見出し画像

誰かに贈りたくなるコトバ#7 悩める友人へ 

「It's 7:30 in the morning,dawg.」(まだ朝の7時半だぜ!) 

―映画『8mile』

こちら、カリスマラッパーエミネムの半自伝的な映画です。本人が主人公を演じていることで話題になりましたね。

作品のあらすじを書きますと、

デトロイトの工場で働くラビットこと青年ジミーには夢があった。ラッパーとして成功し、どん底の日々から抜け出すこと。プロデビューを目指す彼は街で行なわれているラップ・バトルに出場しようとするが、繊細な性格ゆえにプレッシャーを感じ、棄権してしまう。モデル志望の娘アレックスとの恋、トレーラーハウスに暮らす家族との生活、そして仲間たちと思い描く成功の夢。ジミーは迷い、傷つきながらも、やがてラップのバトルステージに立つ……。

映画.comより引用

主人公が友達(さして重要人物ではなさそうな、大きな体躯の気の抜けた感じのダメ友達)に早朝に仕事場である工場に車で送ってもらった際にこんなヤリトリがありました。

「Ever wonder at what point you got to say “Fuck it”? When you got to stop living up here and start living down here?」
(なぁ、いつ夢にあきらめをつければいい? 高望みを捨て、地に足をつけるのはいつだ?)

それに対する友達の返答が、
「It's 7:30 in the morning,dawg.」(まだ朝の7時半だぜ!)  

だったわけです。


本編の中盤に登場する場面なんですが、ここまでラップバトルでは一言も発せずに終わるわ、彼女とも別れるわ、住む場所もなくなって母親のトレーラーハウスに出戻るわ、その母親は男にうつつを抜かすわ、家賃滞納でその住む場所さえ追い出されそうだわ、どこまで真実なのかわからないぐらいに人生どん底スパイラル。

答えのない、いや寧ろ答えは自分で見つけるしかないことをわかっていながらラビットが思わず吐露してしまった胸の内、それもいつも前向きにきっかけを与えてくれる親友というより、その脇にいるモブ的ダメ友に対して。いやそんなモブだからこそ吐露できたのかもしれない。

作中では街中、工場内、クラブと様々なところでラップバトルが繰り広げられるのですが、そのどの巧妙なリリックよりも、この気の抜けた、ある意味で間抜けともとれる一言に妙に惹かれてしまいました。


時として、相手に対して真摯に向き合ったり、本気で解決策を提案することが寧ろ誰かを追い詰めることもあるのかもしれない。ちょっと笑えるぐらいにやり過ごすこと、そんなこんなで時が来ることを待つことも大切だったりするのかもなんて感じます。

それをラビット自身が一番自覚してたからこそモブ友にだけ開いてしまった心の声なんだろうな。

自分自身は、以前から深く付き合う友達が周囲よりも少ないことが悩みというべきか、コンプレックスというべきかこんな人生でもいいのかななんて思ってましたが、時にはモブ友であることにも価値があったりするのかも、とちょっと勇気をもらった映画でした。これからも“モブ道”を邁進したいと思います(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?