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ショーンからのメール
「こんにちは
お元気でしたか?今年の春、空港でタイ行きの便に搭乗する前に知り合ったショーンです。あなたのアドバイスに従い、2度目の日本にやって来ました。今回も計り知れないほどこの地に癒されています。戻ってくることを推奨して下さったことに感謝します。
熟考の末、日本に移住することが私にとって最善の選択であるという結論に達しました。Vancouverはあまりにも不健全な場所で、前回お会いした時に既に悪かった状況は更に悪化しました。街として最早取り返しのつかない地点に近づいているように思われ、そんな状況下で出口を塞がれてしまうことを恐れます。可能な限り早急にこの国でビザや職を得る手続きをしたいと思います。Expatとしてのあなたの経験をお聞かせください。
もちろん、あなたにはそんな事をする義務もないですし、我々の今までのやりとりは既に私にとって充分に有意義なものです。
明日は沖縄に出発し、そしてその後は東京に向かいます。あなたの返事が届いていないかインボックスの確認は欠かさないようにします。いつもながら、お時間ありがとうございました。
ショーン」
昨夜、こんなメールが夫のインボックスに入って来た。いささか大袈裟な表現が目立つ文面だが、日本に移住したいという気持ちは真剣なのだろう。
30年前に自分がワーホリという制度を介して移住を試みたVancouverがそんな「取り返しのつかない」ほど最悪な状況にまで到達しているのだろうか?北米の中では比較的治安も良く清潔で暮らしやすいイメージの都市Vancouver。世界の都市住みやすさランキングとかではいつも結構上位に入っている。そういえば、この前本屋で光浦靖子が出した『ようやくカナダに行きまして』という本を手に取り、しばし光浦女史に嫉妬すらした事を思い出した。ショーンはただ隣の芝生が青く見えているだけではないのか?
しかし、夫はこのメールを読んでさもあらんといった反応だ。
「日本は、当の日本人が思っているよりもずっと、素晴らしい国だ。」
とお得意の日本称賛スピーチが始まった。
運転する時のイライラを除けば(彼は日本人の一般ドライバーにありがちな過剰な用心深さと譲り合い精神が引き起こす不要な渋滞に毎日腹を立てている)この国に対して何の不満もないと豪語する。
確かに、こんなに安全で清潔で人々が概ね親切な国は世界中どこを探してもないかもしれない。おまけに今は為替の影響で外貨を持って日本に来れば何もかも安く感じる。
果たしてショーンは希望通り移住できるのだろうか。夫が日本で暮らせるのは配偶者である私が日本人だからだ(エッヘン!)。それ以外の方法で在留ビザを取得するのはそう簡単ではないだろう。
「適当な日本人女性と結婚しろ。なんなら妻には独身の友達がたくさんいるから紹介するぞ。」
なんて変なアドバイスしないよう夫を見張らねば。