r})&=&\varphi_1(-x)\varphi_2(-y)\varphi_3(-z)\\&=&(-1)^{n_1}\varphi_1(x)(-1)^{n_2}\varphi_2(y)(-1)^{n_3}\varphi_3(z)\\&=&(-1)^{n_1+n_2+n_3}\varphi(\bm{r})\end{array}
$$

で表されるので、$${\textcircled{c}}$$を得る。

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