田端駅。だるまや食堂
ラーメン400円という品書きが目に入る。安い。次いでサッポロラーメン(味噌・塩・醤油)500円という品書き。普通のラーメンとサッポロラーメン醤油の違いは何だろう。むしろこのラインナップで並べられるとサッポロ一番の袋麺のシリーズをまさかそのまま出す感じ?居酒屋だったらありだけど、昼間の食堂でまさかそれやるか?と思いながら店の前を右往左往。覚悟決めて入る。カウンターに若いサラリーマンらしき客ひとり。スマホをいじりながらかつ丼のようなものをかっこんでいる。カウンターの奥におばちゃん。実にいい雰囲気。おばちゃんが馴染んでいる。野菜炒めとかモツ炒めとか炒めものもある。どれも350円とか400円くらいで安い。左手をみるとライス200円の文字が目に入る。経験上なんでもかんでも定食にしないでこうやってバラバラで注文できる店の打率は高い。なぜなら夜になったときにそいつらをつまみにして呑むという選択肢が増えるから。優しい店だなと思った。おばちゃんと目があった。注文まだだった。反射的にワンタンメンを頼む。500円。ワンタンってお店の個性がいろいろあって好き。なんなら肉が入ってなくて文字通りのワンタンが一反木綿みたいにフワフワしてるやつも好き。もう一組カップルが入ってきてにわかに忙しくなる。おもむろにおばちゃんが奥に声をかけた。もう一人おばちゃんが出てきた。おばちゃんがおばちゃんを呼ぶ。ついにこの店が本気を出してきたなと思った。大概こういうときって一人が厨房で一人が接客だったりするんだけどこの店は二人とも鍋を振る。サッカーでいうところのツートップでどちらがパスも出せるしゴールも決められる。あとから出てきたパンチパーマ気味のおばちゃんの作ってくれたワンタンメンは何もかもがちょうどよく。控えめで上品でなんの主張もしてこない。記憶に残らない普通の味。最高だな。お会計をしようと顔をあげるとカウンターにバナナが一本おいてある。もし食べきれんのなら持って帰ってあとで食べたらいいとおばちゃんが言った。勘定をして店を出る。記憶に残らないと言ったのは嘘だった。バナナ握りしめて電車にのる。いつもの山手線の風景が何だか違って見えた気がした。