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排水処理の課題に挑戦する脱水助剤フローデハイ®とは

世界を取り巻く水資源の課題
世界的に環境問題がクローズアップされる中、海に囲まれて、その資源を活用しながら産業を発展させてきた日本は、とりわけ海洋汚染を減らす取組みを続けてきました。特に、産業発展に欠かせない工場や事業所などからの排水に対しては、「水質汚濁防止法」によって有害物質の排出が制限されており、人々の健康や環境を安全に守ることが義務付けられています。
こうした環境問題に直結する排水処理の重要性は年々高まっていますが、排水処理工程の中でも二酸化炭素(CO2)は発生しますし、最終的な廃棄物を適切に処分しないと環境に悪影響を与える可能性もあります。こうした排水処理に関わる様々な問題に対して、私たちは繊維技術を応用することで、ソリューションを提供しようと考えました。
今回は、排水処理の課題に向けた私たちの挑戦をご紹介します。
 
日本における排水処理の現状
現在、排水処理に多く用いられているのは「活性汚泥法」と呼ばれる技法で、好気性微生物(※1)の働きを利用して排水中の有機物を分解します。その後、沈殿槽で有機物を分解した処理水と活性汚泥(※2)のフロック(かたまり)を上下に分離し、上澄み液を処理水として放流する仕組みになっています。
(※1)水中に溶解している酸素を利用した代謝機能を備えた微生物
(※2)好気性微生物を含んだ有機汚泥の総称、沈殿槽で回収され再び排水処理に利用される
こうした工程の中で、増えすぎた活性汚泥や浮遊物を余剰汚泥と呼んでいます。余剰汚泥は多くの水分を含んでいるので、脱水で効率的に量を減らすことが難しく、また、有機物を含んでいるため、余剰汚泥の最終処分には適切な処置が必要となります。
この廃棄物である汚泥の処理方法の代表として挙げられるのが焼却処分ですが、皆さんもご存知の通り、焼却にあたっては大量のCO2が発生することが問題となっています。また、近年、廃棄物の運搬費用や焼却費用が高騰し続けていることもあり、汚泥の量を削減することが急務となっていました。
汚泥の含水率を下げて量を減らす方法の1つとして、昔から繊維質のもの(稲わら等の天然繊維(又は植物繊維))が脱水助剤(※3)として用いられてきましたが、汚泥に大量に入れる必要があり、しかも必ずしも汚泥量の削減に繋がらないという課題がありました。
(※3)汚泥に混入することで汚泥中の水分を外部に排出し含水率を低減する助剤
そこで私たちは、少ない添加率でも高い脱水効果を実現できる繊維助材を作れないかと開発に着手したのです。

余剰汚泥の処理過程

フローデハイ®の機能
私たちが開発した脱水助剤フローデハイ®は、ショートカットファイバーと呼ばれる非常に短い長さにカットされた特殊繊維でできています。
まず、汚泥が溜められているタンクの中に凝集剤とフローデハイ®を添加すると、フローデハイ®の細かい繊維が汚泥の中に入り込み、効率よく汚泥同士をつなぎ合わせてフロックを形成することができます。その後、脱水機で脱水する際にも、フローデハイ®がもつ導水効果により、たくさんの繊維を伝って水分を外に出しやすくし、より脱水効果が上がるという仕組みです。
フローデハイ®の特長は、汚泥に投入した際に非常に分散性が良いことや、汚泥固形物の量に対して非常に少量の添加(約1%~4%)でしっかりと脱水効果を出せること、有機物の種類や水分量によって脱水するのがより難しい汚泥にも対応できることなどです。
これらの機能によって、少量の脱水助剤で汚泥の脱水効率を向上させ、汚泥中の水分を減らし、汚泥そのものの発生量の削減を実現できたのです。
脱水助剤フローデハイ®の効果は大きく3つ挙げられます。
1つ目は、汚泥の発生量削減により、運搬や処理に係る汚泥処理コストを軽減することができます。
2つ目は、課題となっているCO2の排出量の削減です。汚泥の発生量が削減されたことに加えて、ポリエステルであるフローデハイ®が助燃効果を発揮することにより、汚泥焼却時に使用する燃料が減りました。結果としてCO2排出量の削減も実現できたのです。
3つ目は、フローデハイ®を使用した際に、汚泥の凝集性がアップし、汚泥リーク(※4)が減少したという効果も生むことができました。
(※4)汚泥が処理装置や配管から漏れ出す現象

脱水助剤添加後の汚泥

未来に向けて
さきほど、汚泥の処理方法として焼却処分をご紹介しましたが、他にも汚泥を肥料にする堆肥化によって処分するケースもあります。堆肥化の場合は、「素材がポリエステルだと、肥料中に残留してしまうのでは?」という懸念を持たれるかも知れません。そこで現在、フローデハイ®は、ポリエステル素材のものと、一般的に生分解性(※5)を有すると言われている素材のものを展開しており、汚泥の堆肥化を前提としている場合は生分解性素材をご提案しています。
(※5)物質が微生物の働きによって分解され、最終的に自然界に戻る性質

また、生分解性の素材のものだけではなく汚泥中への分散性能を高めた天然由来繊維の脱水助剤についても日夜研究開発を進めています。

水とは切っても切れない関係で生きている私たち。これからも環境を守り、持続可能な社会を作っていくために、繊維の力で水処理技術の向上に貢献していきたい、と担当者は語ります。

以上

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