暗闇のエンターテイナー ①
残り8
〜悪魔の種〜
1982年。
バチッ
バチッ
バチッ
6畳の和室に響く
何回にも渡る重いビンタの音。
部屋は寒く、空気も凍りそうだった。
母がマッチで付けた石油ストーブから
冬の匂いがした。
父の手は誰よりもぶ厚く、
透明感のないくすんだ色の
男の手だった。
父は瞬きを全くせず、息子の行いに
心底怒りがこみ上げていた。
自分では分かっていた事だが、
父親が帰ってくるまで、
布団の中で縮こまっていた。
父が帰るなり居間に呼ばれた。
声で分かる。
赤鬼が呼んでる。
ちょっと来い。
居間の襖をゆっくり開けると
想像した通りの光景が目に入ってきた。
そこに座れ。
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