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ポリエステルとナイロンを融合させた新素材「ミクセルNP」とは
みなさん、アウトドアやスポーツではどんな素材のウェアを着ていますか?
近年、純粋にスポーツを楽しむために機能性を重視したウェア選びをする方がいる一方で、スポーツ・アウトドアウェアを日常の生活に取り入れ、普段着使いする方も増えてきました。スポーツ・アウトドアとライフスタイルが融合したマーケットは以前より大きく拡大し、機能性はもちろんのこと、今までとは違う新しい外観や風合いをあわせ持つ商品に対するニーズは、ここ最近高まっています。当社の開発担当者はそんな変化にいち早く着目し、今までとは違う新たな素材開発への模索が始まりました。
異素材の融合
これまで、スポーツ・アウトドアウェアでは、主にポリエステルやナイロンが多く使われてきました。ポリエステルは吸水速乾性を付与したり、多様な糸種を利用してストレッチ性を持たせることができます。一方、ナイロンは色の鮮明性、耐摩耗性が優れているという特長があります。このように2つの素材は特徴が全く異なるため、目的に応じて使い分けがなされ、それぞれの開発が別々に進められてきました。そのため、2つの素材を組み合わせた素材開発は進んでおらず、両者の糸を交織したり交編したりして、生地のなかで組み合わせるというマクロ的な手法が一般的でした。
こうした中、当社の開発担当者は、それぞれの良さを活かしながら2つの素材をミクロ的なレベルで組み合わせて、今までとは違う新たな素材を作りたいと感じていたのです。そこには、長年ポリエステルに向き合い、その技術を培ってきたからこその強い想いがありました。
困難な開発
一般的に、長繊維は溶融したポリマー原料を細い孔がたくさん開いたノズル(口金)から押し出して作られます。今回、ポリエステルとナイロンという異なるポリマー原料を同時に異型断面糸として紡糸する独自の技術を開発することで、ポリエステルとナイロンの長繊維の単糸が偏ることなく均一に混じりあう特殊異型断面マルチフィラメント糸を開発しました。
コンセプトとしては大変シンプルなものですが、ポリエステルとナイロンは、ポリマーの性質が異なり、紡糸の思想や条件がまったく異なるため、2つの素材を同時に1つの糸にすることは困難の連続でした。また、両者は染料や染色温度も異なるため、紡糸したあとの加工でも苦労の連続でした。このようにとても難易度の高い挑戦でしたが、今まで培ってきた知見と技術を活かし、まったく条件が異なる素材を同時に紡糸から加工まで行う技術を、ようやく完成させたのです。
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ミクセルNPの特長
ミクセルNPには大きく3つの特長があります、
1つ目は、ポリエステルとナイロンの長繊維が単糸単位で均一に交じり合う設計にしているため、深みのある色合いやきめ細やかなシャンブレー調外観*1 を持つこと。
*1 シャンブレー:タテ糸に色糸・ヨコ糸に白糸(もしくは別の色糸)」を使った平織り生地で、光の当たり方によって見え方が変わる光沢感や繊細な色ムラ感が特徴。
2つ目は、原糸の断面が緩やかなV字型になっているため、嵩高性やスパン調風合いを有していること。そして3つ目は、ポリエステルの吸水速乾性や形態安定性、ナイロンの耐摩耗性や発色性など両方の素材の特長がそのまま保たれているところです。
ポリエステルとナイロンが半分ずつになると機能も半分になると思われがちですが、データ上では性能面は大きな差が見られないことがわかりました。全く同じ、というわけではないのですが、生地の織り方や編み方の条件や密度などを緻密に計算して作りこんだからこそ実現できた、新たな素材ならではの特長です。
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今後の展開
老若男女を問わずスポーツやアウトドアを楽しむ人が増え、そのウェアを普段着使いするファッションスタイルが広がってきている今、ミクセルNPの活躍の場もこれからどんどん進化していくのではと考えています。今後の新たな市場の模索はもちろんのこと、私たちにしかできない素材の開発に日夜力を注いでいきます。
以上