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定年女子がWebライターになったら語尾砂漠で迷った
ウェブの記事を執筆するときは、レギュレーションという執筆のルールを守らなくてはいけない。レギュレーションには、表記を統一したり、NGワードを共有したりすることによって、記事の品質にバラつきが出ないようにするという目的がある。
語尾については「同じ語尾を3回以上続けてはいけない」とされている場合が多い。理由は文章が単調になりやすく、子どもの作文のように幼稚な感じになってしまうからだ。3回ルールを回避するためにいろいろな方法がある。
一つ目は、名詞で文章を終わらせる「体言止め」(この文が体言止め)。文章に変化が出るのでおすすめだが、本来その言葉を強調するために使うものなので、多用は禁物だ。
二つ目は「~ません」。例えば「私は反対です」の代わりに「私は賛成できません」。ただし、反対と言えばすむものをあえて否定型にすると冗長と言われかねない。
三つ目は、「~から/~ので/~ため」。「講演が中止になったのは、コロナ禍のため」といった使い方をする。確かに変化はつけられるが、理由を伝える言葉なのでどこでも使えるわけではない。
四つ目は「~ね/~よね」。「同じ語尾が続くと気になりますよね」と書くと、文章が少しやわらかくなったような気がしますよね。語尾を変えると文章の硬さ柔らかさを変化させることができる。
五つ目は「」を用いて会話にするという方法。「」があると見た目にも変化があるし、会話を挟めば文章にも変化が感じられる。
六つ目は「~でしょうか」といった疑問形。「同じ語尾が続くと単調に感じます」の代わりに「同じ語尾が続くとなぜ単調に感じるのでしょうか」とすると、読者に問いかけているような感じになりませんか。
このように、あの手この手を使って語尾が単調にならないように知恵を絞っている。
ある日のこと、テレビを見ていたら『プロジェクトX』の再放送をやっていた。『プロジェクトX』は、無名の企業人たちが困難を乗り越えてプロジェクトを成功させる姿が中高年に支持されたドキュメンタリーだ。久しぶりに聞く田口トモロヲのナレーションが心地よい。
詳しい内容は忘れたが、こんなイメージの語りだった。
「男の名は鈴木太郎。会社のお荷物と言われた開発事業部の部長に就任したばかりだった」
「そこは、リストラ寸前の部署だった」
「鈴木の部署は業務用VTRを製造・販売する部署だった」
おっと、「だった」が3回続いたぞ。しかし目で見る場合の同一語尾3回は単調だが、耳で聞く場合は違う。「韻を踏んでいる」とも考えられる。
「独立採算制を取っていたが、業績は最悪だった」
「VTRは故障が多く、返品が多かった」
「職場に活気はなく、重苦しい雰囲気だった」
「だった」はどこまで続くのだろう。
「鈴木は新商品の開発を思い立った。起死回生のつもりだった」
「しかし、赤字の事業部で、開発費を捻出するのは大変だった」
「ある日電話が鳴った。本社からの呼び出しだった」
ヤバい。語尾ばかり気になって内容が全然頭に入ってこない!