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離乳食に悩むすべての親へ〜10の離乳食法ざっくりまとめ〜

第一子の離乳食に悩まない親、いないと思う。なぜならつい30年前に子育てをしていた親世代の言うことと現在の常識は真反対ぐらいに違うし、ちょっと検索すれば「4ヶ月からのピーナツ経口摂取でアレルギーが激減」とか「早すぎる離乳食は毒」とか「裏ごしはいらない。BLW(手づかみ食べ)させるべき」などなど、さまざまな相反する意見が世の中にはあふれている。

わたしも「なにが正しいんや…」と思って、いろいろ調べたり読んだりしたので、まとめておきたいと思う。なぜまとめようと思ったのかというと、それぞれの離乳食のやり方は検索すれば出てくるけれど、いろいろな考え方をまとめているページは見当たらなかったからだ。

育児に正解はないとよく言われるけれど、それはほんとにそう。正解や不正解で語れるほど単純じゃないと実感している。だから正しい離乳食なんてものは存在しない。でも、単純じゃないからこそ、いろいろな選択肢を持って柔軟に対応できたらいいなと思う。ここが誰かの、そういう提案の場所になれば嬉しい。

※このnoteの内容を元にした実践論、「歯医者が離乳食について本気出して考えてみた(2020.12.26)」公開しました。


1.厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」

https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf

まずは厚労省。日本の離乳食の基本。
離乳食開始時期はおおむね5~6か月。初めはつぶしたおかゆ(米)。慣れてきたら野菜、果物、豆腐、白身魚、卵黄と続く。卵黄は離乳食初期からはじめる。最初は味をつけず、進行に応じて薄味を心掛け、調味料は油脂類も含め少量にする。もぐもぐ期→カミカミ期など咀嚼嚥下の段階に応じて形態を変える。卒乳時期は12~18か月。

2019年3月に12年ぶりに改訂された。卵を早めに摂ることが大きな変更点。2015年に「生後4ヶ月からピーナッツを与えた群のほうが与えなかった群よりピーナッツアレルギーにを発症するリスクが80%減った」というイギリスの研究により、アメリカの離乳食の指針が2017年に「ピーナッツを早めにあげてね」と変更になった。そして2016年に「生後6か月から卵をあげた群のほうがあげなかった群よりアレルギーの発症リスクが80%減った」という日本の研究の追撃によって、2019年に厚労省も指針を改めた。今までは卵などのアレルギー物質は遅く摂取させたほうが良いと言うことになっていたので、考え方が真逆に変わったことになる。

わたしたちの親世代は生後2か月頃からすりおろしたリンゴの果汁など与えていたようだが、今の指針としては離乳食を開始するまでは母乳以外与えない。イオン飲料も与えない。あと改定後には「BF(ベビーフード)をうまく使ってね!」ということになった。ちなみにたまひよの編集長がこのガイドをつくるメンバーの一人なので、たまひよ系の育児雑誌はこの指針にのっとって書かれている。たまひよ何冊か読んでみたけど、たまひよ=わかりやすい厚労省と思って構わない。(BFについては追記①も参照してね)

基本的にはこれが日本の離乳食のベースになっている。米からはじめるという日本という広い範囲での地域性もあり、咀嚼嚥下についての言及もある。ただしこの「モグモグ期」「カミカミ期」や、食材の固さについての見極めは客観的な判断基準がない。柔らかさを表す指標(単位)がそもそもないので仕方ないんだけど、歯茎でつぶせる固さって言われても、「なるほど〜!」とはならない気がしている。
とは言いつつもnヶ月検診の際の保健指導などは全部これに沿って行われるので、とりあえず一度目を通しておいていいと思う。

2.WHO「乳幼児の栄養法」

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/66389/WHO_NHD_00.1_jpn.pdf;jsessionid=602707BC5BC5D9DE09649230E9186CA1?sequence=2

WHOもガイドラインを出している。これによると「離乳食」という言葉は使わない。「補完食」という。赤ちゃんが動くようになり、母乳だけではカロリーや栄養が足りない。それを補完するもの、ということで「補完食」となっている。開始は6か月から。初期から5倍粥(全粥)程度の濃い主食・動物性食材・緑黄色野菜をすりつぶして与える。果物、油脂も食べてね。鉄は特に足りないから鉄材をあげてもいいよ。補完食に並行して母乳は2歳まではあげる。

ゆるい粥はカロリーと栄養価が低いので問題があると書かれおり、さっそく厚生労働省の指針と真っ向から対立する。肉、砂糖、油もカロリーが高いし栄養があるから初めからあげてね!となっていて、これも厚生労働省の指針と異なる。あと咀嚼嚥下に関する言及はない。良い悪いではなく、栄養素とカロリーを重視したものになっている。

このガイドラインは「ちょっと理系な育児(https://rikei-ikuji.com/)」に詳しく書いてあるので、こっちを読むのもオススメです。

3.西原式育児

理論は過激だけど、「2歳まで母乳(ミルク)だけでオッケー派」。

西原先生はダーウィンの進化論を否定し、重力進化学を提唱した歯医者さん。その進化学に沿って育児法を提唱している。理想的には、離乳食は1歳半~2歳を過ぎてから。2歳半までは母乳か乳児用ミルクのみ。2歳未満に与えるタンパク質は毒。従来の与え方では丸飲み・口呼吸になる。手づかみ食べなど一般的な発達段階に応じた離乳の進め方についての言及はない。あくまで重力進化学に則っているので、発達学は考慮されていない。

真面目にこれだけをやろうと思ったらしんどいかもしれないんだけど、これを知ってると、離乳食食べてくれなくても「誰か2歳までは食べなくてもオッケー言うてたしな」って気がラクになるかもしれない。

余談だが、今はなき「家庭保育園」と言う「家庭での早期教育教材セット(フルセット100万超)」の教材の中に親向けの読み物として「西原式育児」の本が組み込まれていたらしい。これはこれでかなり面白いなあと思うんだけど(極端に言うと2歳まで母乳だけを飲ませながらフラッシュカードで右脳開発し論語を毎日聞かせる)、残念ながら家庭保育園が七田式と衝突→裁判の結果、廃業してしまったらしい。幼児教育も離乳食と同じくらい沼であるが、その深淵を垣間見た気がした。

4.全身の発育から口を見る「口育」

2018年から口呼吸や異常嚥下癖などに対して、「口腔機能発達不全症」という病名がつき、保健指導が可能になった。歯科の界隈にもだんだんと発達に関する提言が盛り込まれてきている。
口育によると離乳食の時期は原始反射がなくなってから(5,6ヶ月〜)、食べるものの形態やチェック項目などわかりやすく載っている。離乳は乳児型嚥下の残存のと虫歯のリスクを考慮して1歳半くらいを目安に。

口腔機能発達のことについての本になるので、食べるものの内容が具体的に載ってるわけじゃないんだけど、おもちゃを積極的に舐めさせる、ストロー飲みではなくコップ飲みの推奨などすぐに取り入れられることがたくさん書いてある。しかし当協会がオススメしているWOWカップは、飲む際に口腔内を陰圧にしなければならずストロー飲みの場合と変わらないので、やっぱりコップ飲みスタートのほうが良いと思っている。

5.BLW(Baby Led Weaning)ー手づかみ食べ

これはねえ、良かった。何かに偏らずにこのnoteを書きたかったんだけど、これは良かったと言わざるを得ない。離乳食なんか作らなくて良い。親が健康的なものを食べていて、赤ちゃんが食べたくなった時にそれを手渡して見守るだけで良い。「ペースト離乳食やスプーン食べはいらない派」。

イギリスで10年前に発売された本で、日本では2019年にこの翻訳版が出てから、少しづつBLWは幅をきかせているらしい。まだまだメジャーではないけれど、赤ちゃんの人権を尊重していく姿勢は良いと思うし、家庭内の食事の改善からできる点も良い。

なによりBLW、めちゃめちゃ楽。嫌がるのに食べさせなくて良い。「離乳食作りたくない」が「BLW後の掃除」に勝る人はやってみて損はないと思う。

関連書物「子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?」

元保育士会会長さんが書かれた本。保育士の視点から見て、手づかみ食べを推奨している。手指は突き出た大脳で、手づかみ食べはまさに知的活動なので、積極的にさせてやる。離乳食開始は6ヶ月頃(発達を考慮してはじめる)、野菜だしや白湯をスプーンで食べさせ、その後ペーストに移行。手差しするようになってきたら手づかみ食べしていく。タンパク質は8ヶ月頃から、米は10ヶ頃から。1歳過ぎてお水の入ったコップを両手で持って自分で飲めるようになったら断乳。

実際にこの先生の保育園(さくら・さくらんぼ保育園)でも実践しているらしく、それがそのまま書いてあるので、家庭でも取り入れやすい。わたしも読んだその日からまず食事のポジションを変えた。
清水先生の言われる手づかみ食べっていうのはなんでも手で食べれば良いって言うものではない。6ヶ月ごろから開かれる味覚に対してなにを食べさせていくか、手づかみ食べする食材はなんなのか、月齢に応じて出す皿の枚数まで、認知と言語の発達発育との関連をふまえながら対応していく。この辺がBLWとちょっと違う。

「子どもになにをどれだけ食べさせるのかには気を配っても、自分で食べるようにするにはあまり配慮できていない。バランスがとれた栄養は大事だが、生きるのにはそれだけじゃない。」
「子どもの育ちは手だけじゃない。指だけでもない。体と心と感覚とが全部が連動している。」

これだけ読んでも保育の臨床家って感じがする。離乳食についての話としてこのnoteを書いてるけど、離乳食って食事だけの話じゃないのだと気付かされた。全部が連動して命、それを育むということが保育なのだと思った。

6.モンテッソーリ流

モンテッソーリは「やってみたいと思うことを最大限させてあげられる環境を整え、子どもの自発的活動を促す」という教育方法。

離乳食に関しては子どもにスプーンを持たせることが大事。内容は5か月から季節の果汁や野菜スープ、6か月には裏ごししたもの、7か月にはつぶしたもの、8か月以降は粗くつぶしたもの。なんでも与えて良い。環境を整えて子どもの成長を促す、どちらかと言えば行動発達学的側面が強い流派なので、食の内容に関しては内容が薄い。

7.桶谷式

母乳育児で有名な桶谷式。母乳ということは離乳についての提言ももちろんある。5~6か月で重湯からはじめる。慣れてきたら野菜、白身魚など。硬さや食材については厚労省の指針に似る。離乳は子どもが完全に二本足で立ち、歩行ができる時期を目安にする(はやくても1歳以降)。

と言う感じで「桶谷式 母乳ですくすく育てる本」には書いてあるけれど、全国の桶谷式の相談室に行っている方々のブログを読みあさってみたところ、どうやら各々の相談室で言われることが微妙に違うらしい。公文式みたいに、教室によってちょっと雰囲気違う感じだと思われる。ちなみにネットには良い画像がなかったんだけど、本には離乳食早見表が載ってるので詳しく知りたいひとは本を買ったほうが良い。だいたい厚労省のものと似ている。

8.真弓貞夫「自然流育児」

離乳食は子どもが食べたがった時からはじめる。焦らない。進め方は、生物学的に見て人間から遠い食べ物から始めるべき。最初は植物性の食べ物、それも地上でとれる穀類・野菜・果物などから、海や川で採れる海藻へ。ついで魚介類、それもヒトが自分で採れる物(基本的には小魚や貝類)。その後で鳥類やその卵、そして最終的には少量の肉類ということで、離乳が完了する。食べ物の硬さについても、その生え方に伴ってゆっくりと硬さを増していく。断乳は歯が生えそろい、自分の足でしっかりと歩けるようになった時。親から離れて、自力で食べ物を取りに行けるようになった時。出来るだけその土地のもの、季節のものを食べることが重要(身土不二)で、品数は少なくて良い。

その季節、その土地に根ざしたものを食べると言う考え方は栄養学的な意味でも有利だと思う。品数は多いほうが食材の持つリスク分散のために良いと思っているけれど、一部参考になった。

9.大森一慧「自然派ママの食事と出産・育児」

マクロビ食の第一人者。ベースは穀物菜食で、6か月頃玄米クリームからはじめる。断乳は歩き始め、1歳3か月を目安に行う。

うちではマクロビはやってないんだけど、熱が出たときの「しいたけスープ」や「第一大根湯」などポイントでの食療法は取り入れている。効く気がしていて、息子も熱が出たときは自ら飲みにいくし、飲むと熱がサッと下がって後にひかないことが多い。

10.「子どもの人生は腸で決まる 3歳までにやっておきたい最強の免疫力の育て方」

シカゴ大学外科学教授が書いたマイクロバイオームに基づく子どもの免疫力の高め方についての本。腸内細菌を育て免疫力をあげるためには、6か月から多種多様な野菜と新鮮な果物を食べさせることが重要。泥遊びをたくさんして土を口に入れるのは良いことだ。断乳についての言及はなし。

離乳食というか、土食え(意訳)って言ってるのはこのひとしかいなかったのでオマケとして紹介。土は良いぞ。土を食え。


まとめ

食のことを話そうと思ったら、やっぱり「なにを」「どう食べるか」に行きつく。離乳食も「なにを」「どう食べ(させ)るか」で考えていくと良い。

どの側面から離乳食を語るかによって提言が全く異なる。WHOだったらエネルギー重視で咀嚼嚥下の発達については言及していない。西原式は重力進化学の観点に基づいているけれども、子どもの味覚や口腔機能、手指感覚などの発達発育については考慮されていない。また、西原式だと2歳までは母乳かミルクということになっているけれど、発達発育の視点で行くと離乳の時期は子どもが自立する(=一人でしっかり歩けるようになる)時期になると思われる。

そのすべてに理由があって、そのどれもが間違いではないと思う。最初にも書いたけど、良い悪いとか正解不正解の話じゃない。いろんな選択肢があるから、一つがだめでも絶望しなくていいし、「じゃあ次はこっちやってみよ〜」みたいなノリで良いと思う。育児、ノリが大事。思い詰める前にノリで乗り切ろうイェイイェイ。わたしの周りにも子どもが離乳食を全然食べないことで悩むママ友がいるけど、食材(なにを食べるか)で行き詰まったら手づかみ食べとか(どう食べるか)でアプローチしてもいいし、開き直って2歳までは母乳かミルクを飲ませながら、食に興味を持つタイミングをゆっくり見計らっていくのも良い。

すべての理論と提言は命の一つの側面からの話でしかない。まるまる命ひとつ抱えてるのは親であるわたしたち。わたしたちがまるっとホリスティックに赤ちゃんを見て進めて行けばいいのだ。


ちなみにわたしはいま息子(1歳5ヶ月)の離乳食について、

①土地と季節を考慮して
②いろんな食材を少しずつ
③咀嚼回数を増やせる形態で
④親が食べてるものと同じものを
⑤手づかみ食べさせる

というところにところに落ち着いている。

ここまで長ったらしいnoteを読めるひとは子どもへの愛で満ちていると思う。悩むことも愛。調べることも愛。実践することも愛。でも「離乳食はnヶ月から」「量はこのくらい」「成長曲線に入らないとダメ」って決めつけてしまうと、その愛がわたしたちの首を絞めていくことがある。愛が正しく子どもに向いて、わたしたちと子どもの両方がしあわせな毎日を送れますように。

食べることは生きること。食事が楽しければ人生は楽しい。人生を楽しむためには余裕が必要だ。知識と選択肢は余裕につながる。このnoteが誰かの余裕になってくれたら嬉しい。


追記①ベビーフード(BF)について

BFは総じて柔らかい。実際買ってみて、だいたいどのメーカーのものでも、12か月から~ってなっているものが、厚労省の基準で言う9か月~の「歯茎でつぶせる固さ」くらいだと思う。
BFとたまひよに載ってる食材の固さの目安の差異に「?」ってなるひと多いのでは?12ヶ月からの表記の割にドロドロでは?

発達の遅い子に合わせて記載しないといけないからこうなっているんだろうけど、これだと咀嚼回数は減る。歯医者さんなのでこれはハッキリ言うが、咀嚼回数は少ないよりは多いほうがいい。なので記載されてる月齢を大まかな基準にして、その子の発達に合わせて固さや量を選んでいけると良いかなあと思う。

もしくは、ベビーフードをベースに、少し固めのの食材を足して行くのも良い。しらすの中華丼だったら、その中に固めに茹でたにんじんや白菜やタケノコを入れたり。それだけで随分変わってくる。

追記②アレルギーについて

食物の三大アレルギーは卵、牛乳、小麦。五大アレルギーはこれに米と大豆が加わる。毎日大量に同じ食品を摂ることでアレルギーのリスクは高まるらしい。なので、いろいろな食品を少しづつ食べることがアレルギー対策としては有効であると思っている。

2019年に厚労省が研究結果をもとにガイドの改定を行ったけど、30年前の常識がいまの非常識に落ち着いているように、必ずしも最新が最善なわけではない。なにを選ぶにせよ、子どもの様子を見ながら無理のないように進めるのが今できることかなあと思う。

※このnoteの内容を元にした実践論、「歯医者が離乳食について本気出して考えてみた(2020.12.26)」公開しました。

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