攻め① 攻めの定義・攻めの目的・相手を遣うとは?
「攻め」というのは「概念」なので、非常に言語化しにくいです。かくいう私も攻めについては悩んでいた時期がありまして、攻めについて知るために100冊ほど剣道関連書籍を読み漁りました。しかし、わかりやすく「攻め」を表現している書籍があまりなくて、中々苦労しましたが、一番、しっくりきたのは林邦夫先生のお言葉でした。
攻めの定義:間合いを測ること
どれくらい「間合いを測ること」が重要かというと、日本剣道形の1本目のテーマは「間合い」なんですよね。どういうことかというと、打太刀左上段が「やぁ!」といって仕太刀が「とぅ!」という奴なんですが、あれは打太刀が「間合いを測って斬りましょう」と教えるための形なんですよ。これが、日本剣道形の1本目ということは、剣道の攻め(間合いを測ること)とは、剣道の神髄に関わる話となります。
「間合い」とは、自分と相手との間にある距離のことを指します。そこには両者の技術・体力・精神活動をひっくるめた総合的な働きを剣道では言いますが、総合的な表現を記述することは「オカルト(空間とはどういうものか?)」や「体格」の話もしなければならないので、このマガジンでは、「物理的な距離」の基本的な考え方を紹介します。体格や技術によって、多少ズレることはありますけど、一応、標準的な考え方としておさえておいてください。
次に「間合」について、区分します。
間合い区分:
「遠間」......一足一刀より遠い間
「触刃の間」.......遠間の一つ。お互いの剣先同士が触れる間
「交刃の間」........お互いの竹刀が交わってる間合い全般をいいますがこの記事では、「触刃の間」と「一足一刀の間」の間として説明します。
「一足一刀の間」....お互い1歩入って打てる間合い。
「近間」.......一足一刀より近い間
このように間合いを区分できます。
何故、間合いを把握していなければならないのかというと、竹刀の剣先の12センチの間(物打ち)に竹刀の打突部位が刃筋正しく当たるという有効打突条件が、明確であるからです。
これは、近すぎると、刀の剣先に当たらないし、遠すぎると、届かない。踏み込み足1歩で打てる一足一刀の間じゃないと有効打突にはならないですよね。一足一刀の間だとお互いに一歩入って打てる間合いになります。このお互いの打てる間合い(一足一刀の間)において、「攻め」とはどのようなアプローチをするのでしょうか???
「攻めることで相手を崩したり、手元を挙げたりするんだよ」とは、よく言われますが、「いや、初心者じゃないと崩れんわ」と思ったりしませんか?結局、打つだけ打って、相手に刀を受けさせて、また、更に連続で打突する。打ち込みの練習をたくさんしている若い剣士がだいたいこうなってしまうのも、致し方ないことなのかなとも考えます。
攻める目的:有効打突打突機会をとらえるため
有効打突機会とは?
3つの機会と3つの中心とよくいれます。
・相手が技を受けたところ・居ついたところ(気の中心を制する・先々の先)
「相手が打とうと意識する直前」。ヒトは、何かに対応して行動を起こそうとしたとき、頭の中で「こうしよう」と考える前に無意識的な反応動作が先行します。はっと息を揉む瞬間です。この無意識からゆう意識にきりかわるしゅんかん、ここを中心としてとらえることができれば相手の「打ち気」を封じることができます。ここを打ちこめば、まさに相手の居つきを打つ「仕掛け技」ということになります。しかし、「居つく」状態なら奇襲なんだから、相手を動かすことは関係ないのでは?と思うかもしれませんが、そうではありません。
触刃の間から、相手の右足が動いた瞬間に、こちらも左足を少し、かつ、素早く動かしながら、相手の竹刀に対して上から被さる形をとることで、相手は剣先が中心から外れ、こちらは、攻めの体勢となります。その流れのまま、すぐに飛び込みメンを打っていく形が仕掛け技の「理想形」となります。
触刃の間からどんどん積極的に間合いを詰めてくる相手に対して、中心を渡さない、または、取り返す形で、相手の動きを止め、かつ、こちらは中心を制している状態で打突する。
・相手が技を出そうとするところ(身体の中心を制する・先の先)
「構えた状態から、技を出そうとして動き出す直前」、構えという「静」の状態から、打突という「動」の動作に切り替わる中間点。ここを中心としておさえらえることができれば、相手の動きを封じることができ、ここでこちらが技を出せばそれは「出ばな技」となります。お互いその「先」を取り合ったさいに、相手に打たれずに自分の打てる間合いお互い詰めた状態に相メンを打っていく形にはなると思います。相手が出ようとする瞬間にこちらも動くことは鉄則ですが、触刃の間からどんどん積極的に間合いを詰めてくる相手に対して、中心を渡さない、または、取り返す形で、相手の動きを止め、かつ、こちらは中心を制している状態で打突することで、相打ちになったとしてもこちらが有利を作る状況を作ります。
また「先」を捉える場合に、相手が前に出たと同時にこちらは右足を固定したまま左足を引くことで(重心は左足軸のまま)、相手の打ち気を誘って呼び込むという「呼び込み技」があります。相手は「下がった」と思わせることができますが、実際、右足は動かさないので「下がった」ことにはならず、相手を懐に「引き込む」という技です。
・相手の技が尽きたところ(剣の中心を制する・後の先)
技が技として「かたちが現れたとき」とその技が「効力を発する時」の中間点で、ここを一つの中心としてとらえることができれば、相手の「技」はその効力を発する前に封じてしまうことができるという考え方です。ここでこちらが技を出せば、それが「応じ技(返し・刷り上げ・切り落とし・抜き)」となります。
触刃の間から、相手の右足が動いた瞬間に、こちらも左足を少し、かつ、素早く動かしながら、相手の竹刀に対して上から被さる形となり、中心を制した状態で小手を誘発すれば「コテ応じ技」が成立しますし、こちらが中心を制した後に剣先を中心から外すことで、あるいは、先ほどいった右足を固定しながら、左足を下げることで相手のメンを誘発する形で「メン応じ技」を狙うことができます。
こちらが、3大有効打突機会として基本になります。
いづれにしろ、相手が「打突する」という一連のプロセスの間に打突することになるので、剣道の有効打突条件には、相手を確認することが必須条件となるわけです。
基本的には、「相手が技を出そうとするところ」に自分が技を出せるか、これが全日本剣道連盟が求める美しい剣道となります。
このルーツは、柳生新陰流の奥義からです。
剣道の一番の主流となっている流派は柳生新陰流で、この技術というのは、打つタイミングを養うのが難しくて、タイミングを間違えれば先に切られたり、かわされたりしますので、難しい、かつ、精神面も要求される。だから、剣道は「人間形成」にもなるんだよ!という歴史的流れで江戸時代において「活人剣」として生き残った流派なんですね。
剣道もこの伝統的流派をマスターして剣の修練をしていこう!ということです。これは、勿論、試合にも使えるどころか、審判の方は旗をあげやすくなります。「審判から旗を上げさせる」というテクニックなんですけど、これは、ちゃんと正しい攻め・機会をしていると審判の好感度があがるということです。
「攻め」の流れ:「相手を遣う」とは?
1.「攻め」とは、「間合いを測ること」である。「攻めの目的」は、「相手が技を出そうとするところ」を引き出すためにある。
2.つまり、「相手が技を出したい」と思うところまで間合いを測る。それは、つまり、相手が最も打ちやすい「一足一刀の間(1歩入って打てる間合い)」に調整しながら、間合いを詰めていくことです。
3.相手が打ちやすいところまで遠間から一足一刀の間のギリギリ外側まで前に詰めていきます。相手が、思わず打突をしてしまう。そこを事前に読み切ってして打突する
「先の先」...相手が打とうとして瞬間を捉えるのが「出ばなメン・出ばなコテ」
「先々の先」...相手が打とうとする、仕掛けようとするところを、いなし、中心を制しながら仕掛ける技「仕掛けメン・仕掛けコテ」
「後の先」...相手が「出ばな技・仕掛け技を打とうとしてしている」とヤマを貼った状態で前に出て誘いながらも後に出す技「刷り上げ・返し・切り落とし」
ここで「読み」と表現しましたが、剣道では相手の打突をみてから打てるパターンというのは遠間から打突してきた場合くらいで非常に限られています。高段者相手にする場合、相手の打突を確認してから100%安全な状態で打突をするといった形はずっと1本とれません。基本的には、「相手の狙い技を読んで、自分が技を出し切る」という形です。成功すれば1本、間違えれば逆に1本取られる可能性がある。だから、お互い「捨て身で打ち切る」ことに恐怖を覚えたりしますが、打ち切らなければ逆に旗があがらないので、覚悟を決める。打たれることで学習して、見えない打突の軌道を覚えていくという形になります。
「打たれて感謝」というのは、読み能力を打たれることで学習していくという意味になります。
武道・格闘技・ボクシング・スマブラでも間合いという概念がある
相手が技を出そうとするところを予測する(引き出す)ために、こちらがギリギリで反応できる相手の攻撃範囲すれすれまで間合いを詰めていき、相手が攻撃したがる状況に持っていく。
この土台は同じです。
スマブラの場合は、キャラ差があるため、相手が見て反応できない攻撃範囲の広いキャラは基本的に有利となります。スマブラもこれをわかっていないとVIPになれません。
対人競技において「間合い」というのは非常に重要であり、根本的なところでございます。
攻めとは、間合いを測ること
攻めの目的とは、相手の技を引き出すこと
攻めの項目は予定としては「遠間」「触刀の間」「交刃の間」「一足一刀の間」「近間・つばぜり」「色んな攻め方」で別々にわけてこの間合いだとこういう行動がとれるというのを解説していきたいなと思っております。