手紙社リスト映画編 VOL.17「キノ・イグルーの、『10歳の時に観ておきたかった』映画10作」
あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、「10歳の時に観ておきたかった映画」です。あの頃観ていたら、どんな気持ちだったんだろうという映画、その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月も、お互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、それぞれテーマを持って作品を選んでくれたり、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。
──
お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。
──
−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月も渡辺さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。
──
−−−今回のテーマは、ふたりの解釈が異なったことでさらに興味深いリストに。渡辺さんは、純粋に自分が10歳の頃(1985年頃)に観たかった映画を、観られたもの観られていないもの両方からセレクト。有坂さんは、ちょうど映画が嫌いになって全く映画を観ていない年齢だったこともあり「当時これを観ていたらよかったな」という映画をセレクトしました。
渡辺セレクト1.『ベストキッド』
監督/ジョン・G・アヴィルドセン,1984年,アメリカ,127分
有坂:うんうんうん。
渡辺:これわりと有名な作品なので、ご存知の方も多いと思うんですけども、いじめられっ子が空手を教えてもらって、おじさんに。それでいじめっ子に仕返ししていくっていう話です。で、最後、空手大会に出て人間としてもこう、成長していくというお話なんですけど、これはやはり当時小学生の少年としてはめちゃくちゃハマった作品だし、作品としてもすごい面白い。何かこうサクセスストーリーでもあるし。で、この(ジャケットの)左のおじさんが日系の人なんですよね。
有坂:うんうん。
渡辺:ミヤギっていう役名なんですね。このミヤギに主人公の少年が「空手を教えてくれ、俺は見返してやりたいから、空手を教えてくれ」って言うんですけど。あの、もう何かワックスかけさせられたりとか、ペンキ塗りとかばっかりさせられて。で、「全然空手教えてくれないじゃないか!」って言ったとき、ぱっとパンチを出されたら、そのワックス掛けの動きでパンチを止められるみたいな、「はっ!!」ってなって「身に付いてる!」みたいな。
有坂:(笑)
渡辺:あの瞬間とかもうめちゃくちゃ上がるっていうね。そういう何かベタな単純なところのあの演出とかもすごいぐっときたし、なんで、男の子はもう本当にちょっとハマるタイプかなと思います。で、これ面白いのが実は今ネットフリックスでこの後日談がやってます。「コブラ会」っていう名前でやっていて、当時のライバルの少年二人が大人になった、で、キャストもそのまんまで、この主人公の少年じゃない方、いじめっ子の方で最後負けちゃう子が大人になって主人公になってるっていう。それがね、面白いんですよ。
有坂:40年後に。
渡辺:そう。で今ねシーズン6ぐらいまであるっていう。
有坂:あ、そうなの?!
渡辺:めちゃくちゃ人気シリーズになってるっていう(笑)。で、その空手を一旦は諦めたんだけどまた道場を開いて、みたいな。なんで今度はもう
あの昔を後悔してるから改心してやっていくんだけど、何かこう色々昔のしがらみでうまくいかないこともあり、みたいな。なかなかね、面白い感じに今も繋がってるんですよ。
有坂:ふーん。
渡辺:結構ね話としては有名だらか知ってる人は多いと思うんですけど、実は今も続いてるっていう。
有坂:これ順也は劇場で見たの?
渡辺:ううん、これはテレビ。当時はほぼテレビ。
有坂:そうかそうか。
渡辺:これはちょっと劇場でも見たかったかな。で、これジャッキー・チェンがリメイクしてて、それはね観ましたよ映画館でね。
有坂:やってたね。
渡辺:ジャッキーがウィル・スミスの息子を教えるっていう。
有坂:うんうんうん。
渡辺:そういうパターンで。
有坂:これ127分もあるんだね? けっこう長いんだね。
渡辺:うん、全然感じなかったけど珍しいね。
有坂:こういう系のエンタメだと90分ぐらいの相場だよね。
渡辺:テレビ版は削られているかもね。
有坂:ま、そうだね。はい、いいですか?
渡辺:はい、満足です。
有坂:はい、では僕の1本目はですね。もっともっと時代をさかのぼって、1925年の映画です。
有坂セレクト1.『キートンのセブンチャンス』
監督/バスター・キートン,1925年,アメリカ,60分
渡辺:ふふふ。
有坂:これはですね、言わずと知れた三大喜劇王。まだ映画に音がなかった時代ですね、サイレント映画時代の三大喜劇王の一人バスター・キートンの代表作の1本です。で、三大喜劇王というと、チャプリン、ロイド、キートンです。で、それぞれ特徴が違って、その中にあってバスター・キートンというのは「ストーンフェイス」って言って、常に無表情。で、無表情なのに彼の特徴であるスタントを使わない超絶アクション。「こんな崖から飛び降りたりしてるのに、無表情のまま」みたいな。そのギャップがキートンというのはすごく面白い。
渡辺:うんうん。
有坂:それが彼のいわゆる一つの個性と言われています。で、そのキートンのアクションスターとしての魅力がもう最大限詰まってる映画が、この『キートンのセブンチャンス』です。これは時間でいう60分なので、長編の中でも本当に短い中編に限りなく近いタイプの映画なので観やすさもあります。で、これはここ(Filmarksの紹介ページ)に書いてありますけれど、このバスター・キートンが演じる主人公が、わけあって今日27歳の誕生日の19時までに遺産を受け取るために結婚をしなきゃいけない。結婚をしないと遺産が受け取れない。でも、そのフィアンセとは何かちょっとわけあってうまくいかず、そしたら自分の知り合いが勝手にそれならって言って新聞広告出して「花嫁募集」ってやったら物すごい人が集まって、今このジャケットの写真にありますけれども、この何百人っていう花嫁候補にキートンが後半ずっと追っかけられるんですよ。
渡辺:うんうん。
有坂:もう20分以上かけて。でやっとこう難を逃れたと思ったら、また大量の花嫁姿の人が現れ、追われて追われて。っていう中で本当にキートンはこう、崖を転がり落ちていったりとか、崖をダイブして木につかまったりとか、本当にもう見る人がドキドキするようなスタントを、自分の体を使ってやっています。スタント入れてないんです。これ、今だったらCGでできてしまうことを、まだ当然そんな技術がない時代なので、本当に体を使ってやっているというドキドキ感がたまらない映画なんですけど、実はこれね、キノ・イグルーの子ども向けイベントでもの定番の1本です。
渡辺:うん!
有坂:で、実際これ上映すると、もうそのアクションシーンで子どもたちは本当すごいよね?
渡辺:うんうん!
有坂:笑いの渦が見えるぐらい笑ったりし続けて声上げちゃったりとか。もうその「サイレント映画を観て子どもってこんなに反応するんだ?」って大人がびっくりするぐらい。もうね老若男女を問わず楽しめる1本です。僕はやはり自分が上映する側で子どものリアクションを見てると、僕もこの年齢で観て起きたかったなと。やっぱり白黒映画とかサイレント映画って何かそれだけでちょっとハードルが高くなってしまうところってあると思うんですけども、幼少期にこういうものを楽しい体験として経験しておくと、そういう壁もない中で映画と接することができるので、そういう意味ではやっぱり10歳の時とかにね、見ておきたい1本かなということで1本目に挙げました。
渡辺:はいはいはい。ね、100年前の映画だもんね。
有坂:そう100年前の映画です。
渡辺:これは子どもに大人気でね、毎回もう大爆笑になるっていうね。やっぱりもう言葉関係ないタイプの作品だから、そういう面白さはもう子どもも大人も共通してて。
有坂:これ多分YouTubeに上がってるので気になった方はぜひ観てみてください。60分あって、後半の20分ぐらいがアクションシーンなんですけど、時間がない人はぜひアクションシーンだけでもいいんでね。観てもらうと人生変わります。はい、ぜひ見てください。
渡辺:はい、なるほど。了解です。はい、じゃあ僕の2本目。2本目も僕の昔面白かった、観たかったやつです。
渡辺セレクト2.『ポリスアカデミー』
監督/ヒュー・ウィルソン,1984年,アメリカ,96分
有坂:ふふふ(笑)。
渡辺:これは当時、テレビでめちゃくちゃやってた。なんで、映画館では観てないんですけど、もう僕は当時テレビですごい観てました。映画は結構テレビで、今だと金曜ロードショーぐらいしかやってないんですけど、当時はすごいやってたので、それで観てたという感じです。で、これはどういう話かというと、警察学校の話で、アメリカの映画なんですけど、コメディです。で、警官不足っていう事態が起こって、警察官を新たに募集しなきゃいけないんだけど、人が集まらないので、採用基準をめちゃくちゃ下げてみたっていう。そしたらとんでもない奴らばっかりが応募してきたという、わりとドタバタなコメディです。警察学校に入ってきて、でも問題児だらけのドタバタの中で事件が起こって、それをみんなで解決しに行かなきゃいけないと。で、どうなるのかみたいなお話ではあるんですけど、もうギャグだらけだし、やっぱ80年代の作品なので、今観ると結構コンプラNGみたいなのがめちゃくちゃあるので、これは逆にその当時だったから観られた。
有坂:うんうん。
渡辺:あの当時の感覚だから、「こういうのもありなんだね」っていうのが受け入れられたっていうところはあるんですけど。だから今は多分NGだから「子どもに観せてどうなんだろう?」っていうのはあるのかもしれないですね。大人が見たら、多分普通におバカコメディーとして面白いんですけど。それが結構子ども向けにも観られてたのはあったし、そこの何か価値観の違いみたいなところが今思うと面白いところだなと思います。
有坂:これ役者の名前を見ても全然わかんないもんね。
渡辺:そう!
有坂:それがいいよね。スターが出てなくても大ヒットしたってことだもんね。
渡辺:うん。
有坂:この80年代のアメリカで。
渡辺:そうそうそうそう。これパート5ぐらいまであってね、結構人気シリーズになってその後も続いてるというね。まあーおバカですよ(笑)。
有坂:コンプラNGっていうとさ、80年代の映画は結構は多いよね。
渡辺;ね。うんうん。
有坂:映画全体というよりも、ポイントポイントで「この表現、ちょっとまずいんじゃないかな?」という。まあ、そういうものもやっぱ「この時代はOKだったんだ?」という目で見る面白さとか、そこからね時代が見えてきたりもするのでね、「コンプライアンスNGだからやめとこう」っていうのはちょっと残念だよね。
渡辺:本当にね、自由すぎるんで、「こんな自由でいいんだ」って思える。そんな作品です。
有坂:はい。じゃあ、それを受けて、僕も次は80年代の映画に行きたいと思います。
有坂セレクト2.『ブルース・ブラザース』
監督/ジョン・ランディス,1980年,アメリカ,133分
渡辺:うーん!
有坂:これはタイトル聞いたことある人も多いかと思いますが、ダン・エイクロイドとジョン・ベルーシという当時のスター二人が主演した、「究極のエンタメ映画」だと思っています。これは、もともとアメリカの大人気テレビ番組の「サタデー・ナイト・ライブ」というシリーズがあって、その人気コーナーが拡大して映画版になったものなんですね。このもうね、タランティーノの『レザボア・ドッグス』を思わせる黒服の二人。サングラスした二人が主演の本当にドタバタコメディなんですけど、これ物語的には刑務所を出所した二人が、もともと孤児院出身で、そこを訪れたらいろいろ経営難で大変だということで、自分たちを育ててくれた孤児院を何とかして救おうと言って、お金を集めるために自分たちでバンドを結成して。で、ライブをやることでお金を集めようという二人がいろんなトラブルに巻き込まれていくっていうのが大筋のストーリーになってます。
渡辺:うんうん。
有坂:一応これジャンルはコメディーなんですけど、これはコメディーとしての笑いもすごくこう、本当にちゃんと笑える。日本人だから笑えないとかいうことはなくて、本当にワールドワイドに笑えるようなセンスもあって、さらにアクションが本当に映画の歴史に残ってる……例えばカーアクション映画『フレンチ・コネクション』とかいっぱいあるんですけど、そういうのに本当に匹敵するほどのこれも今だったら絶対作れないような、本当に「死者とか出てないかな?」と心配になってしまうぐらいのスリルのあるカーアクション。
渡辺:(笑)
有坂:それで、さらにこれ音楽映画としても素晴らしくて。
渡辺:そうだね。
有坂:ソウルとかR&Bとかファンクとかそういった黒人音楽へのリスペクトもすごく詰まった映画なんですけど、実際ミュージカルとしての要素もある映画なんです。
渡辺:うんうん。
有坂:で、その中にはね、結構豪華なゲストというかミュージシャンが出てて、例えばジェームス・ブラウンとかレイ・チャールズとか、あと去年公開されてましたけど、アレサ・フランクリンとか、本当にもう超一流のレジェンドたちが出演して歌うわ踊るわ。本当にこのレジェンドこんな楽しむんだ? はっちゃけちゃうんだ? っていう姿も見れます。なので、監督・主演だけではなくて、本当にもうスタッフとかあとはその脇役に至るまで、みんなで「本当に面白い映画を作ろう!」って気合いを入れて作ったのが画面からのエネルギーですごい伝わってくるんですね。
渡辺:うん。
有坂:ちょうど昨日アップされた僕が「キナリノ」で連載してる記事でも、『ブルース・ブラザース』をちょうど出したところでね。その時のキナリノのお題は「元気になれる映画」みたいなお題で、僕はもう迷わず、『ブルース・ブラザース』を挙げました。
渡辺:おお。
有坂:これは、ジャンルの好みとかね、例えばアクション映画とかコメディ映画とか「苦手であまり見ないんです」っていう人にもぜひ観てもらいたい。もう、そういう人の趣味趣向なんか軽く超えてしまうぐらいの本気のエネルギーで元気になれる1本なので、機会があったらぜひ観てもらいたいなと思います。僕は実際、なかなか実はこれ映画好きになった頃に観てなくて、何かパッケージのビジュアルでちょっとベタベタなアメリカコメディーっぽいなと思ってちょと後回しにしてて、初めて観たのが、僕は早稲田松竹。映画館で観たんですよ。
渡辺:ふんふん。
有坂:それで本当にもう「おー!」ってなって、実況したくなるぐらいの感動があったのでね。
渡辺:(笑)
有坂:そういうの苦手な人でも大丈夫だと思いますので、ぜひ観てみてください。
渡辺:なるほど、80年代来ましたか。
有坂:はい入れちゃいました。
渡辺:じゃあ、そのね、カーアクションで今思ったもの挙げます。
有坂:お、はいどうぞ。
渡辺セレクト3.『ポリス・ストーリー 香港国際警察』
監督/ジャッキー・チェン,1985年,香港,106分
有坂:好きだねー(笑)。
渡辺:(笑)。ジャッキー・チェンですね。
有坂:順也色全開だね! もう自分の知ってる小中学校の渡辺順也そのままです。
渡辺:(笑)。もうこれは本当にマスターピース。やっぱり、本当にこれは面白かったですね。あの、これも最初はテレビで観てて、ジャッキー・チェンて本当に昔はよくやっていて、で、『酔拳』とかそういう時代劇物が多いんですよ。「何とか拳」みたいな。でも、これは現代劇なんですね。で、現代劇バージョンって当時はあんまり無かったんですけど、現代劇バージョンだとだいたい刑事でジャッキーがでマフィアと戦うみたいな内容で、これ現代劇なのでカンフー以外に結構ね、銃撃戦とかカーアクションとかがすごいんですね。
有坂:うんうん。
渡辺:で、冒頭、もう何かこうマフィアを警察が張り込んでそこを襲うみたいなところから始まるんですけども、超銃撃戦になってね。だから「いつカンフー始まるんだろう?」と思ったらもうカンフーするどころじゃないようなバチバチの銃撃戦が始まって、しかも何かスラム街みたいなところが舞台になってて、崖にスラム街のなんかこうバラック小屋が並んでいるようなところがあって、で、警察がマフィアを追い込んでいくんだけど、マフィアが「もう逃げ道がない、どうしよう?」みたいな。それで「スラム街を突っ切れー!」みたいな感じでもうね、車があのスラム街をぶっ壊しながら3台ぐらいが行く(笑)。で、よーく見ると人が逃げてる。それこそ誰か死んでるんじゃないかなって思うぐらいのもうガチのアクション。やっぱジャッキーの、本人がスタントを使わないみたいなのも有名なんですけど、結構その悪役が撃たれて2階から落っこちるとか、そういうところもそう。かなり見所でそういうのは本当にすごい。これは映画館で、本当に当時観ておきたかったっていうやつですね。
有坂:うんうん。
渡辺:テレビでも度肝を抜かれたのに、俺は映画館で観てたら本当にやばかっただろうなって言う。で、お楽しみのカンフーアクションもしっかりとあるし、あと何かデパートのね、あのー上の方から何て言うんだろう、ポールみたいなのに飛び乗って、あのー……
有坂:わかるわかる。
渡辺:何ていうの、あの電気のバチバチバチバチ……とやりながら降りていくみたいなシーンとかありつつ。あとエンドロールにね、
有坂:NGシーンね!
渡辺:あれがいいんだよね。
有坂:あれが無いとジャッキーの映画じゃない。
渡辺:そうそうそう。「このシーン何回もやり直してたんだ!?」みたいなやつとか。本当に何か危ないシーンがあったりね。……っていうところも含めて本当に超エンタメ。
有坂:うんうん。
渡辺:もうなんか、この当時の本当に最高峰のエンタメだったなっていうね。で、大人になって観ても、やっぱアクション本当にすごくて、大人になってからの方がやっぱアクションのすごさがわかるし。
有坂:そうだね。
渡辺:「危な!」っていう。そういうのはすごい感じる作品でした。でもね子ども心にはこのやっぱ空手好き男子からしたらもうたまらない。
有坂:ジャッキーの映画は笑いがあるのがいいんだよね。
渡辺:そうだよね。
有坂:緩急があって、ゲラゲラ笑ってたら本当にハラハラドキドキするようなアクションが続いたりっていうね。で、これ最初に僕が紹介したバスター・キートンが、実はジャッキー・チェンにとって本当神みたいな存在で、キートンがスタントを使わないアクションやってるのに憧れて、ジャッキーもそういうスタイルでやってるんで、ちゃんとそうやってね。もう先人の素晴らしいものはこう受け継がれていて。
渡辺:うん、そう。
有坂:今はそれトム・クルーズにね、そのバトンは渡されて彼は頑張っていますが。
渡辺:ね(笑)。
有坂:トム・クルーズなんてね、80年代からやってるんだもん。すごいよね。
渡辺:『トップガン(マーヴェリック)』もね、今年大ヒットで。
有坂:うんうん。じゃあ、僕の3本目。ちょっとね、メジャー系が続いたので、次はきっと誰も知らないであろう、ちょっとマニアックなのでいってみます。……というと?
渡辺:なに?笑
有坂セレクト3.『となりのトトロ』
監督/宮崎駿,1988年,日本,88分
渡辺:(笑)
有坂:これは、みなさん知ってます? 『となりのトトロ』。
渡辺:えー、どうなんでしょうね(笑)。
有坂:小学校6年生のサツキと妹のメイと、二人の話なんですけど。そう、
これね、多分、僕以外のこれを見てるみなさん、ここにいる手紙社のみなさん、みんな小さい頃観てるんだよね。
渡辺:そうだよ。
有坂:……僕は観てないんですよー。大人になって、それこそ3、4年前に初めて観たので、もう40超えてましたからね。でやっぱりその時思ったのは、「10歳の時に観ておきたかった」。
渡辺:うん。
有坂:やっぱり。本当にもう僕の周りでもジブリ好きは多いし、中でもやっぱり小学校の頃、トトロを何度も何度も観たっていう人は多じゃない?
渡辺:うん。
有坂:セリフも言えるし、で、やっぱ大人になってから観ても当然、宮崎映画というのは作品としても素晴らしいし、大人目線で初めて分かることもあるし。そういうメッセージ性だったりとかあるんですけど、やっぱりトトロのお腹に「もふっ」てやる感じとか、宮崎映画の特徴のその感触。本当に自分がそれを体験、追体験してるような感触をやっぱり子どもの頃に味わってたら、たぶんもっと小さい生き物に対して優しくなれたと思った。
渡辺:(笑)
有坂:あとは本当に“まっくろくろすけ”がいたりとか、「トトロがいるかもしれない」っていう目線を持って成長できたんだなと思うと、ほんっと悔しい!
渡辺:うんうん(笑)。
有坂:だから、この映画を本当に夢中になって観てる人で、なんていうかファンタジーを否定できる人っていないんじゃないかなって思うんだよね。
渡辺:うん。
有坂:ほんとトトロに夢中になったことがあれば。それぐらい人格に影響を与えているような気がしていて。それを素通りして、40を超えて観てしまったこの悲しさ。最近ちょっと前まで知らなかったんですけど、お笑い芸人のかまいたちの山内さんがまだ観てない。
渡辺:あ、そうなんだ?
有坂:唯一の自慢が『となりのトトロ』をまだ1回も見たことがないっていう。
渡辺:あー、ネタでやってるね?
有坂:そう、M-1のネタでもやったらしくて……
渡辺:見た。
有坂:それを見て「自分もちょっと前までは同じこと言ってたな」と。
渡辺:(笑)
有坂:でも見てしまったから何か中途半端な感じになっちゃいましたけど……。
渡辺:はいはいはい。観ちゃったんだ?
有坂:観ちゃいました(笑)。でもやっぱり繰り返し観たいし、自分の娘にももうちょっとしたらね、早速観せてあげたいなと思ったりもします。あと、僕トトロの前に、短編で『めいとこねこバス』っていうのがあるの知ってます? みなさん。
渡辺:ジブリ美術館?
有坂:そう、でしか観られない宮崎駿が作った短編。実はそっちを先に観てるんですよ。それ言ったらもうみんなに「ひねくれてるな」とか散々言われたんですけど、「劇場で観ようって」決めちゃってたので、トトロはなかなか観れなかった。ですけど、まだ観ていない人はね、『めいとこねこバス』も。ちょっとジブリ美術館に行けば毎回観られるという訳ではなくて、プログラムが1週間2週間で変わっているので、ウェブに出てるそのプログラムを確認して、ぜひ『めいとこねこバス』も併せて観ていただけたらと思います。……やっぱ宮崎映画はね、みんな小学生の時にね。
渡辺:そりゃそうですよ。みんな知ってるから。
有坂:そう、それが当たり前の日本人って、世界的に見たら何かもっともっと何かすごいポテンシャルがあるんじゃないのかなって思っちゃう。そういうメッセージ性とかも全部含めて。っていう宮崎駿のすごさを今更ながら感じてる有坂でした。
渡辺:(笑)。なるほどね。でしょうね。
有坂:はい。
渡辺:そりゃそうだ。
有坂:(コメントで)「トトロ大人になってからもっと好きになりました。」「実はとなりのトトロ去年初めて観ました。」
渡辺:へー!
有坂:いた! 仲間がいた!
渡辺:いた! そうなんだね。
有坂:うんうん。
渡辺:ええと、どうしようかな。僕の4本目。4本目はですね。重なっちゃったらどうしようと思ったんですけど、そのままちょっと挙げてみます。
渡辺セレクト4.『天空の城ラピュタ』
監督/宮崎駿,1986年,日本,124分
有坂:(笑)
渡辺:これはやっぱり俺は当時「すげえ観たい」と思って、観たっていう。
有坂:何歳?
渡辺:だから、10歳ぐらいじゃない? たぶん85年とかだと思うんで。で、小学校の先生が勧めてくれたのを覚えてて、何か授業でちょっと観せられた。で、何か「すげえ面白い」と思って、そしたら映画館じゃなくて公民館みたいなところで夏休みにやったりしてて。で、それが公開当時だったのか、ちょっと何年か経ってだったのか忘れたけど、観てとんでもなく面白いのですげえハマったっていうね。
有坂:うんうん。
渡辺:これ公開当時は興行成績でいうとそんなにね。確か良くないんですよね。だから大ヒット映画ではなくて。でも、やっぱりジブリの映画って『風の谷のナウシカ』もそうですけど、何かこう後から後からあの話題になってっていう。
有坂:ね。
渡辺:それでテレビとかでね繰り返し見ても飽きないっていう。それがやっぱりすごいし、やっぱり何かあの男子だとこういう冒険ものの方が、すごくハマるというか。だからトトロとかも観てたけど、全然ラピュタ派で、やっぱり何かこの宝物を探しに行くみたいなね。そういう冒険物語っていうのは、もう男子にはドハマリする。
有坂:でもさ、シータって女の子でしょ?
渡辺:シータはね。パズーいるじゃん(笑)。
有坂:あそうか。
渡辺:そうですよ、パズー目線ですよ。何かさ『グーニーズ』もさ、屋根裏に宝の地図があって、みたいなさ。これも、何か空から女の子降ってきて、何か石を持ってて、石が何か空を指しているみたいな。それで何か冒険が始まるみたいな。ね、その辺がもうワクワクが止まらない。それはやっぱり何かね、少年心からしてももうワクワクが止まらない。ずっと観てたいっていう気持ちだったし、大人になってから観ても面白いって思ったし、何回観てもやっぱり面白い。それが何かすごいなと思って。子ども心で本当に面白いと思ったし、大人になるとまたちょっと違う目線にはなったりするけれども、変わらず面白いっていう。
有坂:これまだ1回しか観てないんだけど……
渡辺:1回しか!? ええー。
有坂:その、2回目、3回目、4回目と観てるわけじゃん? どう面白かった? 何が違ったの?
渡辺:何か、やっぱりどんな映画でもそうだけど、細かいとこに気づくようになってくるじゃん。、そういうところにも、細部までちゃんとなんか行き届いているから。セリフだったりとか。
有坂:うん。
渡辺:何だろう。例えば「バルス祭り」とかさ、あんなことになるとはね。当時誰も思ってないけど、やっぱり何かみんなで“気になるところ”みたいなのがそれぞれあると思うんだけど、それが「やっぱバルスだよね」って言った時に多分盛り上がったんだろうと思うんだよね。で、この前やったのかな? 金曜ロードショーで。
有坂:やってたよね。
渡辺:でほら、バルス祭りって「バルス!」って言うタイミングでみんなが「バルス」ってツイートしまくって、それがギネス記録になってて。この前そのバルスの瞬間が終わった後にツイッターの公式が「今回も耐えられた」みたいにつぶやいたらしい。
有坂:(笑)
渡辺:めちゃくちゃサーバーに負荷がかかってるんでね、その瞬間。とんでもない数のアクセスがあるから、たぶんダウンしそうになるわけでしょう。
有坂:そんななの?!
渡辺:その対策を多分ツイッターは立ててて、「ふー、耐えられた……」みたいなのを、あの公式が本音をつぶやいたみたいなのがニュースに出て。
有坂:へー、面白い。
渡辺:面白いよね。
有坂:で、『サマーウォーズ』もそこを狙ってるわけでしょ?
渡辺:あぁ。
有坂:「お願いしまーす」って(笑)。まだそこまでは行っていないんだね。
渡辺:そうだね。でもそれぐらいね、世代を超えてたし。なんかさ「40秒で支度しな」みたいなさ、セリフ覚えてる?
有坂:?
渡辺:そう、わかんないでしょう? 繰り返し観るとその、そういうのがわかるのよ。
有坂:そうなんだよね。「なんでそれを覚えていないの?」って言われるんだけど、回数が違うんだよね。
渡辺:そうそうそう。だから、やっぱジブリに関しては多分みんな何十回って観てるから……
有坂:血肉になっているんだよね。
渡辺:そうそのセリフを思い出すっていう。ほら、何か「人が虫けらのようだ」とかさ。
有坂;知ってる。よく、いろんな人から(笑)。
渡辺:聞くでしょ?(笑)。そういうのがいっぱいある。何か高いところに登ってさ、本当に下の方にいる人たちがさ、点にしか見えない時とか、それこそ言いたくなる(笑)。
有坂:(笑)
渡辺:そういうのがあるわけですよ。
有坂:迷惑ですから(笑)。いいかげんにしてくださいよ(笑)。
渡辺:それぐらいやっぱりね、子どもにもね影響はあるし。
有坂:また、親子で観られるからいいよね。
渡辺:そうだね。うん。
有坂:それがいいよね。世代を超えて一緒に楽しめて。語れるポイントもいろいろあって。
渡辺:大人になって観ても面白いってのがやっぱすごいよね。
有坂:特に当時なんてアニメーションの認知度が「アニメは子どもが観るものだ」っていう。
渡辺:そうだね。
有坂:そんな中でジブリはずっと作ってきてるじゃん。
渡辺:うん。
有坂:それでだんだんそこも層が広がってきて、同時に昔の映画も再評価されてっていう流れで。
渡辺:そうそうそうそう。
有坂:それはすごいよね。もうちょっと別格も別格だよね。カルチャーを。
渡辺:うん。本当に。その中でもやっぱりラピュタが好きだったね。
有坂:観たかった、10歳で。これも40超えてからだったんだよな……。
渡辺:はい。
有坂:はい、わかりました。じゃ。ちょっとアニメが続いたので、僕の4本目は日本の映画行きたいと思います。実写映画です。
有坂セレクト4.『鉄塔武蔵野線』
監督/長尾直樹,1997年,日本,115分
渡辺:んー!
有坂:知ってますか? これはすっごい乱暴に言うと日本版『スタンド・バイ・ミー』です。小役時代の伊藤淳史が主役を演じた、これは男の子二人のロードムービーですね。小学校6年生だったかな。何かその、仲の良かった二人のうちの一人が引っ越しをすることになって、最後の夏休みにたまたま自分たちの住んでる保谷かな? に鉄塔があって、そこに何かこう数字が書いてあることに気づき、数字が書いてあるってことはこれ……70幾つだったのかな……たどっていけば「1」にたどり着けるんじゃないか、ということで、夏休み最後の思い出作りに二人で自転車に乗って、その鉄塔の原点に二人で旅しようという本当に何かこう。子どもらしい発想のロードムービーになってます
渡辺:うんうんうん。
有坂:で、やっぱりひと夏の冒険ものってある意味もうひとつのさ。日本に限らず、アメリカなんて特にそれが多いけど、1ジャンルになってるじゃん? そう、で、やっぱりその大人にとってはなんかどうでもいいようなことも、子どもにとってはすごくシリアスだったり、夢中になれたりする。それを大人目線で「そんなくだらないことやって」って、やっぱり言っちゃうか、子どもに楽しませるかで、全然その子の未来って変わるなと思うんだけど、こういう映画をいっぱい観てると、やっぱり大人では理解できないけど、やりたいんだったらやらせてみようって思えるような1本がこの『鉄塔武蔵野線』かなと思います。
渡辺:うんうん。
有坂:で、なんかこう出発前にね、わくわくするって気持ちとか何か途中でくじけそうになっちゃったりとか、何かこう、あんなに楽しくて盛り上がって出発したのに物凄い心細くなっちゃったりとか。実は僕も兄弟と幼なじみと一緒に、東京の練馬区から埼玉県の飯能の高麗っていうとこまで、幼馴染の家まで「自転車で行こう!」ってやったことがあって。何かそれを体験してるから、すごくなんかに共感できるポイントがあるんです。大人になってから、僕はこの『鉄塔武蔵野線』を観たので、その自分の過去の記憶となんかすっと繋がるような、やっぱりそういう場面だったり、そういう雰囲気っていうのがね。すごく映像の中に詰まってます。なので、思い出したいなという人にも見てほしいし、逆にこれを子どもの時に見ておくと、そういう冒険のし方もあるんだなとか、自分の何かイマジネーションを広げるいいきっかけにもなるかなと思うので、親子で一緒に観るのも楽しいかなと思うので、ぜひチャレンジしてみてください。
渡辺:なるほどね。
有坂:何かこれやっぱりいいなと思うのが、鉄塔って、鉄塔と繋がっているから、繋がっている安心感があるんだよね。
渡辺:うん。
有坂:だから、たぶん無茶そうだけど、ここを進むだけ進んでダメなら戻ればいい。って想像できるじゃない。何か、そのちょっとした安心感が何か、やっぱりその子どもの行動力にまでつながってるんだなって。すごく説得力があって。これ元々ライトノベル、小説版があって、それの映画版なんですけど。ちょっとなかなか観られないタイプの映画かもしれないんですけど、ぜひ探して観てみてください。
渡辺:なるほどね。でも昔ってそういうことしたよね。
有坂:したよね。
渡辺:今どきってなんかやってない気がるすんだよね。
有坂:やってんじゃない? 知らないだけで。
渡辺:なんだろう、本当に何か今どきの子どもって、すごい自由がありそうで無い気はするけどね。何か色々ネットとかさゲームでたくさんやれることが多いからさ、こういうなんかアナログなそういう体験はあんまりない気はするんだよね。
有坂:まあリアルなね。うん、ちょっとダイナミックな遊びっていうのは減ってはいるのかもしれないね。
渡辺:うん。
有坂:じゃあなおさら見てほしいね。
渡辺:そうね。今の感覚だと、「なんでこういうことしないの?」っていうのがさ。その、昔は携帯も無いしグーグルマップは無いし、みたいな。でもそれが当たり前だったから、そういうの無しでいろいろやってたわけでしょ?
有坂:うんそうだね。
渡辺:俺も練馬区からさ、自転車でジャッキー・チェンを観に行ったね。
有坂:あったね。どこまで行ったの?
渡辺:結局ね、もうよく覚えてないんだけど、たぶんね松戸くらいまで行ってて。
有坂:そこでしかやってなかったの?
渡辺:そこしか映画館も知らなかったっていう。
有坂:もっと近くにあるのに(笑)。
渡辺:うん。よく今考えたら地図も持たずにたどり着いたなと思って。
有坂:なんか底力あるんだね。
渡辺:朝早く出て、帰ってきた時に真っ暗だったもんね。すごい距離移動してたと思うし。よくそんなことやってたなと。
有坂:やっぱさ、強烈な思い出として残りるよね。
渡辺:はい。じゃあはい5本目行きたいと思います。
渡辺セレクト5.『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』
監督/スティーヴン・スピルバーグ,1981年,アメリカ,115分
有坂:おー。
渡辺:で、これはまあ知ってる人は多いと思うんですけど、考古学者のハリソン・フォードが、またこう何て言うんでしょう。ピラミッドの秘密みたいなのを探っていくうちに何かこう秘宝を見つけていくみたいな。そういうシリーズものですね。で、歴史が好きなので、あの三国志みたいな歴史も好きなんですけど、古代エジプトみたいのも当時は大好きで、なんでそれでやっぱりそういうところを好きな人っていると思うんですけども、それをテーマにした作品だったりもしたので、アクションもすごいし、やっぱもう『グーニーズ』みたいなね。本当に宝探し系の、少年じゃなくて大人なんだけど、こう、旅をね、するっていう。冒険をするっていう。そういうのは本当にやっぱり少年心に大好きなんで、もうドハマりした作品だったし、やっぱりこの影響で考古学者になりたいと思っていたから。
有坂:へー。
渡辺:ずっと。なんで、そういう影響も与えられた作品っていう感じです。で、「やっぱりスピルバーグって面白いんだな」って思ったのが、それは後々。スピルバーグとかそんな意識せずに当時は観てたけど、やっぱり監督で、大人……20歳ぐらいになってから監督で観るようになったりとかした時に「スピルバーグってやっぱ面白いんだな」って気付いたみたいな。っていうところはありますね。
有坂:スピルハンバーグってあるよね?
渡辺:違うよ。ウーピー・ゴールドバーグ。
有坂:ウーピーか。どうでもいい話(笑)
渡辺:ウーピー・ゴールドバーガーだ。スティーブン・スティールバーガーっていうのもメニューにあるの。
有坂:そこに?
渡辺:そう(笑)。でも、お店の名前はウーピー・ゴールドバーガーだった。確か。何回か行ってるから(笑)。
有坂:これ1981年で、『E.T.』とかより前な訳じゃん? スピルバーグのキャリアでいうと。
渡辺:うん。
有坂:僕が当時、だから中学一緒で順也が映画好きでよくこういう話をしてた時に。映画全然知らなかったけどスピルバーグは知ってたからね。
渡辺:ああそう。
有坂:それがだからもうすごい。だからCMとかでも、もはや監督作じゃなくて製作総指揮なのに、さもスピルバーグが監督してるかのようなCMとかいっぱいあったよね。
渡辺:そうだよね。「全米ナンバーワン」とかね。そうそうそう。
有坂:でも、やはりあれで監督っていうことを何か初めて認識して。なんで未だにその人が現役でね、第一線の映画を作ってるんだから。すごいよね。
渡辺:うん、だからほんとに僕の今回の話も完全に男子目線っていう感じでしたけど。
有坂:インディ・ジョーンズ。これ人気シリーズでかなり続編もあり。これ続編はさ、観てどうだったの? 当時観てるわけでしょ、きっと。
渡辺:観てる観てる。それもほぼほぼね、テレビで観てた。3作目ぐらいまでは。
有坂:裏切られずに、2作目も3作目も面白かった?
渡辺:そうだね。何かナチスのナントカ、とか何かこう“ナチスの裏金”みたいなやつとか何かそういうのもネタとして好きだったんでね。その辺もね、すごい良かったですね。
有坂:ふんふん。
渡辺:で、だんだんなんかハリソン・フォードがもう爺ちゃんになってるのにまだやる、みたいな(笑)
有坂:また作ったもんね。
渡辺:ね。
有坂:最近そういうの多いよね、『ロッキー』とかね。でも、それもファンの熱を、1周してもう1回観たいという欲望を満たしてくれているのかもしれないけど。
渡辺:うん、そうですね。
有坂:わかりました。じゃあ僕の最後5本目行きたいと思います。最後はディズニーのアニメーションです。
有坂セレクト5.『シリー・シンフォニー物語』
監督/クライド・ジェロニミ,1955年,アメリカ,49分
渡辺:んー!
有坂:これは時代でいうと、1929年から39年の10年間に作られた「シリー・シンフォニー」というシリーズ物になります。当時、ディズニーはミッキーのアニメーションが作られて。ヒットして、そこにその映画がサイレントからトーキーに変わって、物語のあるミッキー映画が、作るもの作るものヒットした。そんなディズニーの中で。でもその「ストーリー軸じゃないアニメーションも作ろうぜ」って言う人もいた。でもウォルト・ディズニーはそのミッキーにすごい力を入れてたから。対立してたんだけど、「じゃあもう別物として作ろう」といって、この「シリー・シンフォニー」シリーズが立ち上がったんですね。
渡辺:うんうん。
有坂:で、このシリーズというのは、音楽と絵を同期させる、いわゆるミュージカルみたいな手法でアニメーションを作るっていうのに特化したシリーズです。
渡辺:そうだよね。
有坂:なので、セリフとかというのはほぼなくて、音楽に合わせてキャラクターが動く。ぴったりだから、音楽に合わせて動く。で、例えば1作目は骸骨が主人公のやつなんですけど、4人のガイコツが並んでスケルトンダンスみたいなことやるんですけど、音楽にぴったり合ってるから見てて気持ちいいはずなんですけど、それがね、3分5分って続くと完璧すぎてちょっと怖くなっちゃう。
渡辺:(笑)
有坂:だから何かそういうのをでもね、改めて考えさせられた。完璧ならいいわけじゃなくて、完璧なら楽しいことっていうことでもなくて、逆にそのちょっと恐怖につながるんだなっていうのを教えてくれたシリーズでもあります。
渡辺:うんうんうんうん。
有坂:まあディズニーだと、その後に作られた傑作の『ファンタジア』の原点と言われているのが、この「シリー・シンフォニー」のシリーズです。で、何か、そういったちょっと実験的な意味合いで作られたシリーズで、10年間で一応この「シリー・シンフォニー」は終わったんですけど。でもそれ以降、例えば今だとピクサーとか、短編アニメーションを作って長編の前にやる。その短編をステップアップの機会として監督を育成するとか言いますけど、これも辿っていくと、実はこのディズニーの「シリー・シンフォニー」につながるんです。全部で75本ぐらい。
渡辺:そんなあるんだっけ?
有坂:そう、そんなにある。これYouTubeでも観られるのはありますし、ディズニー・プラスでも観られるのは確かあると思うんで観てほしいんですけど、一番有名なのは『三匹の子ぶた』なんですけど、僕のオススメは……
渡辺:骸骨?
有坂:いや、2本あって、『春』。英語だと『Springtime』だったかな。春夏秋冬の『春』というのが1本と、もう1本が『サンタのオモチャ工房』。
渡辺:うんうん。
有坂:サンタもの、クリスマスものもいくつかあって。たぶんそれで観たことある人もいると思う。それが「シリー・シンフォニー」だというのは知らずに見ている人も多いと思うので、観れば気づくかもしれないんですけど、『サンタのオモチャ工房』はね、ぜひ、これからのシーズンちょっと肌寒くなってきたら、もう、すぐにでも親子で観て、12月24日が来るのを家族みんなで待ち遠しく、はい、なってくれたらいいかなと思います。
渡辺:うんうんうん。
有坂:ぜひ何かこの「シリー・シンフォニー」を10歳のときに観たかったっていうのは、何か、改めてやっぱりその「物語がないアニメーションというのがあるんだな、面白いんだな、でも何かちょっと怖いな」っていう……。これは短いので結構ね、2本3本と観られちゃうんですよ。でも観ていく中で、やっぱり普通のアニメと何かが違うってことを10歳で感じることができたら、またもっとね、映像を観る時の世界も広がったのかなと思ってますし、ディズニーの印象もまたちょっと変わったかもしれないので、個人的には観たかったなと思う1本です。
渡辺:なるほど。この骸骨のとかね、だいぶダークですけど。
有坂:そうそうそうそう。
渡辺:ティム・バートンとか影響を受けてそうだね。
有坂:そうそう。ティム・バートンも影響受けてるし、この骸骨でいうとTHE BAWDIESってバンドが、もうこれにオマージュを捧げたミュージックビデオも作ってますから。
渡辺:そうなんだ(笑)。
有坂:そうそう、なくらい。たぶんなんかもうミシェル・ゴンドリーとか今面白い映像を作ってる人っていうのは、たどっていけば、ここにたどり着くか影響は受けてるな、というシリーズかなと思います。ぜひ観てみてください。
──
有坂:はい、ということで、お題をですね、ちょっと別解釈で選んだ僕らの作品。僕はあの順也が選んだ5本というのは、やっぱり、もう中学の時に出会って映画の話を聞いたときから、よく耳にしたやつばっかりで、やっぱり自分が大人になって映画が好きになってから、その『ポリス・ストーリー』とか『ポリス・アカデミー』とか観ましたけど、本当に、だからあの年代で観られた順也が羨ましくてしょうがないっていう映画を今日改めて挙げられたので、悔しさでいっぱい。やられた。
渡辺:(笑)。でも改めて「洋画だったな」と思った。
有坂:そうだね。
渡辺:あんまり邦画の選択肢はほぼなかったかな。
有坂:そういう時代だったよね。やっぱり邦画にお金を払うのはもったいないっていう空気があったもんね当時はね。どうでした?
渡辺:いや、改めて懐かしさをすごい、ね。これはもうなんか自分の子どもの時のあれで選んでたから、もう本当にね懐かしさが溢れました。すごいね思い出した。やっぱり当時の心境というか。
有坂:はいはいはい。
渡辺:でもそれでもやっぱり何かすっごい男子目線だなと自分でも思ったし。やっぱ子どもの男の子は冒険もの好きだよなっていうのは本当に思ってね。だから『スタンド・バイ・ミー』とか『グーニーズ』とかはちょっと挙げるやめとこうと思ったり。それ以外にしたんですけど、そういう系のタイトルも名作がやっぱ多かったかなっていうか。
有坂:いや、やっぱりね、そのエンターテインメントに振り切った時代じゃない、80年代って。
渡辺:うん、そうだね。
有坂:だからスピルバーグとかジョージ・ルーカスとかが活躍して、そういう1時代を築いて。やっぱりそれに影響を受けて監督は全然有名じゃないんだけど、すごい上質なエンタメ映画がたくさん作られたのが多分、1980年代に入ってだから、観ててワクワクするし、楽しいんだよね。
渡辺:そうだね。
有坂:そういうものが多かったから、やっぱ。で、そういうものをテレビでも毎週のように放映してた。
渡辺:うん。
有坂:だから映画ファンがあれだけいたっていうのは今振り返るとすごいし、今足りてないものもね、合わせ鏡で見えてくるし。というのでね、どんなに時代が変わってもシリアスな要素が今ね空気にあったとしても、ああいう。エンタメ要素とかわくわくしたものをやっぱり映画は忘れちゃいけないなっていうのはね、今日の順也の5本を見ても改めて感じました。うまくいくといいね。そういう風にしたいね。
渡辺:そうですね。
──
有坂:じゃあ何か最後にお知らせがあれば。
渡辺:えーと、キノ・イグルーじゃなくてフィルマークスの方で。今リバイバル上映企画とかをやってたりするんですけど、今度9月の9日から『ルパン3世 カリオストロの城』の全国リバイバル上映っていうのを企画してやることになって、全国の映画館で上映することになったので、結構、金曜ロードショーでは見てるけど、映画館のスクリーンでは観ていない、という人は多いと思うので、ぜひこの機会に足を運んでいただければと。
有坂:いわゆるシネコンだよね?
渡辺:そう、そうですね。東京だと新宿ピカデリーとか、そういう大きめのシネコンで、あ、あとイオンシネマとかそういうとこでやったりします。
有坂:大変だったらしいですよ。
渡辺:(笑)
有坂:裏側は大変で、「なんとか形にできた」ってこの前言ってたんで。
渡辺:愚痴をね、言ってました(笑)。
有坂:珍しく愚痴をね。他は?
渡辺:他は、あとは、あれ、ウォン・カーワイも今リバイバル上映が始まって、それがめちゃくちゃ良くて。
有坂:お客さんも入ってね。
渡辺:そう、何か90年代のミニシアターブームの頃のね。あの雰囲気をまたなんか思い出すというか、そういう感じになるんで、そういうのもね。
有坂:お、質問が来てる。「佐賀のイオンシネマでもありますか?」。
渡辺:あ、佐賀、うん。あの、何て言ったっけな。佐賀大和でやります。
有坂:の、イオンシネマ?
渡辺:イオンシネマで。
有坂:だそうです。
渡辺:ぜひ!
有坂:はい、じゃ僕からのお知らせは、キノ・イグルーのイベントで、ちょっとまだのうちのサイトとかSNSではリリースできてないんですけど、9月23日、祝日にMUJI GINZAでイベントをやります。で、これは単発のイベントではなくて、ちょっとどれぐらいのペースかまだ決まっていないんですけど、定期的にやっていこうという新しいプロジェクトで。「シークレット・オブ・シネマ」という企画です。タイトルの通り、これ、何が観られるかわからない上映会です。で、もっと言うと上映作品だけでだけじゃなくて、MUJI GINZAの中のどこで上映されるかも当日行ってみないとわからないっていう。かなりね、攻めた内容。
渡辺:(笑)
有坂:本当にお客さん入るなんてもう誰も確信を持てない中で立ち上がったプロジェクトです。
渡辺:あそこの銀座のってさ、普通の無印の店舗があって、その上がホテルになってて……。
有坂:そう、あのだから全館の中のどこかで、上映会の場所になる。で、毎回その会場が変わるし、上映する映画ももちろん変わって……。
渡辺:じゃあ普段入れる場所と違うところでできるかもしれないね。
有坂:そうなんです。なので映画観に行く時って、もちろんタイトルを決めた時点で、どんな映画で誰が出ててどんな物語かも知ってるし、予告編も観て何か名場面みたいなのも実はそこで観ちゃって。だから割と情報が入っている状態で映画を観てると思うんですけど、そういう今の時代と逆行して不意打ちの出会いってね。たぶん夜中なんとなくチャンネル回してたら気になった映画があって、最後まで観たら、それが自分にとっての人生の1本になったみたいな。そういう不意打ちの体験みたいなものをあえて企画に盛り込もうということで始めたものです。で、これはIDEEのインテリア系とか好きな人にとっては神かもしれませんけど、IDEEの大島さんというディレクターの人と一緒にやってる企画で、毎回その映画の上映の後に食事の時間があるんですけど、食事の時間で僕と大島さんで、その映画についての対談みたいなのもするという企画になってますので、詳しくは9月1日から予約受付開始なので、もう少ししたら詳細を出せると思うので、ぜひ9月23日空けて待ってていただけたらうれしいなと思います。はい。
渡辺:あとあれじゃない? 横須賀美術館。
有坂:あ、そうそう横須賀美術館。締め切っちゃったんですよね。渡辺:そう、ああ、そうだね。
有坂:横須賀美術館で3年ぶりに野外でね。上映会がしばらくできてなかったからね。で、今回予約制になって。いつもならふらっと行けば観れるんですけど、ちょっと人数を制限しなきゃいけないので、200人限定でちょっとそれ締め切っちゃったんですけども。はい、またそういうねイベントもできるようになってきましたということだけは一応お伝えしようかと思います。
──
有坂:はい、ではですね、今月の「月刊手紙舎」ニューシネマワンダーランドはこれで終わりたいと思います。来月はまたね。
渡辺:うん。
有坂:今回に近い確かテーマだったと思います。
渡辺:はいまた、来月も楽しみにしていていただければと思います。
有坂:では、今月はこれをもって終了です。みなさん、どうもありがとうございました!
渡辺:みなさんおやすみなさい!
選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。
Instagram
キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003)
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe)
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?