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本好きにはたまらない映画

「丘の上の本屋さん」というイタリア映画を観た。

本も本屋も大好きな私がこのタイトルを目にして観ずにいられるわけがない。

リベロという初老の男性が営む古本屋はイタリアの美しい田舎町にある。タイトルの通り丘の上の眺めの良い広場に面している。

映画はただ淡々とその古本屋の主人リベロと店に出入りする人々とのやりとりを追って行く。

映画の軸になるストーリーは店にやって来た移民の少年エシエンとリベロとの交流。本を買うお金のない少年にリベロは無料で本を貸すようになる。少年は最初は自分で選んだ漫画本を借りていくが、段々とリベロが見繕った良書へと導かれていく。「ピノキオの冒険」「イソップ童話」「星の王子さま」「白鯨」...
一冊読み終えて別のものと交換するため現れた少年と店主は毎回読み終えたばかりの本について語り合う。

合間に様々な客がリベロの店を訪れる。ヒトラー著「我が闘争」の初版本を探しているネオナチ男、過激な性的嗜好の研究のための参考文献を探す全身黒皮に身を包んだ女などなど。相手がどんな人物であれリベロは真摯に対応し、在庫にある本の中から適当な本を提案する。

ある客とリベロがジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」について語り合うシーンが印象に残った。その客は何度もこの本の読破にチャレンジしたが挫折したと嘆き、リベロも病院に入院した際この一冊だけを持ち込み食事と治療の時間以外は全て読書にあてたが本の結末は未だ知らないんだと呼応した。名作といわれている本について同じような思いや経験を持つ本好きも多いだろう。

この映画の難点を一つ挙げるとしたら、若干説教くさいところ。

UNICEFとの共同制作という大人の事情があるから仕方がなかったのだろうが、リベロがエシエンに最後に託す本が「世界人権宣言」であったり、エシエンが有色人種の移民であったりするところが変にポリティカリー・コレクトな気がして違和感を覚えた。

この映画のイタリア語の原題は "Il Diritto alla Felicita"
(幸せへの権利)

邦題を原題とは全く別のものにした配給会社に脱帽。
原題の直訳がそのまま邦題になっていたら私はこの作品とは出会えなかっただろうから。

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