サムライ 第22話
【前回の話】
第21話https://note.com/teepei/n/n2c61f0eb0c41
響く痛みと葛藤しながら、森井はベッドから出ようともがき出す。
「おいどうした」
と、俺が尋ねるも、森井は怪我の負担もあってか動転した気持ちを中々取り戻せない。
俺と山辺が抑え込もうと動き出し、突然の反応に呆気に取られていた警官もすぐそれに加わる。
「落ち着けって、どうしたんだよ」
「徳本さんだよ」
と叫びながら、痛ぇ、と身悶える。
「徳本さん、やるつもりだ」
痛ぇ、と、叫んだり身悶えたりと忙しい。
「やるつもりって」
「俺の復讐」
背中にヒヤリと走るものを感じる。
「徳本さん、帰る間際に、聞いてきたんだ、警察から頼まれたからって。だから、俺もいつもの場所を伝えちまった」
痛ぇんだよ糞が、と痛みにも悪態をつき始め、さらに身悶える。
「お前は動けないだろ」
業を煮やした俺が、つい叫んでしまう。
森井はそれで、ようやく自分の容態に気付いたと言わんばかりに落ち着きを見せ始める。
痛みに悶えながら切れた息を整え、森井は続けた。
「帰り際、徳本さん、怒ってるように見えた。せ、背中見ただけだったけど、俺達に、謝れって言った時の、あの徳本さんみたいだって、そう感じたのに」
決定的だ、と思った。
あの気迫。
あれはこけおどしじゃない。
森井は呼吸が落ち着くと、今度は徐々に肩を揺らし始める。
泣いていた。
ただし今度は救いを求める涙だ。それから必死に俺の腕を掴む。
「徳本さんを止めてくれ」
絞り出すように森井は言う。
相手は十人、武器も持っている。あの徳本さんの気迫が、どういう修羅場を潜り抜けて練られてきたものかは分らない。
どちらにしろ、徳本さんもサムライ狩り達も無事では済まないだろう。
森井は恐れている。
徳本さんを失うことを。
「あの人を、失ってはだめだ」
掴んだ腕に、力が込められる。
「あの人こそ、サムライなんだ」
***
拘置所の面会室で、サムライ財団代表である草間克秀は、その人物が来るのを待っていた。
しばらくして扉が開く。椅子に座ったその様子は、重厚な戒めを漂わせている。
「久しぶりだな、徳さん」
徳本茂は、その挨拶に軽く頷く。
「しかしまさか、こんなところで再会とはね」
面会室をひと通り見回し、再び徳本へ視線を戻す。
「でもまあ安心したぜ、俺ぁてっきり殺しちまったかと思ってたからよ」
徳本はあの日、サムライ狩りを蹴散らし、頭を捕獲した。
その頭の導きで、彼らを支配する上位組織の事務所まで出向き、そこにいた連中のすべてに重傷を負わせた。
そして、頭には二度とサムライ狩りをしないことを誓わせ、その足で自首したのだった。
(続く)