一日一書一画②
さて、2回目です。
漢字とは画数がある程度あった方が見映えが良いです。
書道作品でも字面はとても大事です。
日展で解説をご一緒した作家さんが
「私は中日ドラゴンズが好きです。だからテーマに選びました。しかし『中日』だと作品として字面の見映えが悪いので『昇龍』にしました」
と解説されていました。
確かに『中日』では人間よりも大きな紙に書くにはシロの面積が大きすぎますね。
ということで、ここら辺から20画位までは程よい画数なので一文字でも見映えがよろしいかと思います。
6画「光」
700年代・顔真卿(臨)・楷書。
顔真卿を書くときはむっちむちに書きましょう。
もっとも太い楷書といわれている筆法です。
はねに瘤をつけたりするのが特徴で、彼の登場によって個性的な作品にも価値を見いだす風潮となりました。
彼の行書三部作も有名ですが、個人的には裴将軍詩は破体字の名作中の名作だと声を大にして言いたい。
彼の楷書はフォント・明朝体のモデル。
7画「希」
600年代・書譜(臨)・孫過庭・草書。
前回が光だったので新幹線繋がりで希。書論として様々な考察を述べた書譜は文字も一級品。
折り目をつけた紙に書いているので、折り目の部分も再現するのが腕の見せ所。
孫過庭や式子内親王など紙を折って書く人はかなり多く、写経だとさらに多いです。
「紙を折って書いてはダメ」というのは間違いで「紙を折っても折らなくてもどっちもいいよ」が正解です。
ちなみに私は作品によって折ったり折らなかったりです。書体や紙のサイズで決めます。
8画「明」
BC1700年・甲骨文字(創)・篆書。
甲骨文字が発見されたのは1800年代。
それまでは文字とは認識されず、竜の骨の模様だと思われていました。かなり正確な記録書で、日付から石高までしっかり記載されている優れものです。
明は個人的に一番好きな成り立ちの漢字。
実は「日」と「月」ではなく、「窓」と「月」。
窓から差し込む満月の光があまりに明るいから「明」となりました。
だから「明」はガンガンな日の光ではなく、清廉な月の光をさします。
9画「海」
813年・風信帖(臨)・空海。行書。
空海は言わずと知れた日本の書家のトップに君臨する人物。弘法大師としても有名ですね。
字の上手い人は、何百年たってもまるで先週書いたかのような潤いのある文字をしています。空海は瑞々しさが群を抜いています。
風信帖は最澄に宛てたお手紙。仏教観に関する質問書です。
ここで空海は「海」を下水で書くんですね。
これは異体字と言って「島」と「嶋」みたいな違いです。でも当時でも下水の海はとても珍しかったようです。
10画「家」
1800年代・楊峴(創)・隷書。
楊峴の文字はひたすらカッコいい。それにつきます。
線の輪郭が隷書にしては過なり動きがありますが、骨格に関してはスキッと中央を通ってます。
明清は懐古主義と革新主義が交互に訪れた時代で、篆書隷書の新たな表現法が模索されました。懐古主義は碑学派なので、帖ではなく石碑を主に研究します。
なので、篆隷を学ぶ場合、明清も合わせるとなかなか楽しいです。
時節柄 Stay Home ですね。
まさかこんな混迷極める時代にかち合うとは、それこそ4ヶ月前まで想像もしてませんでした。
思うことは、次のパリコレってマスクかしら。
さて以上です。お楽しみいただけましたか?
そろそろネタも尽きてきて、臨書できる作品も減ってきました。
31画とかどうしよう。
みきり発車って怖いですね。
自分でやっといてなんですけどね。
次は11画~15画。
映えな文字が続きます。
よろしくです。