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実はMリーグって監督の采配実力ゲーなんじゃ?
2022年初頭、Mリーガーの一人鈴木たろう選手がこんなツイートをして、タイムラインに波紋を呼んだ。
Mリーグで監督の采配みたいな話よく見るけど、麻雀に采配とか関係ある?
— 鈴木たろう (@SuzukiTaro_npm) January 24, 2022
てか采配とかできんのか疑問だよね?
単純に強い選手をなるべく多く出すくらいしか思いつかないんだけどw
確かにそうだ。別に誰がどの順番で出ようが、麻雀というものの競技性・ゲーム性を考えれば結果に影響はほとんど無い。
よく実況の日吉さん辺りが「監督の采配が冴え渡る!」的なことを言ってその度に「何を馬鹿なことを……」と、画面を冷めた視線で見つめていた記憶がある。
しかしその考えは改めさせられた。
4/26に行われた2021-22シーズンファイナルの最終戦を見たことで、だ。
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まず結果から言うと、フェニックスは惜しいところまで行ったが、サクラナイツが優勝した。
その最終日第二試合の選出メンバーはこんな感じだった。
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個人的に予想外だったのが、フェニックスの人選だ。この日の一試合目は近藤選手だったので、連投ということになった。
ここはドラフト一位且つフェニックス屈指の実力を有する魚谷選手の選出だとてっきり思っていたのだが。
逆に他のチームは予想通りだ。アベマズは言うまでも無く多井選手を起用し、サクラナイツは当然のように堀選手だった。
昨年決勝の最後の一戦では内川選手を使っていた覚えがあるが、サクラナイツ監督の森井さんの中で堀選手の信頼度が高まったと言うことなのだろう。
思えば堀選手は今シーズンを通して、かなり多くの出番があった。レギュラーシーズンにおいて総試合数30ということでこれは全選手中ナンバーワンだ。(二位は29試合の小林選手)
ファイナルにしても7/12の出場数ということで全チーム中ナンバーワン。
(沢崎選手の離脱という事情はあるのだが)
さてここで冒頭の話題に戻るが、ここまで森井監督は恥も外聞も無くMリーガーの中でも最強と呼ばれる堀選手をひたすら繰り出し続けた。
そしてファイナル、その最後の一試合においても首位という好位置に付けて迎えることが出来たわけだ。
では改めてファイナル最終戦の流れを見ていきたいと思う。
今回は最終戦の主役となったフェニックスとサクラナイツの条件にだけ注目する。
フェニックスは7600点差を付けてサクラナイツに一着順差を付けることでファイナル優勝。逆にサクラナイツはフェニックスよりも着上ならオーケー、しかも点差が7600以内でも良しの比較的有利な状況だ。
そして開幕の東一局から激しい和了の連発となった。
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しかもあがったのはほぼ目無しだったといえるファイトクラブ滝沢選手だ。
連続で6000オール、2700オール、4200オールとして点数を稼ぎ一気に抜け出す。
そしてこじんまりとした点棒の移動が続いた後、局は流れて東4局。
堀選手の親番にして、サクラナイツはもちろんのことフェニックスの近藤選手にとっても勝負どころの一局だ。
まず近藤選手が先手を取った。赤5s含みのポンテン2000点両面という堀選手の親番を流せる好手が入った。
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だが数巡後、親の堀選手から満を持してリーチの声。
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打点は不十分なれど、両面のリーチで満足といったところ。
ここは地獄の底まで二人のめくり合いが続くものと確信していたのだが・・・。
リーチ一発目に近藤選手は危険な7pを掴んでしまう。
だが押すしか無いだろう。堀選手のリーチはまばらな捨て牌で危険牌も絞りきれない上に親マンでもツモられれば、苦しいリードを築かれてしまう。確かに直撃は一等不利になるが、逆にあがり切れれば優勝の糸を大きくたぐり寄せることになる。
その上、近藤選手は両面聴牌なのだ。勝利の公算も高い。
押せ、押し切れ近藤。と画面を見ていたのだが。
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なんと一発目からオリ。
嘘だろ……と思いつつ、同時に近藤選手は状況・条件をちゃんと理解しているのか疑問に感じてしまった。
思えば近藤選手は無意味なオリがシーズン中通して数多く見られた。
その無意味なオリの極地、代表例が2022年2/21に行われた試合での出来事だ。
局面として南3局、競ったトップ目の亜樹選手がやや変な捨て牌でリーチと来ている。そして近藤選手は二着目。
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トップを取るために亜樹選手のリーチは是が非でも捌きたいところだが、一発目に場1の西を掴んでしまった。
確かに亜樹選手のリーチは変則手が微かに臭う捨て牌だ。
とはいえ危険牌のパターン数は多く、何より近藤選手は両面の手を聴牌しているのだ。
つまりここは押す一手であり、特に深く考える必要は無い。
なのに近藤選手は・・・
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現物を抜いて降りてしまう。
その結果――――
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勝利者インタビューではニコニコ笑顔の亜樹選手が見られることになった。
そして近藤選手は三位だった。
尚、近藤選手が全ツッパしていた場合、程なく亜樹選手が2pを掴んでいたという顛末はもうお伝えするまでも無いことだろう。
正直、並の選手ならトップとは言わずとも連帯はとれていた。そのはずだった。なのに近藤選手は信じがたいような三着を取った。
これらのことから近藤選手はあり得ないような失着を犯す選手であるということが言える。
そしてこの大事な最終戦、フェニックスの吉野監督はそんなA級ミスをする選手に自らの行く末を委ねてしまったのだ。
これは明らかに選出ミスである。
選手たちの雀力を正確に見極める能力があれば、ここは魚谷選手を選ぶ以外になかったのだ。
対するサクラナイツの森井監督はドラフト一位の内川選手では無く、堀選手をずっと出し続け、最後の最後も堀選手に任せる決断をした。
そしてその判断は疑いようも無く、正解だった。
麻雀というのは有利なポジションにいると選択肢が多くなり、判断が難しくなる。
断ラスが全ツッパするしかないとか、金持ち喧嘩せず、とかそういう場面を考えてもらえればおわかりいただけるだろう。
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次々に変わる場面に合わせ、攻守のバランスを丁寧に切り替えていき、リードのあった序盤は引き気味に。
そして逆にフェニックスに引き離された後は、しっかり手作りして見事なハネマンツモ。
放銃は怖い、ラスだけは許されない、しかし立ち止まっているだけだと捲られる。
普段は冷静な堀選手も表情や手の震えから随所に、彼が勝負に痺れていることを感じた。
そんな状況でも行くべきはリーチ、下がるべきは下がり、とミスらしいミスをしない。
その完璧なハンドリングで堀選手は実力によって優勝をもぎ取ったのだ。
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反面、近藤選手は「自分の麻雀」という言い訳に終始溺れていた印象だった。
彼はこの聴牌からなら放銃しても仕方ない、降りているのだから手詰まって放銃しても仕方ない……。
そんな負けの理由を探している麻雀に思えてしまった。
個人的に書き記しておきたいのがこのオーラスである。
勝負は最後までもつれ競り合い、なんと近藤選手はアベマズから以外のあがりなら何でもオーケーのほぼあがりトップ。
他方サクラナイツはとりあえず一回はあがっておくしかないだろうという息詰まるギリギリの勝負になった。
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そして局は終盤。
近藤選手も堀選手も手の進みは遅く、多井選手が次局以降の展開を良くするために形式聴牌を入れたところだった。
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十三巡目というところで近藤選手は塔子すら不足している苦しい3シャンテンとなっていた。そこにこぼれた2sである。急所でも何でも無いのは確かだが、鳴けば一応手は進む。近藤選手の動きが止まった。
実況の日吉さんも「これは鳴くしかないだろう!」と叫ぶ。
が、近藤選手は無言で牌山に手を伸ばした。
はっきり言って、微差だがこれは鳴くべきだ。明確に手が進むし、堀選手は近藤選手のチーテンをいくらかケアしなければならなくなる。
もちろん一つ鳴いてしまうと、ケイテン狙いであろう多井選手は万が一の放銃を恐れて甘い牌はこぼれなくなりそうだが、それでも鳴く。手が進むから。
なのに近藤選手は鳴かなかった。たぶん彼のスタイル・打ち筋としてこれは鳴かない牌なのだろう。それはわかる。
だとしてもそのスタイルを擲ってでも切り込む気迫が見たかった。
個人的な感覚として、このスルーは堀選手との肉を切るつばぜり合いの中で、一歩引き下がったような感じがした。
近藤選手の中で彼なりの利があっての選択だとは思うが、牌に鎬を削ってきた人間たちの多くはこの2sに反射的に食らいつくんじゃ無かろうか。
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Mリーグというエンタメのドラマとしても、麻雀という競技としてもとても残念な選択だった。
そしてふと思ったのが、この2sなんかは魚谷さんなら鳴いていたんじゃないだろうかということ。
もちろん鳴いたからと言ってあがれているとは限らないし、そもそも道中の展開も全く違ったものになっているだろう。それこそ全く食らいつく余地もなく堀選手に蹂躙されていた可能性もあるし、逆もしかりだ。
ただ結果として、吉野監督は最終戦を実力で劣る近藤選手に任せ、逆に森井監督の的確な采配で選ばれた堀選手に敗北した。それだけだ。
以上、長々と述べてきたのだが結局強い選手は強く、それを見極めて強い選手に試合を多く任せるという当たり前の采配が、しかし最後の最後に結果としてはっきり目に見える形になったということだ。
過去を振り返ると、森井監督は当時一般的な知名度の低かった堀さんを(雀王は取ってたけど)チームに大抜擢したのだ。
新規参入チームとしても、あまり名の知れない人物を仲間にすることはかなり勇気が必要だったんじゃないだろうか。
だがそんな周囲の目を恐れず堀さんを見いだし、その実力を理解し、その能力をフルに発揮できる環境を整えた森井監督はひたすら有能だった。
ということで結論として・・・
やっぱり監督の実力ゲーじゃないですか。
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ここからは蛇足だが、自分は近藤さんの人柄は結構好きだ。
近藤さんの麻雀はお世辞にもうまいとは言えない。(近藤さんのミスを書こうと思うと更に長くなるので今回の記事の中でもかなり省いている)
でも彼はいつもドラマを作ってくれるし、誰にもあがれないようなあがりを導いたり、放銃回避をしたり見応えがあってとても面白い。
そしてMリーグにうまい人ばかりではなく、適度に雀力の低いプレイヤーがちらほらいるのもとてもいい塩梅になっていると感じる。たまに出る珍妙な一打にツイッターのタイムラインが沸くのも楽しい。
随分前の話だが、堀・多井・小林・鈴木という高い雀力の名優四人が揃った一戦なんかは見ていてとても面白かった。
だがあれが毎回そうだというのなら、別に好んで見ようとは思わない。(ファイナル10戦目の堀・多井・魚谷・佐々木も面白かった)
バランス良くいろんな人が存在しているからこそ、偶然強者四名が揃ったときに注目すべき戦いとして視聴者は興奮して楽しめる。
だから普段、別に誰が打っていてもそれはMリーグのエンタメバランスとして文句を付けることは無い。
ただ営々と続けられてきた1シーズンの締めくくりとして、最後の一戦で、その主役になる人物として近藤さんは相応しくないと感じた。
だからその采配ミスについて何かを書き出したくて、こちらの文章を認めさせてもらった次第だ。
長文をここまでお読みいただきありがとうございました。