見出し画像

噴石の脅威から守ってくれるVOLEVAN™とは


世界有数の火山国、日本が抱える火山の脅威

日本にはどれくらいの活火山(*1)があるかご存知でしょうか?

実は、111もの活火山が分布しており、世界の活火山の約7%を占めます。
その中でも約50火山が常時観測火山(*2)として選定されています。そして、一度噴火が始まると、火砕流、溶岩流、火山ガス、火山灰、噴石(*3)などが大きな被害をもたらたす可能性があります。

比較的記憶に新しい、2014年9月に御嶽山において発生した噴火では、火口付近の登山客が飛来した噴石に襲われて、多くの命が犠牲になるなど、戦後最悪の噴火災害となりました。しかし、近傍の山小屋まで退避できた方々の多くが結果的に難を逃れることができたとの報告もあり、突発的な噴火においては、噴石の直撃を回避するのに退避壕等が有効であることが改めて示され、その充実を図る必要があると認識されました。
一方、小さな噴石でも、高速で飛来すれば丈夫な建物を損壊することもあるし、風に乗ると10km先の建物にまで降り注ぐこともあるそうです。そこで、私たちは、高機能繊維を活用することで、噴石に対する衝撃耐力を向上することができる製品を作り出すことはできないかと考え、開発を始めました。
(*1)活火山:概ね過去1万年以内に噴火した火山および現在活発な噴気  
       活動のある火山
(*2)常時観測火山:今後100年程度の中長期的な噴火の可能性及び社会
       的影響を踏まえ特に監視・観測体制の充実が必要と選定さ
       れた火山
(*3)噴石:噴火によって火口から吹き飛ばされる岩石のうち、直径数㎝
       程度のものを小さな噴石と呼ぶ、小さな噴石は風の影響を受
       けて遠方まで流されて降るが、特に火口付近では弾道を描い
       て飛散し、登山者等が死傷することもある

VOLEVAN™の秘めた可能性
噴石対策の製品開発において最も重要視されるのは、言うまでもなく、噴石に耐えうる耐衝撃性能に優れていることです。そのため、高機能繊維の中で高強力・高弾性率という特徴を持つスーパー繊維であるアラミド繊維に着目しました。その1つである帝人のパラ系アラミド繊維テクノーラ®は、高い耐衝撃性があり、軽量でかつ、同じ重さの鋼鉄の約8倍の引っ張り強度があります。このスーパー繊維をシート状にして、屋根などに敷設してはどうかと考えました。
実証実験は、内閣府(防災担当)、防衛大学校、山梨県富士山科学研究所の協力のもとで行われ、噴石に見立てた飛翔体を山小屋に見立てた場所に衝突させることで開発品の性能を検証しました。その結果、アラミド繊維織物を2枚重ねることで、質量2.66kg、速度300km/h 程度の飛翔体が貫通しないことが確認できたのです。私たちは、この噴石対策シートを火山(Volcano)から逃れる(Evacuation)という思いを込めて、VOLEVAN™(ヴォルエバン™)と名付けました。VOLEVAN™は、噴石貫通防止や衝撃緩和効果により、建物や人への被害を最小限に抑え、私たちを噴石から守ってくれます。

過酷な環境下でも発揮されるパフォーマンス
実際に噴火が起きる場所は、高地である上に火口に近い過酷な環境下です。VOLEVAN™は熱分解点が400℃以上と高く、また火山性ガスに含まれる酸に対する防錆性に鋼板対比で優れているため、現地でも高いパフォーマンスを発揮できます。
また、既存の屋根の葺替え時に、建築用ホッチキスなどで取り付けることができ、カット加工も可能なため、比較的施工が容易に行えます。さらに、軽量なため、高地への輸送もしやすく、より危険性の高いエリアや建屋に対して重点的に設置することができるのです。
 
これからの未来
既に九州から東北の活火山周辺エリアを中心に、避難小屋、ビジターセンター、ロープウェイ駅舎などの新築や改修時に採用され始めています。
誰にでも起こりうる災害は、予測することが難しく、日頃からの備えが必要です。災害による被害を少しでも軽減し、私たちの生命・財産や地域の暮らしを守り、社会全体の防災力を向上させることを目的に、これからも開発を続けていきます。
 

以 上


この記事が参加している募集