「夢の本」を部員が選んだら
前月の手紙社リスト“本”編で花田菜々子さんがセレクトした同じテーマで、手紙社の部員が10冊選んだら! 手紙社の部員が選ぶ「夢の本10冊」をご覧ください! いつにも増して、今回は名著揃いな気がします。
✳︎ここで紹介した10冊を、手紙舎つつじヶ丘本店の一角に準備しました。どなたでも読むことができますので、カフェタイムのお供にぜひ!
1.『銀河鉄道の夜―最終形・初期形「ブルカニロ博士篇」』
著・イラスト/ますむらひろし,原著/宮沢賢治,発行/偕成社
宮沢賢治の代表作と呼ばれる「銀河鉄道の夜」は、幅広い世代に読み継がれ、多くの関連書籍や絵本が制作されています。中でもますむらひろしさんは、擬人化した猫を登場させることで、時に難解な賢治の世界を親しみやすく表現しています。
銀河を走る汽車の旅は、主人公ジョバンニが眠りの中で見た「夢」。美しく幻想的なエピソードや繰り返される出会いと別れは何を意味しているのか、大人になって読み返すと、なかなかに哲学的な作品だと感じます。
この本では賢治が生前に遺した「最終形」と、その前の「初期形」、2種類の「銀河鉄道の夜」を読むことができます。最終形で姿を消した「ブロカニロ博士」の存在、結末の違う物語の展開。
ますむらひろしさんのイラストと共に、より深く「銀河鉄道の夜」を旅してみませんか?
(選者・コメント:マリー)
2.『お月さんのシャーベット』
著/ペク・ヒナ,訳/長谷川義史,発行/ブロンズ新社
夏の月夜の物語。あまりの暑さに溶けた月の雫をシャーベットにして食べる。幻想的な夜の世界がコトバとヴィジュアルで表現されています。涼しくなり眠りにつく世界。どんな夢を見るのでしょうか。
この月の夜。実際に立体的な模型を作り登場人物を配置。光と影を駆使し生まれているんですよね。いつもの暮らしに魔法が息づく感覚! お月さんのシャーベット食べたいなぁ。ページを開いて、ぜひ夢の世界へ。
(選者・コメント:田澤専務)
3.『新月の子どもたち』
著/斉藤倫,画/花松あゆみ,発行/ブロンズ新社
斉藤倫さんのお話しが大好きで、煌めく比喩が沢山散りばめられていて素敵です。挿絵は、花松あゆみさんのゴム版画によるイラストレーションでとっても美しいです。「生きにくさを生きる子どもたちへ贈る希望と再生の物語」「小学校高学年向け」とありますが、是非是非大人にも読んでいただきたい一冊です。
主人公の小学5年の少年は、ある日、夢を見ました。夢の中のある国で少年は、当たり前のように死刑をまつ死刑囚となっています。現実の世界での少年はちょうど変声期。夢と現実が章段ごとに交錯し、多感な時期の少年は、夢と現実の双方を行き来しもがきながらも、やがて夢と現実が重なり合って……少年の思いを感じながらどんどん物語に引き込まれていきます。
闇夜の向こうに輝く月(夢)があると信じて生きていこう。という倫さんのメッセージが、私が子どもたちに残し伝えていきたいものと重なって強く心にひびきました。みなさんは、読み終わった後どう感じるかしら。機会があればそんなお話しもしてみたいなぁ。是非是非おすすめの一冊です。
(選者・コメント:HAPPY 弥生)
4.『F(フロイト)式蘭丸』
著/大島弓子,発行/朝日ソノラマ
主人公・よき子の恋人・蘭丸は、見目麗しく、成績優秀にしてスポーツ万能。 よき子の好きな遊びに付き合い、 よき子の気持ちを大切にしてくれる。
これはきっと夢のお話。
いつかの未来に馳せる希望の夢 。
……いつか自分だけの王子様が、きっときっと現れる。
毎日の中で、しんどいなって現実と遭遇した時、 その夢は、シェルターの役目もしてくれる 。
……大丈夫、きっときっと王子様がやってきて、私を守ってくれるから。
物語のラスト、 よき子はシェルターである夢から、外の世界へと踏み出していく。 最後のページを読みながら、私はいつも瞼が熱くなってしまう。 初めて読んだ時から、ずいぶんと時間が流れたけど、今もなお、甘くて、そして心がチクンとする一冊です。
(選者・コメント:KYOKO@かき氷)
5.『危険な空間』
著/マーガレット・マーヒー,訳/青木由紀子,発行/岩波書店
11歳だったころの自分を覚えていますか? マーヒーが描く物語は、読者をたやすく11歳にします。11歳のとき、こわい話は好きでしたか?
アンシアとフローラは同じ年の従妹ですが、似ていません。アンシアは事故で両親を失ったばかり。2人のおじいさんは同じ人ですが、アンシアは騒々しい家族になじめません。さびしさを抱えた夢のなかで、男の子に出会います。いっぽうフローラは、自分の家に幽霊がいることを知っています。フローラはアンシアが「夢」でけがをしたことに気がつき、幽霊の存在と夢の危険を家族に伝えようとしますが、うまくいきません。
こわくない日常を形づくるのは、欠点がある大人たちや、汚れたつまらないモノです。さびしさも、だれかと絆が結ばれたときの、その心強さも、目に見えません。でも、ちゃんとそこにあるのです。それなら、夢の扉もないとは言えませんよね。
(選者・コメント:まっちゃん)
6.『千年の翼、百年の夢』
著/谷口ジロー,発行/小学館
この本は、ルーヴル美術館がその魅力を世界に発信するために、日本の漫画家とタッグを組んだ作品です。選ばれた2人の大御所の一人、谷口ジローさんは、あの『孤独のグルメ』の作画担当の漫画家です。オールカラーのこの本、谷口さんが、かのモナリザやゴッホ、ミロのビーナスを見事に描いています。
主人公がルーヴルの守り人に導かれて時空を超えて美術館を深い所まで案内する、という展開で物語が進みます。読んでいくと、“すごい人”に沢山出会えます! 夢のツアーに、是非ご一緒に出かけませんか?
(選者・コメント:三重のtomomi)
7.『夜の木』
著/バッジュ・シャーム,ドゥルガー・バーイー ,ラーム・シン・ウルヴェーティ,訳/青木恵都,発行/タムラ堂
夢の本、と聞いて真っ先に浮かびましたインドの本、「夜の木」をご紹介します。まるで夢の中のような大きな黒い紙にさまざまな形の夜の木々が印刷されていて、不思議とあたたかく、優しい気持ちになる、美しい絵本です。
この絵本は、版(刷)ごとに表紙の木の絵が変わります。ページごとに紙が一枚一枚、少しぼこぼこしています。1ページずつ違った色のインクで刷られています。
なぜこれらが可能かというと、黒い木綿の端切れから手漉きで作られた紙に、手作業でシルクスクリーン印刷をし、製本は手作業で平綴じ。一冊一冊、手作業で作られている、夢のような本だからなのです。そして出来上がった本は船でインドから東京へ運ばれてきます。
この本の作家の方々が住む地域の人々にとって「芸術は日々の祈りであり、美しい絵を見る人々には幸運が訪れると信じられている」というのも素敵だなぁと思いました。
ぜひ 手に取ってみてください。
(選者・コメント:いと)
8.『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
著/キャスリン・ストケット,訳/栗原 百代,発行/集英社
この物語を知ったのは映画を観たのが最初です。映画のその痛快さに本を手に取り、ヘルプたちのユーモア溢れるチャーミングな物語を思い、夢見て。しかし、そんな夢を打ち砕くようなアメリカ南部の悲惨な差別を目の当たりにします。夢と共に闇があるということを知りました。
屈しない強い心。愛と夢の溢れた、魅力的な彼女たちがたくさんの方たちの目に映りますように。
(選者・コメント:ハルツムギ)
9.『すべての神様の十月』
著/小路幸也,発行/PHP研究所
日本にいる八百万(やおよろず)の神。お正月や旅先の神社で、ピンチの時に心の中で、「神様、どうか…」と願ったこと、ありますよね。遠い昔から、人は、数えきれない願いとお礼を数多の神に唱えてきました。
物語に登場するのは、死神・貧乏神・疫病神・道祖神・九十九神(つくもがみ)・福の神。福の神はいいけれど、貧乏神と疫病神はちょっと……ましてや死神は遠慮したい。読む前は、私もそう思った一人でした。
どんな神も、人の営みを見守り、寄り添い、幸せを助ける存在です。転んでも起ちあがる人の強さを信じてくれています。自分も神様に助けられているのかも、あの人はもしかして……そんな夢をみることは、心の中に御守りを持つみたい、と思うのです。
(選者・コメント:mayuko)
10.『夢みたものは…』
著/立原 えりか,発行/講談社
24歳で夭折した詩人であり、建築家でもある立原道造さん。彼の美しいソネット調の詩の多くは、合唱曲として今も愛されています。
私は高校の合唱部でこの歌に出会い、それ以来歌いたくなったら口ずさむ大好きな1曲です。歌い終えると、北島家ラジオでみんなの小確幸を聴いた後のように、ほっこりあたたかく晴れやかな気持ちになります。
埼玉県浦和の別所沼公園の沼畔には、立原さんが設計した「ヒアシンスハウス」という素敵な小屋が建っています。陽の光が差し込む窓辺でこの絵本を読みながら、立原さんの夢みた世界に想いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
(選者・コメント:夢みるひーちゃん)
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