韓国映画から見る中国朝鮮族について
~黒龍江新聞の記事から要約翻訳~
中国の改革開放と1992年の中韓国交樹立以降に韓国に移動を始めた朝鮮族は2019年に72万人を超えた。
これは中国朝鮮族の人口の39%にもなり、韓国国内の外国人の31%を占める。
韓国において朝鮮族はとても複雑な存在である。
それは韓国社会で中国朝鮮族を「朝鮮族」「在中同胞」「中国人労働者」「外国人」「韓民族」など多様な呼び名で扱い、1999年には在外同胞法からいったんは除外しながら2001年には限定的に適用するなどの対応からも見ることができる。
またそれは韓国の映画で中国朝鮮族がどのように扱われているかからも見ることができる。
韓国映画において朝鮮族が登場するのは、延吉から移住する女性を主人公にした2005年のコメディ映画「댄서의 순정(ダンサーの純情)」だ。
韓国に来た主人公は努力の甲斐あって名声と愛を手に入れる、朝鮮族の描いた映画としては唯一の成功モデルといえる。
それ以降は中国人として登場する映画「파이란(パイラン)」「차이나블루(チャイナブルー)」があるが、ここでも田舎臭いが美しく純真無垢な明るい女性として表現されている。
このキャラクター設定は韓国社会において結婚できない韓国人男性たちの婚姻問題を解決するための間接的な宣伝にも活用された。
次いで、2004年に訪問就業制が導入されると労働者として多くの朝鮮族が韓国に入ることとなったが、同じ言語を使ってはいるが文化的に違いのある朝鮮族に韓国社会は葛藤することになる。
韓国のメディアは2010年代に「カウントダウン」「共謀者たち」「悪女」「コインロッカーの女」「犯罪都市」「ビューティフルデイズ」「偶像」などの犯罪映画で、朝鮮族を暴力団、詐欺グループ、不法滞在者や殺し屋、密売人などの否定的な存在として位置づけ、朝鮮族の密集する居住地である大林洞(テリムドン)を犯罪の巣窟として描いた。
これらの映画が上映されるや在韓朝鮮族からは、映画によって朝鮮族のイメージがそこなわれ韓国社会で朝鮮族への風評被害が起きたとして訴訟にまでつながることになる。
また韓国での朝鮮族に対する偏見と差別は朝鮮族自身のアイデンティティ形成に混乱をもたらすことになった。
映画の中でも、朝鮮族の留学生が韓国の大学で差別されることで自分自身のアイデンティティについて苦悩する場面が登場する。
2000年代の韓国映画で朝鮮族が登場する映画13作中2作品以外の映画では、朝鮮族は犯罪者として登場する。
だが実際の朝鮮族の犯罪率は、韓国の統計調査によると韓国人やその他の外国人に比べても明らかに低い。
韓国映画による朝鮮族に対する否定的なイメージが韓国社会に及ぼす悪影響は計り知れない。なぜなら映画とは文字やメッセージで伝えるのではなく、視覚、聴覚を通じた感覚から経験を観客に伝えるため、他の媒体よりもイメージや想像力を強く植え付けてしまうからだ。
朝鮮族が犯罪映画において悪者と侮辱される原因は韓国社会の歴史から知ることができる。単一民族という意識による排他的な認識、植民地を経て根付いた脱アジア的で欧米優越主義的な世界観、貧困だった過去の記憶を振り返りたくないという論理からの朝鮮族不要論、とにかく視聴率をあげたいがために否定的な面を大きく扱い、過度に報道するメディアの責任とも関連している。
このような要因は諸刃の剣のように、短期間の利益にはつながるだろうが、長期的にみるとブーメランのように韓国社会に戻ってくるのではないかと憂慮している。
朝鮮族が韓国社会において偏見と差別のない平等な存在になるためには、韓国政府とメディアによる抱擁政策が実施されなくてはいけない。
また韓国社会に、違いを認め多様性を尊重する風土が根付かなければいけない。
在外同胞法、18才以上の訪問就業ビザの発給、6週技術教育の廃止、外国人登録証への英文とハングル名の並記、同胞在留資格の条件緩和など変化は起きてはいるが、在韓朝鮮族社会の地殻変動による同胞在留資格の付与、メディアの客観的で肯定的な報道などが実現されなければいけない。
そして重要なことは在韓朝鮮族社会の長期的で積極的な努力だ。
この間、朝鮮族のイメージ向上のためのモニタリング事業が始まり、各界からも大きな力を注いてきた。
韓国にある朝鮮族のメディアからも朝鮮族の情報を配信しており、多様な団体から様々なイベントも開催されながら親睦と団結を図っている。
同胞間の親睦も大切だが韓国人団体との相互の肯定的な交流と宣伝も必要だ。そして朝鮮族の肯定的な本当の姿を広めなければいけない。
長期的な次元から朝鮮族の共同体の政治、経済、文化の実力の向上も必要である。
朝鮮族は中国、韓国どちらも切り離すことのできない存在だ。
未来には違いを認めお互いを認めあう時代が来るはずだ。
いつかは在韓朝鮮族と韓国人が共生するwin-winな関係にある、そんな未来がきっと来ると楽しみにしている。