“お客様”って本当に存在するの?想像が現実に変わった日。
「緊張してお腹痛い・・・ちょっとお手洗い行ってくるわ・・・」
2024年11月12日。
出張へ向かう新幹線の中で、何度もお手洗いへ駆け込む同期を心配しているのは、新入社員の中井七愛(愛称:なち)。
「大丈夫・・・?」
「うん、なんとか・・・!」
同じく新入社員の槇野天音(愛称:あまちゃん)がお腹を壊すほど緊張することになったのは、数時間前、社長にかけてもらった一言がきっかけだった。
「今日は君たち2人がていねい通販を代表して行くんだから、よろしく頼む。」
中井と槇野は、新入社員ながら “会社の代表” というプレッシャーを抱えながら、ある場所へ向かっていた。
遡ること1か月前。
総務部リーダーの扇から、中井と槇野にある提案があった。
「お客様に、会いに行ってみない?」
ていねい通販は、創業当時からお客様との “つながり”を大切にしてきたこともあり、通販会社でありながらお客様と直接お会いする機会が少なくない。
過去には「あなたに会いたい」という企画で社長自らお客様の元へ足を運び、そこでの会話を、お客様へ商品と共にお届けしている月刊誌に掲載していた。
ていねい通販を支えてくださっているお客様について知ってほしい、そして2年半後に引退を控えている社長が、大好きなお客様たちと話している様子を胸に刻んでほしい・・・
そんな扇の思いから、新入社員の2人は「社長と一緒に、お客様に会いに行く」という機会に恵まれたのだった。
中井「普段、お電話口の向こうにいらっしゃるお客様にお会いできる!って思うと、すごいわくわくしました。
たくさんいらっしゃるお客様の中でどなたにお会いするか、段取りをどう進めるか・・・扇さんや社長に相談したものの、“自分たちがやりたいようにやったらいいんだよ” と任せてもらったので、2人でドキドキしながら準備しました。」
ていねい通販の商品をご愛顧くださっている、たくさんのお客様からいただいたお葉書などに目を通し、「お会いしたいです!」という純粋な気持ちを込め数名にお手紙を出した末、快くお返事をくださったのが、埼玉県にお住まいの女性(K様)だった。
お会いしたら、どんなお話をしようか。どんな時間にしようか。事前に何をお伝えしておけば、安心して会っていただけるだろうか・・・
中井と槇野にとって、初めてのお客様訪問。わからないことだらけだったが、自分たちに任せてもらったことを全うしようと、一つ一つ準備を重ねた。
槇野「すごい不安もあったんですけど、社長が “いろいろ意識することもあるだろうけど、何よりお前たちが楽しむことが、お客様にとって必ずいい時間になるはずだ” って言ってくださって。その言葉だけを胸に、当日を迎えました。」
そうして、緊張とプレッシャーとわくわくを抱え、お客様(K様)がいらっしゃる埼玉県大宮市へ向かった。
大宮で50年ほど続く、人気の喫茶店で待ち合わせ。
一足先にお店へ入り、ドキドキしながら待っていると、とっても明るい笑顔で席まで向かってきてくださったK様。
ご挨拶を終えると「お酒、飲んでもいいかしら・・・?」と玉露ハイを注文し、にこやかに話してくださるK様のご様子に、中井と槇野の緊張もほぐれていった。
K様の普段の生活のこと、ていねい通販への愛、ご家族とのエピソード、人との関わり方で大切にされていること、恋愛話・・・あっという間の90分を過ごした。
普段、中井や槇野の前では見せないような自然体でフラットな社長の様子も2人にとっては新鮮で、“目の前の人と向き合い、より良い関係性を築いていく” とはこういうことなのかと、社長とK様の笑顔から学んだのだった。
帰りがけ、改札口で自分たちの姿が見えなくなるまで手を振ってくださったK様。じんわりとあたたかい気持ちを胸に、この日のことを振り返り、新入社員の2人はこう語った。
槇野「実際にお会いできた感動が忘れられなくて、本当に幸せでした。でもお客様にお会いしたからといって、売上に貢献できるわけではないし、交通費だって会社に負担してもらったお金で・・・
それでも、こうやって1年目の私がお客様を知ることってすごく大事なことだと思ったんです。こんなお客様がいるんだって想像ができるだけで、お客様にお届けする言葉の数や、想いの濃さが全然違うなって、業務の中ですでに感じ始めているので、本当に貴重で、ありがたかったです。」
中井「全国各地にていねい通販のお客様がいらっしゃることを頭では理解していても、“本当にお客様って存在するの?” と思うほど、やっぱり電話の向こうにいるお客様のことって想像が難しくて。
でも実際にお客様がいらっしゃる土地に足を運んでみると、ちゃんと商品が届いていることを実感しました。商品だけじゃなく、スタッフの皆さん全員で届けてきた “ていねい通販の想い” もお客様はちゃんと受け取ってくださっていて、それがすごく嬉しかったです。」
社長「お客様に会いに行きたいと思ったら、いつでも会いに行けばいい。スタッフ全員で行けなくても、行った人がそこで感じたことを、みんなに伝えてくれればいい。
そうしたら、目の前のお客様に何ができるか、みんなで考えられるようになるから。」
つづく