おかんの手紙写真館(1)
部屋のそうじをしていたら、20数年前の学生時代に女の子とか女の子とかその他にも女の子からもらった手紙が何通も出てきた。
それはそれとして、そのなかに母親が実家から食料や衣類を仕送りしてくれた際に同封されていた手紙(というかメモ)もあった。こういうの、捨てられない性格だから部屋が片づかないのだとつくづく思う。
大輔へ
保険証を送ります。
この前「食費が多い」と言ったけど、
薬代を払うことを考えれば、
健康で食欲のあるほうがずっといいので
この言葉取り消します。
体に気をつけて、そして地震も多いので、
素早く避難できる体制(態勢)でいてください。
こちらは特に変わったことはありませんが
このごろおばあちゃんは都合が悪いと
聞こえないふりをする特技を身につけています。
追伸
自販機(ジュース)がUCCからコカ・コーラにかわりました。
売上げ倍増を期待しています。(コーラのお兄さんの話)
おそらく、90年代末に上京して、ひとり暮らしを始めて間もないころのものだろう。健康保険証がなかったので、送ってもらったようだ。
当時は食べ盛りのうえ、ひとり暮らしで加減がわからず、とにかく食べた。昼は学食で日替わりランチ(考えるのが面倒だから)、夜はほとんど自炊で毎日ご飯2合ずつ食べていた。「食費が高い」は、生活費の内訳を電話で伝えたことに対する返答だったと思われる。
息子として母親の性格をかんがみるに、「このごろおばあちゃんは都合が悪いと聞こえないふりをする」は、この手紙で母親がもっとも伝えたかったことだろう。嫁と姑はいつだって難しい。
実際、おばあちゃんは耳が遠かったのだが、聞こえているであろうことも聞こえないふりをして、ふとんなどの訪問販売をうまく断っていた。
追伸の自販機うんぬんは、実家の敷地内に自販機が置いてあって、そこから儲けが出ていたことにまつわるもの。自販機のマシンが、UCCのものからコカ・コーラ社のものに変更されたため、ジュースのラインナップも変わったという話である。コカ・コーラ社のお兄さんが本当にそう言ったのかどうか定かではないが「倍増」は言い過ぎだと思う。