おねーちゃんとの日常。②

「あー、これはね、あれですよあれ。もうだめですこれは。」
夕飯の献立も考え始める午後4時。仕事を進めていたら急にきた。くしゃみ。止まらない、くしゃみ。今日新しい箱ティッシュ持ってきてなかったら大惨事になっていた。
いや、そろそろ一回収まろう?隣の先輩も前の先輩も心配そうな目で見てるよ?というか普通に仕事が進まない、ちょっと一回収まろう?

……だめでした。
収まるどころか間隔が短くなって、忙しくもなかったし定時で帰った。
12月になって1週間以上経ってしまった。当たり前に冷えるし、帰り道の空気がしみる。歩を進めるごとに風邪に近づいている気がする。

「今日は鍋かなあ。」
キャベツがあったし、鍋つゆもストックがある。
葱をふんだんに入れよう。豆腐は…厚揚げにするか。鶏だんごも足したい。
色が足りないか、人参でも花形で抜いとくか。
このまま買い物行きたいけど、さすがにマスクくらいしなきゃだな。今日はおねーちゃんちょっと遅くなるって言ってたし、準備して放り込むくらいならぐすぐす言いながらでもできるでしょ。

・・・

「…しんど。」
夕飯の具材と、お弁当用の冷食と、ゼリーと、アイスと、アクエリとって買ってきたらまぁまぁな量になってしまった。
つゆ沸かして、全部そいそいぶち込んで、煮立たせたらおねーちゃん帰ってくるのを待とう。あー、つかれてきたな……

「ただいまー!」
あ、おねーちゃんだ。帰ってきた。寝落ちしてなくてよかった。
「おかえり、おねーちゃん。今日も寒かったね。」
冷たくなってるほっぺたを両手で挟むと、さらに両手で挟まれる。
今日はあんまりくっつくのもよくないかな。

「ごめんね、しんどいのにご飯作らせちゃって。」
「大丈夫だよ、買い物行けるくらいにはまだ大丈夫だから。鍋もつゆだから味乱れてない、と思う。」
2人で夕飯を済ませたけど、なにか物足りない。

「1杯だけ!1杯だけだから!ぐっすり眠れるから!」
「ダメな人みたいなこと言わない!薬効かなくなるでしょ!」

結局アルコールを摂らないまま薬を飲んでシャワーを浴びて、いつもより早めに寝ることにした。
さすがにこんな状態では一緒に寝れないから、客用布団を広げる。
旅行以外で1人で寝るの、いつぶりだろう。

「1人で起きててもやることないし、たまには私も早く寝ようかな。」
いまいち眠れずに布団の中にいたら、おねーちゃんの声がして明かりが落ちた。
「おねーちゃんは大丈夫?つらいとかない?」
「いまのとこだいじょうぶー、明日2人してだめになってたら久しぶりにゆっくり平日すごそっか」
「寝るんだよ、そういう日は…」
などと話してたら急に眠気が来た。そっか、1人だったからうまく眠れなかったのかな。風邪ひいててもからだは正直ですこと。
「おやすみ、おねーちゃん。」
「おやすみ、てーくん。ちゃんと治してね。……うつさないでね」
「さっさと元気になります。ありがとね。」

・・・

翌日。早く寝たせいかいつもより少し早く目が覚めた。
調子はだいぶいい、というよりちょっと盛れば全快。
まだ寝てるおねーちゃんの頬を軽く撫でる、この感じだとうつしては…ないかな?

風邪ひいても、寂しくないのはおねーちゃんのおかげだな。
今日はケーキ買ってかえろ。

「あれ、てーくんはやいねー。おはよー」
おはよう、おねーちゃん。

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