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多職種連携のコツについて

ナースからの質問で「多職種連携をうまくやるにはどうしたら良いですか?」という話を良く受けるんですけれど、まず医療職というもの自体が、これまでどういう環境に置かれて来たかということをまず思い浮かべれば良いかなというのがあります。

例えば、お医者さんも看護師さんも、病院の中では、医者は医者-医者間、看護師は看護師-看護師間、若しくは看護師-医者間。そういう風に、実は連携しているぞという話でも、職種が実は固定されているんですよね。

時々、事務員さんとか、リハビリの方とか、技師さんとかあるけれど、多分凄く頻度は低くて。実は自分達の医療職の凄い狭い世界の中でしかやっていない、しかも自分の病棟の看護師さんだけだったりとか、自分の医局のお医者さんだけだったりとかというが多いんだろうなと思うんですよね。それが職場が変わっても、同じフィールド上になっている訳なので、実は病院で患者さんと電話で直接やり取りするなんてことはほぼ無いでしょうし、退院する前にお話をしましょうかということくらいしかないと思うので。そうなって来るとまず自分達が、自分達医療職で日頃毎日会っているような、顔を見るような関係性となっている人以外とは、実はやり取りしていないんだよということを知っておいて欲しいかなと思いますね。

だから在宅医療の場合だと、介護職の方達とやり取りをしますということになるので、まずそこが出てきますよということなんですね。だから今まで話したことのない職種の方達とまず話さないといけないよということなんですね。しかもベースとして、話すということをやって来ていない可能性が高い、我々と違う職種と、という風に実はそこでハードルが2個あるよということなんです。

違う職種の人達と話すというときに大事なのが、患者さんのご家族等と話す時と同じなんですけれど、バックグランドが違うことを理解してあげないといけないんですよ。我々は医療職なので、医学の知識があってやったりとかしますし、ある程度一定のレベルまで標準化されているはずですけれども、介護の方々の場合は、多分職種によって知識も様々だし、経験も様々だったりするので、そういう方々に同じ患者さんのことを伝えていくということになると思うんですね。しかも病棟で顔見て言うんじゃなくて、電話だったりFAX、若しくはMCSのようなICTでやり取りをするという形になりますので、より難しい、そういうことをやっているという風に認識するべきだとは思うんですね。背景が違えば、同じことを言っても、今まで通じていたことが当然通じないということが起こる訳なので、そういうことがあるよという前提の上でどう伝えたら良いかということを考えながらしゃべらないと、多分伝えたつもりになると思うんですね。

あともう1個大事なことが、電話とかそういったもので、相手に伝えるということの他にも、相手に仕事とかをお願いするということもあると思うんです。多分これも外の人達に仕事をお願いするという経験もないと思うんですよ。だから、どういうことを相手に伝えれば、お電話でお願いしたことをやっておいてもらえるだとか。この人が今日から点滴が始まったからということを伝えたり、お薬が変わったことを伝えるとか。例えば、デイサービスとかでお薬が変わったことを知らないと、昨日まで2錠だったのに3錠になっていると、向こうからしてみると間違いかどうかも分からなかったりして結構困ったりする訳じゃないですか。点滴が始まったというような話になると、場合によっては休まなくてはならないということもあるので、そういうことに気づけてあげて、この一人の人の生活を支えるのに色んな人が入っているから、連絡してあげなくちゃいけないよね、ということにちゃんと気づけるかどうかなんですよね。

しかも、その方達がバックが違うということは、仕事の仕方も違うんですよね。医療者は夜だったとしても、患者さんの調子が悪くなれば、レントゲンを撮ったり、採血をしたりして、何が原因かを探してアプローチをする訳なんですけれど、違う職種の人達にとってそれは次の日だよねっていうのが別に普通であることもある訳じゃないですか。そういうところで、仕事の瞬発力の違いとか、業界が違うことで違うってあると思うんですよ。言ったのにまだやっていないということが多々あると思います。相手がどういう仕事で、どういう動きをしているかというところをある程度知ってあげないと、まだやっていないんですか何てことを言ってしまうと、向こうも向こうなりに一生懸命やっている訳なので、そうすると気兼ねなく言ってしまった一言で、医療者としての基準値で言ってしまった一言で、余計なノイズが発生したりしまうので、そういうところが多職種連携で大事なところ。

一言でまとめると、相手のことを知ってあげたりとか、相手も同じ患者さん(利用者さん)のことは思っている訳であって、そういう人達に伝えていくことを気を付ける。多分根本はそのくらいのことさえちゃんと出来ていれば、出来るとは思うんですよね。要は今まで自分達がすごい狭い世界の中で、しかも医療用語でしか伝達手段を持っていなかった訳で、これを一般の社会としての方々に伝えていくということなんですよね。しかも、場合によっては仕事をお願いしてやってもらうということまで発生するので、多分そういう風に、何で自分が言ったことが伝わらないんだろうというところの背景が、自分達がそういうことしかやって来なかったことがあるよということは知ってもらいたいし、相手に伝えることの難しさですよね。場合によっては、伝わらなかったりしてトラブルになったり、別に顔を見せて話に行けば良いと思うんですよ。訪問って距離が決まっているので、会いに行こうと思えば会いに行ける訳なんで、電話でやり取りして上手く行かなくていざこざになってしまったこともあると思うんですけれど、その後も別に顔を見せに行って、あの時はすみませんでしたねとかという話であれば、顔を見て話せば、単純にこういう思いがずれているだけだったんだということで、それで余計なことになるとはまずないですから。勿論、そうならないことが良いとは思うんですけれど、電話だけでFAXだけで気持ちが伝わるかどうかはわからないし、この人がどういう人かって相手にわかってもらえていれば、今忙しかったからこういう言い方だったんだなとか。あの人ってこういうタイプだよねって思っていてもらえていれば、それだけで違うと思うので。いかに普段からそういうことを気を付けてやっているかに尽きると思うんですよね。そういうところが、多職種連携難しいですよねって色々言われたりするんですけれど、多分根本的にそういうところですよね。例えば、たまには業務のこと以外のことも話しておいて、コミュニケーションをとっておいて、最終的には業務としてやり取りしているけれど、ちょっと人と人みたいなね、やり取りみたいなものが入ってくれば、うまく回って来るんだろうなという風に思うんですよね。多分、そういうのが多職種連携のコツかのかなと思いますね。