話題も変わるよね。
最近入った社員(年下)が立て続けに彼女持ちだのなんだの、もうすぐ結婚するかもしれないだのなんだの。
同い年の同僚は立派に子持ち。
おかげで三十路独身の自分は肩身が狭くて……なんてことはなく。
結婚してるからどうの、してないからどうの、とかってはならない職場なので、そこはよかったかなって思う。
だし、今あんまりそっち方向に興味が無い。持ってる暇が無い。
などという話をしながら夕飯の準備をしている。
今日は鶏が食べたくなったので胸肉を焼く準備中。
「うちも子どもいるとかふえたなー。産休とか育休とか重なると大わらわ。似たような業務の事務チームは結構ローテあるから、やりくりなんとかなってるけどね。」
サラダを作ったあとの余ったきゅうりをかじっているおねーちゃんはしっかり苦労しているようだ。
今年からちょっとえらくなってそのあたりの調整とかも面倒見始めてるらしい。
うちの会社は未だに男性の育児休暇的なところには消極的で、取ってる実績をほとんど見ない。
そういう意味では、特に苦労はない。
当分結婚しなさそうだから引き上げられた、らしい――そういう噂話を聞いたと、今年のはじめに愚痴られた。まったく、失礼な話である。
どういうタイミングかその頃には結婚前提の人と同棲してたというのに。いやまあそのあと別れてたけど。
このあたりの話をするといいことないのでもう出さないことにしている。
「いっそのこときょうだい婚もオッケーになれば実績だけはできて楽なんだけどなー」
余ったきゅうりを食べ終えたかと見ていたら、冷蔵庫から新しいのを出してきた。適当に皮を剥いて雑に塩を振って軽く揉んでいる。
最近きゅうり高いけど、まあいいか
「うんたら制度なくても、きょうだいはそもそも家族だし、名字も一緒だし、それはもう意味ないのでは」
「分かってないな―てーくん、お嫁さんになるのはまた違った話なんだから」
「そんなもんかね」
さりげに「てーくんのおよめさんになりたい」と言われたが、まあこれはいつものことなのでもう流せるようになってきた。
……そりゃ、俺だってさ。
「まあでも、私の最期はたのむよ」
皮目を下にして焼き始めたあたりで、テーブルの準備をしているおねーちゃんにぼそっと頼まれた。
そんな、熟年夫婦の茶の間の話題かよ。まだ早くないですか、見切りつけるの。
「ん? いやーでもてーくんに看取られるのも、てーくん看取られるのも捨てがたいな?なやましいな」
そこ、「捨てがたい」って感情になるのよくわからんけど、死期自由なのか。
周りは周りで家族ライフのことばっかりで、うちらはうちらで老後の話で。
こんな話題するくらいには年をとってしまったねえ。
いやーーーーー俺はまだ諦めてないからな結婚