実は水星の魔女2期には不安材料がある…!
水星の魔女とはご存じの通り最新のガンダムアニメ作品だ。
この作品はここまでのストーリー展開の中で、既存のガンダム作品とは一線を画す流れを作り出すことで一躍SNSの話題をさらった。
例えば女子高生が主人公だったり、学園恋愛ものだったり、百合展開だったり、プロポーズだったり。
かなりヒキが強くて毎週話題を作るのが上手かった。故にその二期にも当然期待が集まっているわけだが、しかし個人的にその先行きにかなり不安を感じている。
それは何故か。
結論から述べてしまうと、水星の魔女は『主人公不在の作品』になってしまっていることが最大の懸念材料なのだ。
いやいや主人公はスレッタじゃんというツッコミはもちろん承知の上で続ける。
何故スレッタが主人公と呼べないのか、その理由はスレッタが感情移入の対象になりづらいから、だ。
まずそもそもスレッタというキャラは境遇や振る舞いがやや突飛だ。それは随所の言動を見てもらえればわかると思う。
その上で更に、スレッタは一貫性が乏しく、人間味が欠けている存在だと言いたい。
例えば一期最終話におけるスレッタは敵のデリング暗殺部隊による攻撃を受けて心神耗弱していたところに母プロスペラの力尽くの救出で死と血を見たことで震え上がった。
だが母の影響によって、スレッタは他人を命がけで救出することが正義だと信じ込むようになる。そしてミオリネの救出の際、敵の一人をえげつない方法で殺すというクダリはこれもまたSNSで話題をさらった。
個人的にはそのあまりの豹変ぶりは流石に納得しがたいという点が一つ。
だがそれより大きな問題はこの一連によって視聴者はスレッタの人間性を見失ってしまうことがある。
ここまで躊躇のない殺人の断行はそれまでのスレッタの見え方とあまりに乖離しすぎていて、スレッタという人物を通してこの物語を追うことに困難を生じさせる。
物語というのは主人公を通して楽しむもの。視聴者は主人公の人となりを知って、その主人公に愛着がわくからこそピンチではハラハラして、勝利を得たときには共に喜べる。それでこそ物語という嘘の世界を身近に、我がことのように楽しめるわけだ。
そしてここまで『水星の魔女』を追ってきた人間として、この作品は物語としての整合性よりも話題を獲得することを優先した作劇手法をとっていることが分かる。
例に挙げると、スレッタと戦ったグエルがその戦いの果てに思わずプロポーズするシーンがあってスレッタが困惑し、そのまま次話に続くという感じで終わった話があった。
この展開は正直面白かったし、次週へのヒキがすごいと感じた。
だが次週冒頭でグエルは自分の言葉をすぐに撤回する。流石にうっかりプロポーズはしないと思うのだけど、要するにこれもまた話題をさらうために細かな整合性は無視しているというわけだ。
展開的なインパクトと整合性(リアリティ)はトレードオフの関係であり、あちらを立てればこちらが立たずという感じなのだが、水星の魔女はインパクトに振りがちだ。
それ自体が問題なわけではないし、実際に水星の魔女は面白い。
だが何度も何度も積み重なっていくと別だ。
その上で付け加えて問題なのが「要するにこれってどうなろうとする作品なの?」という主題を欠いているところだ。
何を期待して読めばいいのかよくわからない。スレッタという田舎者が都会の高校にやってきてどうなるかを追った、ある種の学園もの日常作品になっている。(一期終盤を除く)
ガンダムというのは地球連邦とジオンなど対立軸がかなり明確になっており、この二つの戦いというわかりやすい主題があった。
だが水星の魔女は作品全体として何をどうするのかがよくわからない。
「たぶんプロスペラの復讐物語?だよね?でもプロスペラのことも謎が多いし感情移入はしづらいし……」というのが自分の率直な感想だ。
こんな感じで、もやもやっとしているせいで物語の行く先に何を期待していいのかもわからない。
そして期待が出来ない作品は見るコストを重くする。つまり見る気を減じてしまうということ。
またメタ的なポイントで言うと、脚本の大河内さんの過去にもやや不安な点がある。
彼はかの有名なコードギアス 反逆のルルーシュの脚本も担当している腕利きの脚本家だ。水星の魔女もインパクトのある展開を仕込んできていてその実力は折り紙付きなのだが、他方でやはり勢いを重視しすぎるために吹っ飛んだストーリーを作ってしまうことがある。
革命機ヴァルヴレイヴという作品もまた彼が脚本を担当していたが、この話はあまりにリアリティを欠いていて全く感情移入できず途中で見るのをやめてしまった。
つまり水星の魔女においてもこのヴァルヴレイヴの再来があるのではないかと恐れているのだ。
以上延々と述べてきたが、要するに「もう少し話の線をはっきりさせて欲しい、そうしないと主人公不在の空虚な物語になってしまうよ」というのが自分の感じた不安なのだ。
叶うならスレッタの人生に入り込み、一喜一憂出来るような二期を見たいのだけれど……。
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