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もしも僕が、大好きな会社の経営を託されたとしたら。
創業社長が全スタッフの前で「10年後に引退する」と宣言した2017年6月17日。
あの日、あのとき、そして今。
社長の言葉を、想いを受け、スタッフたちは何を感じているのか。
2010年入社 新卒2期生の戸田は、今ではていねい通販のブランドマネージャーを務める。そんな戸田だからこそ語る、あの日のこと。
「ついにこの瞬間が来たか・・・って。社長が “今から10年後に引退する” って明確に宣言したことで、あらためて覚悟を問われた瞬間だったんだよね。」
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“あらためて” 覚悟を問われた。
そう語る戸田は、ていねい通販に入社するタイミングでも、覚悟を問われていたのだった。
「僕が就活生としてこの会社の面接を受けた時に、当時の採用責任者から『社長になる気はありますか?』って質問されて。
正直、最初は即答できなかったけど、そういう気持ちで臨まなきゃいけないんだなって思った。だから最終面接の時には “社長になってやる!” って覚悟を決めて臨んだのを覚えてる。
それなのに、入社してから一生懸命働いてきたものの、社長が退くことがどこか現実の延長線にはなくて、まだまだ先の話だと思ってたのが本音かな。」
引退宣言があったのは、会社の20周年を祝う宴の場だった。
毎年、周年パーティーの後は会社の仲間たちと二次会へ行くのが恒例だった戸田だが、この日ばかりは一人になれる場所に行き、静かに自問自答していた。
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就活生時代から覚悟はしていたが、じゃあ今の自分は、次期社長を担える器なのだろうか。この10年間で何をすべきなのか。
そのとき溢れ出た気持ちや決意を、忘れないように携帯のメモに書き起こしていたという。
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「正直、それまで社長になることってどういうことかよくわからなかった。思いが強い会社だから、ビジネススキルを磨けば良いってわけじゃないのはわかってたんだけど、イメージが全然できなくて。でも、社長の引退宣言の言葉のおかげでクリアになったんだよね。
それが、この言葉。
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「僕は、この中の誰よりもみんなを愛してる自信がある。
この僕以上に、ていねい通販の仲間やビジネスパートナー、そしてお客様を愛してくれる人に、次期社長を託す。」
当時の自分は、新卒採用の責任者をしてたこともあって、仲間への愛情は人一倍強い自負はあったけど、お客様やビジネスパートナーへの愛についてはまだまだだなって思った。だから、あらためて関わる人たちを愛していこうって誓ったんだよね。それが、さっき見せたメモの内容ね。」
そんな愛ある社長に、出会ったときから心底惚れていた戸田。
“いつか自分も社長のような人になりたい” と夢を掲げ、この引退宣言を機により強い気持ちで「会社のため、社長のためならなんでもする」と、覚悟をもってがむしゃらに働いた。
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入社3年目の頃にはすでに経営管理部のリーダーを担っていたが、それからは誓いの通り、カスタマーセンターのリーダーやブランドマネージャーといったあらゆる分野で会社を担うために力を尽くすようになった。
側から見ると、過酷とも言える日々を過ごす戸田だったが、来たるべき日に向けて本気で会社と対峙していく姿は、どこか楽しそうでもあった。
そこから戸田はていねい通販のために自分のキャリアの使い道として、ある答えと出会うことになる。
「もし自分が会社の経営を任されたとしたら、今一番必要なのって “事業をつくること” だなって思ったんだよね。会社の未来を考えたときに、ていねい通販を確固たるブランドにしていかなきゃいけないって。
そう考えたらブランドの再構築が必要だし、売上の柱を増やすことも必要だなって。だから僕は、事業作りが自分の役割だって思うようになった。」
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当時のていねい通販としては異例の新サービス『贈れるWEB絵本』や、新商品『boco to deco(ボコとデコ)』の企画も、こうした戸田の想いから生まれたのだった。
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そうやって数多くのアクションを重ね、経営幹部でありながらもプレイヤーとしてひたすらに走り続けている戸田は、社長引退まであと2年半となった今、何を思っているのだろうか。
「入社してから14年間、誰よりも社長になりたいって思いでやってきた自負はあるよ。ただそれは、立場に固執してるわけではなく、“会社のために何ができるか” を考えた上で、自分ができる最大限をやりたいと思ってただけ。
だから僕は今、事業を必死で成長させようとしてる。だってこの会社が大好きだから。社長が変わっても絶対に100年先まで続かせたいって思いがあるから。何がなんでも、この場所を守りたいんよ。
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・・・って、そこまで思わせてくれたこの環境に感謝しかないし、自分の命の使い道があるって幸せなことだと思う。だからこそ最高の2代目時代への継承をして、社長にも会社にも、恩返しがしたいね。」
社長引退まで、あと882日。
つづく