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夫のひらめき

以前にも夫のネーミングの才能(?)について書いたが、

彼にはほんの思いつきで人にあだ名をつける癖がある。いずれもシンプルで覚えやすくユーモアを感じるものばかりだ。

親戚のメガネ屋店主はGoggles(ゴーグル)で、同じく親戚の美容師はScissors(ハサミ)と、出会って間もなく命名した。

私のクリエイター名Tokolosiも夫から与えられたニックネーム。彼が生まれ育った南アフリカの民話に存在する妖怪みたいなもの。ググってみると恐ろしい風貌に描かれている。このTokolosiは身長が低いという特徴があり、実際にこの化け物の存在を信じる人々(どれだけいるのかいないのか…)の間では睡眠中に襲われないようベッドを数段高くする風習があるそうだ。

さて、夫はこのところ自分が開発した新商品のネーミングに悩んでいる。開発段階ではずっと"The Code"と呼んでいたのだが、いざ商品化となると別の呼びやすい名前にした方がいいという事になった。

日本で暮らし始めて一年、未だ日本という国との蜜月が続く彼は日本語の名前がいいのではと考え、"Kitto(きっと!)"がいいと言い出したが、ビジネスパートナーたちからNGが出た。理由としては英語ネイティブスピーカーはKittoをKiddoと発音する可能性が高く、kiddoは目下の者や子供を呼ぶ時に使う、相手を見下した時に使うイメージだから。

Kodo(鼓動)という名前も候補にあがったが、これは日本的過ぎると投資家からNOが出た。

夫が求めている名前は呼びやすく親しみやすい名前。以前夫が開発した商品はSAMとTOMI。いずれも英語圏ではよくある人の名前だ。しかも男女いずれにも使える。その流れでいくと人の名前がいいかもしれないという事で、
「Dollyはどうだ?」と夫は言い出した。

私はDollyという名前が好きではない。なんだか過剰に甘ったるく、鬱陶しい女性っぽさを彷彿させ、野暮ったいと感じるから。そのまま夫に私の感想を伝えた。

「野暮ったくていいじゃないか。何もクールな名前をつける必要はない。寧ろ商品の内容と名前が少しミスマッチなのが面白いかもしれない。」と夫はどんどんDollyという名前が気に入っていく様子。

私は自分の意見が彼の確信を強化させる結果となったのに一瞬憮然とはしたが、すぐに受け流した。そもそも私はモノを売るための戦略を立てる能力が欠けている。私があまり良くないと思う名前の方が大当たりするかもしれない。

dollyは空港などでよく見かけるキャスター付きの手押し車或いはテレビ局などで見かける移動式撮影機台を指す名詞でもあり、実用的なイメージもある。

哺乳類初の体細胞クローン、羊のDollyも先駆的な存在というイメージを名前に与えている。

少し古いが、かつて"Hello Dolly"というミュージカルもあった。Hello Dollyといういたってシンプルだがキャッチーなフレーズはそのまま商品のマーケティングに使えそうだ。商標の問題とか諸々ありそうだが…

昨夜はビールに酔って「この名前しかない!」と言い切っていた夫。一晩寝かせてもDollyは今日も元気にメェメェと鳴いているだろうか。

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