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ニューヨークタイムズが選ぶ21世紀のベスト100冊(Part 4)

21世紀もちょうど4分の1が過ぎた時点でニューヨークタイムズが文学界の著名人に行ったアンケート調査結果をまとめた21世紀のベスト100冊。その中から自分が読んだことある16冊について、どうでも良い話も少し織り交ぜながらコメントしてみた。

9位 Kazuro IshiguroのNever Let Me Go

この作家の作品の中ではRemains of the Dayが一番好きだ。次いでこの作品。一番最近発表されたKlara and the Sunはあまり入り込めなかった。よくよく考えてみると、この作家の作品を好きなのかどうかわからなくなることがある。Remains of the Dayがとても好きだったから新作が出る度にそれを超える体験を期待して読み続けているのかもしれない。

自分が俗物である事を認めるのは不本意だが、ノーベル文学賞を受賞したから読んでいるというのも少しはあるかもしれない。私はブッカー賞受賞作とかピュリッツァー賞受賞作とかに弱いのだ。

臓器を提供するためだけに生を授かった者たちを題材にしたNever Let Me Go を読んでいて私はとても心細い気持ちになり肌寒さを感じた。そう考えてみるとKazuo Ishiguroの作品はRemains of the Dayを含め温度の低さを感じるものがほとんどだ。極暑が厳しい中読むのに適しているかもしれない。結局彼の次回作も読むことになるだろう。

8位 W.G.SebaldのAusterlitz

これはとても美しい小説だった。小説というものが芸術であるという事を思い出させてくれる。ナチス占領下のユダヤ人迫害の歴史に深く関連した話でありながら、その印象はあまり強く残らなかった。あらすじらしいあらすじもないこの作品。現在と過去、生と死、真実と虚構、それらの境界がとても儚いという事が読後強く印象に残る。

6位 Robert Bolañoの2666

この本はかなりボリュームがあり、最後のページを読み終えた時の達成感がすごい。この本の最初にA Note from the Author's Heirs(著者の相続人達からの注記)とある。Robert Bolañoはチリ人の作家で2003年に50歳の若さで亡くなっている。この作品は彼の死後に発表された。この相続人達からの注記にはこの様な事が書かれている:自分の死期が近づいていることを承知していたBolañoは、残された自分の子孫が経済的に困ることないように5部構成のこの小説を5冊に分けて年に一冊ずつ出版するよう、出版社と交渉する上での提示金額まで含め、細かい指示を遺志として残した。彼の死後、この作品の文学的価値を詳細に吟味して話し合った結果、遺言執行人及び相続人達はBolañoの遺志に反し、Bolaño本人が病に倒れなければそうしたであろうように、この作品を一冊の本として出版する事に踏み切った。

つまり、5冊の独立した本として十分成立し得る構成の小説なのだが、一冊の本として通して読むことに意味がある本なのだ。一応はミステリー/スリラーというジャンルに分類はされているが、8位のAusterlitz同様、明確な起承転結が提示されている訳でもなく、受け手である読者自身の解釈に委ねられている部分が大きい。

1位 Elena FerranteのMy Brilliant Friend

この本はイタリアを舞台に2人の女性の友情と成長の過程を追ったNeapolitan Novels或いはNeapolitan Quartetと称された4冊の小説シリーズの一作目。赤毛のアンシリーズに例えるなら「赤毛のアン」にあたる作品。このシリーズの内、他2冊も今回のベスト100冊の中に含まれている。親友からこの本を強く勧められ読んでみて、正直私はあまり同シリーズの次の作品を読みたいという気持ちにはならなかった。もっとハマる事を期待して読み始めたにも関わらず。

この本は決して読みづらい訳ではない。むしろ大変読みやすい。起承転結もはっきりしていて先をどんどん読みたくなるようなプロット展開だ。人物や状況の設定もしっかりしている。世界40ヵ国、1,000万部以上売れているこの本を自分がなぜあまり面白いと思わなかったのかはよくわからない。天邪鬼の私にとって前評判が高過ぎたのかもしれない。


ありがたいことに、世界にはまだ読んだことないたくさんの本が私を待ち受けている。既読のお気に入りの本との再会も楽しみだ。本との関係も人間関係同様、気が合う場合もあればそうでない場合もある。

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