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【行間を読む】キッテル「固体物理学入門 第8版 上」p. 176 (NFEモデルにおける金属結晶中単一電子のポテンシャルエネルギー)

キーワード

  • 自由電子に近い(ほとんど自由な)電子モデル (nearly-free electron: NFE model)

  • エネルギーギャップ

  • 金属結晶

  • フーリエ展開

該当箇所

点$${x}$$における結晶内の1電子のポテンシャルエネルギーを

$$
U(x)=U\cos 2πx/a
$$

とする。二つの状態間のエネルギー差は第1近似で

$$
\begin{array}{rcl}E_g&=&\displaystyle\int_0^adx\:U(x)[|\psi(+)|^2-|\psi(-)|^2]\\&=&\dfrac{2}{a}\displaystyle\int_0^adx\:U\cos(2πx/a)(\cos^2πx/a-\sin^2πx/a)=U\end{array}
$$

である。ギャップは結晶ポテンシャルのフーリエ成分に等しいことがわかる。

疑問点

なぜ結晶における電子のポテンシャルを$${U(x)=U\cos 2πx/a}$$とおいたのか。

解説

1次元金属結晶は格子定数$${a}$$の周期的境界条件を満たすので、ポテンシャルはフーリエ級数

$$
U(x)=\displaystyle\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^\infty\left[a_n\cos nπx/a+b_n\sin nπx/a\right]
$$

によって表すことができる。このときテキストの積分は

$$
\begin{array}{rcl}E_g&=&\displaystyle\int_0^adx\:U(x)[|\psi(+)|^2-|\psi(-)|^2]\\&=&\displaystyle\int_0^adx\:\left[\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^\infty(a_n\cos nπx/a+b_n\sin nπx/a)\right]\cos2πx/a\end{array}
$$

となる。しかし

$$
\begin{array}{}\displaystyle\int_0^adx\cos \frac{nπx}{a}\cos\frac{2πx}{a}=\int_0^adx\frac{1}{2}\left[\cos\frac{(n+2)πx}{a}+\cos\frac{(n-2)πx}{a}\right]=0&(n\neq2)\\\displaystyle\int_0^adx\sin\frac{nπx}{a}\cos\frac{2πx}{a}=\int_0^adx\frac{1}{2}\left[\sin\frac{(n+2)πx}{a}+\sin\frac{(n-2)πx}{a}\right]=0&(n\in\mathbb{N})\end{array}
$$

であるから、積分して残るのは$${U\cos 2πx/a}$$の項に限る。

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