手紙社リストVOL.10“本”編「花田菜々子が選ぶ、甘いものが恋しくなる本10冊」

あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「甘いものが恋しくなる本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは？」という花田さんが雰囲気で（いい意味で！）選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。

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1.『にっぽん全国おみやげおやつ』（MOE BOOKS）
著・文／甲斐みのり，発行／白泉社

旅先で見つけた洋菓子屋さんの、きれいでかわいいお菓子たち。甲斐みのりさんが手がけているだけあって、ページのすみずみにまで愛が溢れてる！！　「かわいい」「おいしそう」「ほしい」が止まらないワクワク本です。

2.『おやつとスプーン』
著・文／川地あや香，発行／パイ インターナショナル

一応お菓子のレシピ本ですが、写真集のように手元に置いておきたくなる1冊。金工作家の著者が作った美しいカトラリーや食器に、静かな風景と、季節を取り入れた素朴なお菓子を合わせた写真は、すっと澄んだ空気を感じさせてくれます。

3.『パフェが一番エラい。』
著・文／斧屋，発行／ホーム社

日本唯一（？）のパフェ評論家による3冊目のパフェ本は、もうパフェガイドですらなく、ただただパフェ哲学を延々と熱く語るという、やや常軌を逸した内容に。ただ、ここには間違いなく愛があります。パフェへの対峙の仕方を通して、愛とは何か、ということをこの本は教えてくれるはずです。

4.『バナナブレッドのプディング』
著・文／大島弓子，発行／白泉社

言わずもがな、大島弓子の代表作。大人になる前の少女の心の震えを描き出したこの作品は、大人になって読み返してこそ新鮮な感動を与えてくれるのでは。わたあめのように繊細に見えて、実は野ばらの茎のような強さを持ち合わせた物語だと思います。

5.『バームクーヘンでわたしは眠った　もともとの川柳日記』
著・文／柳本々々，イラスト／安福 望，発行／春陽堂書店

タイトルからして気になりすぎるこちらは、川柳と散文とイラストがふわふわと混ざり合った、不思議な夢のような本。まともな社会人のような顔をして生きるのに疲れたときは、この本に出てくる小さなクマになってお菓子のような言葉の中を浮遊したくなります。

6.『眠れぬ夜はケーキを焼いて』
著・文／午後，発行／KADOKAWA

朝4時って、あらゆる時間の中でいちばんぽつんとしている感じがするので好きです。そんな時間に目が覚めてしまったときは本を読むのもいいですが、自分のためにひっそりとケーキを焼くなんていう過ごし方も素敵。寂しい夜のためのコミックエッセイ。

7.『うっとり、チョコレート』（おいしい文藝）
著・文／伊藤まさこ・片岡義男・鈴木いづみ・西 加奈子・宮内悠介・森 茉莉，発行／河出書房新社

今昔問わず、さまざまな作家によって描かれたエッセイのアンソロジーシリーズ。個人的にチョコレートが好きなので、いろんな一流のチョコレートエッセイが一度に読めるのはとってもお得な気分。こうやって出会うちょっと昔のエッセイとかって、なんかいいんですよね。

8.『タルトタタンの夢』
著・文／近藤史恵，発行／東京創元社

むごくて怖い殺人事件だけがミステリーではありません。普段ミステリーは読まない、という人にこそおすすめしたい、人が死ななくて、出てくる料理とお菓子が全部おいしそうすぎて困る異色のミステリー小説。楽しい読書時間をお約束します。お腹が空いてるときには読まないほうがいいかも……。

9.『ティーとアペロ　お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』
著・文／長尾 智子，発行／柴田書店

お菓子作りの本でロングセラーになるというのはかなり難しいことだと思うのですが、うちのお店で長く売れているのがこの本。大人っぽいのにどこかやさしい感じのするおやつのレシピは、自分らしくリラックスできる時間の大切さを教えてくれます。

10.『ロシアのチョコレート包み紙 ーソ連時代のかわいいデザインー』
著・文／小我野明子 イーゴリ・スミレンヌィ，訳／有信優子，発行／青幻舎

バレンタインにちなんでチョコレート関連の本をもう一冊。これ、チョコレート、とタイトルにはありますが、それがなかったら「ロシアの絵本の挿画集なのかな？」と思うくらい美しいデザイン。その歴史的な背景も含め味わい深い1冊です。少し不安になるニュースも入ってきていますが、どこの国にも、素敵なパッケージのチョコレートを笑顔で食べられるような平和があってほしいと心から願っています。

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選者：花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、現在は「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。

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