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通りすがりのギャラリーで「あれ」のシャンデリアをみた

仕事からの帰り道、なにげなく小さなギャラリーの窓からなかを見た。
巨大なシャンデリアと、コンビニのビニール袋が天井から下がっているのが見えた。「どういう意図なんだろう」と、数日後、入ってみた。

シャンデリアは、あのイチジク型カンチョー(浣腸)でできていた。

作ったのは、大阪の現代美術家・池田慎(しん)さん(44歳)だった。
個展の最終日にはご本人がいらっしゃるというので、次の日また顔を出して話を聞いた。

イチジク型浣腸のシャンデリアにばかり目を奪われてしまうが、展示されていたコンビニのビニール袋や、カップラーメンのフタには、松や鶴、菊などの日本的な文様が刺繍されていた。説明が難しいのだが、もとの絵柄を崩さないように、ちゃんと刺繍糸の色が合わせられていて、やたら繊細な作りになっている。

「フィボナッチ数列」を再現した一輪挿しは、線が「枝分かれ」していく様子を実際の枝を細かく組み合わせていた。初めてこの作品を見たときは「作者は『鬼才』か『奇才』だな……」と思っていたが、実際に会ってみると、柔和なおじさんだった。

池田さんによると、浣腸のシャンデリアには、200個超の浣腸が使用されているという。

「別の作品で浣腸を使ったことがあって、それを見ていたら綺麗だな、と。それで、これもまた別の作品で使った鎖に通してみたら、うまくはまった。あとは『作るしかない』な、と」

この作品「シャンデリア」を製作した経緯を、そう語っていた。

ちなみに「浣腸を使った別の作品」というのは、浣腸のパッケージを使った仏壇だったという。ご本人を前に「アホや……」という言葉が出かかった。(いい意味で)アホや。

池田さんは、大阪芸術大学デザイン学科を卒業後、働きながら創作活動を続けているという。

「(作品にとりかかるときは)まず『ムダな物を作ろう』と考えますね」という池田さん。「ムダなものって、ある意味で贅沢なことなので」と、笑っていた。

近くの別会場でも池田さんの個展があり、そちらでは『ふわふわガバメント』などが展示されていた。これは、学生が3Dプリンタでプラスチック製の銃を作って逮捕された事件に触発されたというもの。池田さんは、銃の部品を色とりどりの布で作った。メッセージ性が強そうな作品ではあるけれど、共通して「なんかおもしろそうだから作った」感があって、笑ってしまった。

東京での個展は、今回が初めて。もっと早くに気づいていればなぁ! 「今回、この10年ほどの作品を出し切ったので、次はいつになるかわからない」と言っていたが、「他の人にも見てもらいたいので、まったく同じ作品でもいいから、また東京でやってください」とお願いしておいた。……またやってほしいなぁ。


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