定年女子が取材ライティングを始めた
Zoomによる取材ライティングにチャレンジ
昨年から取材ライティングの仕事を始めた。取材と言っても直接会うわけではなく、Zoomで1時間ほど話を聴き、記事にまとめるという仕事だ。
仕事を発注してくれた会社では、以前は取材に行っていたそうだが、コロナ禍を経て今はZoomが主流になっているという。面談のほうが得られる情報量は多いのだろうが、2000字程度の記事ならZoomズームでも話は聞けるし、何と言っても交通費がかからないのがメリットなのだろう。
Zoomなら日本全国の人に取材ができる。これまで、山梨、青森、高知、大阪、熊本、埼玉、東京などの人に取材をした。
掲載されるのは、個人事業主に、仕事に対する思いやこれまでの経歴、将来の夢などを語ってもらい、その人の魅力を記事にして発信しようというサイト。取材相手は建築家、土地家屋調査士、バレエ講師などさまざまだ。
みんな一国一城の主なので確固たる信念を持っているし、お金を払ってこのサイトに掲載されることを希望する人たちなので、ほとんどの方が仕事のことを熱く語ってくれる。
聞くことがなくなったらどうしようと焦ることも
しかし、なかには寡黙な人もいる。インタビューはおよそ1時間なのに20分で聞くことがなくなったらどうしようと焦ることも。それでも、相手が語ることをメモしつつ、内心では次に何を聞こうかと頭をフル回転させながら、とにかくじっくり聴く。話をあまり掘り下げられなくて落ち込むこともあるが、ふと疑問に思ったことを尋ねてみると、取材相手の新たな一面が見えてくることがある。
スポーツジムのパーソナルトレーナーSさんの場合。画面越しでもわかる筋肉ムキムキの彼は「お客様が準備運動しているのを見ると、その人の体調がわかる」と言った。それだけ聞くとちょっとマユツバな気もする。
質問を重ねていくと、子どもの頃は痩せていたが、少林寺拳法を始めたことがきっかけで格闘技にハマり、強くなるためには体の仕組みや使い方が重要だと思って勉強した結果、人の動きを見てゆがみが生じている部分がわかるようになったということだった。言葉ではあまり多くを語らない人だったが、パーソナルトレーナーの仕事を始める原点に触れた気がした。
外壁塗装業者Mさんも積極的にアピールするタイプではなかった。話しぶりから真面目さは伝わってくるが、何か具体的なエピソードがないとMさんらしさが伝えられない。
予定していた質問を聴き終えてしばらく沈黙があった後、Mさんが「仕事上の分岐点になる出来事があって」と語り出した。
独立して間もない頃、仕事先の老夫婦がMさんを孫のようにかわいがってくれて、毎日3時に一緒にお茶をしていた。しかし孫請けで単価が安かったため、早く作業を終わらせたくてお茶に呼ばれても作業を続けるようになった。
ある日、帰宅してから老夫婦への対応が雑になっていることに気付いて悔し泣きした。それ以来、塗装のクオリティだけでなく顧客対応でも絶対に手を抜かないと誓ったという話だった。
取材相手が安心して話してくれるようなインタビュアーに
取材の途中に沈黙の時間があると、つい何か聞かなければとあわててしまう。しかしその間、取材相手は話すことを考えていたり、過去を思い出していたりすることがある。
どの取材相手も仕事に対する情熱があり、印象的なエピソードを持っている。それを引き出せるか否かはインタビュアーしだい。アタフタせず、どっしり構えて取材相手が安心して話してくれるようなインタビュアーになれたらいいなと思う。