Salesforce 活用で営業としてのキャリアアップを目指すための学習方法(営業ユーザ向け)
会社で導入しているSalesforce をもっと便利に使えるようになりたい!Salesforce のことをもっと理解してマネジメントの成果を上げたい!Salesforce の開発を覚えてスキルアップ・キャリアアップしたい!
でも、どう勉強したらいいのかわからない・・・。
この記事は、プログラミングやシステム開発の経験があまりなく、Excel やGoogle スプレッドシートなどの活用も自信があるとは言えない方に向けてSalesforce の活用力を高める学習方法を解説しています。
Salesforce を自分の手で改善したい営業部門
この記事を書いているのは2022年の2月。リモートでの商談や営業管理の機会が以前より増えました。多くの企業でリモートでの業務管理・業務支援のためのシステムの導入がされ、Salesforce を導入している企業が増えたように感じています(主観)。
これまで、私はいくつかの企業にSalesforce の導入や活用の支援のコンサルティングを行ってきたのですが、支援先の窓口となる担当の人はIT部門の方であるケースが多かったです。IT部門の方が現場の要望をとりまとめ、IT部門で用意したSalesforce などのシステムを現場が使用する…。
これまでのシステム活用の現場では、そのシステムの商品名や、機能をどう改修できるか、といったことに興味を持っている人は極めて稀であったと私は思います。
その極めて稀な、現場のSalesforce や仕組みづくりに興味のある方が、Salesforce の改善をする部門に異動となるケースに何度も遭遇しました。
そのような方に向けてアドバイスした経験から、
こちらの記事を2020年に執筆してたくさん「スキ」をいただきました。
(今でも「スキ」してくれたらうれしいので、読んでみてよかったらぜひ)
最近でもSalesforce 活用支援のコンサルティングをしているのですが、現場の方からSalesforce のスキルアップがしたいというお問い合わせをいただくことが増えています。
リモートで瞬時にチームの営業活動状況を可視化したい
リモートの活動でもノウハウ共有ができるシステムが作りたい
Salesforce を使って自分の手で管理業務を効率化して部下を支えたい
Salesforce を使えることで昇進や転職などのチャンスをつかみたい
このように名指しで
「Salesforce」の活用力が高いこと
「Salesforce」を使って事業成長させた経験があること
を実現したい営業部門の方が増えているように感じます。
営業部門でSaleforce 活用力が高いと最強の人材になれる
営業部門が高い生産性で、高い収益を達成するためにSalesforce は役に立つポテンシャルを持っています。こんな曖昧な表現をしているのは、Salesforce を導入しさえすれば、必ず営業部門の成果が向上するわけではないからです。かつて「絶対に失敗するSalesforce 導入プロジェクト」と題してお話をしたことがあります。
Salesforce に限らず、システム導入が成功しない要因として、
現場がそのシステムを使いたいわけではない
現場の要求通りの非効率なシステムを、現場ではない部門が作ってしまう
作ったシステムの使用を促進したり定着する人がいない
だと私は考えています。そのため、
現場が効率的なシステムを作るためにシステムに寄り添う
開発者が現場の真の実現したいことを達成できるように現場に寄り添う
これらが行われていないと、多くのシステム導入は失敗に終わります。
営業部門の中の方自身が、自分の業務をもっとよくしたい、Salesforce を使えるようになりたいと思うことは、
現場のSalesforce 活用の意欲が高いこと
真に実現したいことを知っている現場でSalesforce の改修ができること
Salesforce の使用の促進や定着支援を現場で行えること
というSalesforce 活用の成功を導ける要因を備えられるようになるのです。
現場の業務を熟知し、そしてSalesforce の活用力まで手に入れられたなら、営業活動を行っている組織において最強の一角と称される人材にきっとなれることでしょう(そういう人のことをAwesome Admin って呼ぶらしいですよ)。
ぜひ、Saleforce を学びたいと思ったその灯を絶やさず「おぉ寒っ!」な感じにならないようにこの記事の学習方法を参考にしていただけたらと思います。
営業部門のメンバーがSalesforce を学ぶには
以前の記事で、営業部門から異動して突然自社のSalesforce の導入や改善をすることになった人向けの学習方法を解説しました。Salesforce にどっぷりと向き合う時間のある方、Salesforce を改修することが本業となった方には引き続き学習の参考にしていただきたいと思っています。
さて、営業部門に所属しながら、自分の意志でSalesforce 活用力を高めたい!という方はどのように学習したらよいでしょうか?
誰かに構築されたSalesforce への入力やレポート・ダッシュボードの表示はしたことがある、もっと便利に使いたい!という方への学習方法をアドバイスしたいと思います。
本質を見る目を養うこと
今、自分の組織で使っているSalesforce をいますぐにもっと便利にしたい!そのように思って焦っていませんか?
この商談画面に管理項目をあと20個追加したら素晴らしいデータが取れる!なんて思っていませんか?
項目の追加やレポートの作成などのカスタマイズの知識・手順を覚えただけでは、現在カオスなSalesforce での管理を改善するどころか、さらに深い混沌へと自分自身が導くことになりかねません。
Salesforce をもっと活用したいならば、Salesforce を活用するための「本質を見る目」を養わねばなりません。今使っている自社のSalesforce は、自分や営業部門ではない誰かが作ったものですよね。
今、もし使い勝手が悪いとしたら、Salesforce でできることを知らない状態で誰かが要望した機能を、現場のことはよくわからないけどすべてをかなえてあげよう!と思って作られたSalesforce である可能性が高いです。
そもそもSaleforce ってなにができるんだっけ?
そもそもデータベースの管理ってどうしたらいいんだっけ?
という本質を見る目を備えている必要があります。
という言葉があるように、あるべき姿を見られる目、本質を考察できる観点がないことには、ツールの使い方を覚えただけでは、今の延長戦上のちょっとだけマシなものか、あるいはさらなる混沌を作り出すことしかできないのです。
Salesforce の標準機能を触ってみよう
いま自分たちの組織で使っているSalesforce は、魔改造されたものである可能性が高いと思ってください。Salesforce を導入した最初の状態、すなわちSalesforce さんが長年のノウハウを注ぎ込んで実装した究極にシンプルで汎用性のある項目だけの状態とはどんなものかを理解してみましょう。
この標準機能(標準オブジェクト・標準項目)だけでもすべての項目を余すことなく使い倒していたら、営業管理や顧客管理は大成功するはずです。
「自分たちは特別な業務をしている」と思い込んで、謎のカスタム項目を100個作っている、という状態の自社のSalesforce をどうこうしようと考える前に、本来のSalesforce の使い方を学んでみましょう。
無料の開発環境と学習環境のアカウントを作ろう
Salesforce のまっさらな環境での操作をするため、無料の開発環境(Developer Edition)のサインアップをしましょう。
※サインアップ:アカウント作成
サインイン:作成済みアカウントでログインする的な
Salesforce の開発用(Traillhead 学習用)無償アカウントはこちらから作成できます。
※Salesforce さん公式サイト
Developer Edition のアカウントを作成する際は、個人のメールアドレスやIDでアカウントを作成しましょう。もし会社から付与されたメールアドレスで作成した場合は、会社がSalesforce を解約してしまったので自分に割り当てられていたSalesforce アカウントが無効になってしまった、自分が転職したので前の会社のSalesforce アカウントを使用することはできなくなった、などの場合にDeveloper Edition や後述するTrailhead にアクセスできなくなってしまう可能性があります。個人のメールアドレスで、Salesforce の開発者用アカウントを作成したり、個人のメールアドレスやSNSからTrailhead のアカウントを作成しましょう。
※個人のメールアドレスを持っていない方は、こちらにGmailのアカウントを作成する手順を動画で解説しているのでぜひに
Developer Edition のアカウント作成ができてその環境にログインできたら、ログインしたままSalesforce の学習サイト「Trailhead」のアカウントも作成してしまいましょう。
Trailhead のトップ画面で「サインアップ」をクリックして、新しいアカウントを作成しましょう。
Trailhead とは・・・
Trailhead は、Salesforce 公式の学習サイトで、Salesforce アカウントを持っている人なら無料で使用することができます。千何百ものSalesforce にまつわる知識、スキルの教材がありますし、ビジネスマナー、開発の作法、人間としてのあり方、睡眠の重要性、などを学ぶことのできる素晴らしいサイトです。
Salesforce 力を磨いて自社や転職市場で評価を獲得したいという高い志があるなら、このTrailhead でたくさん学習して「Ranger」という学習者の称号(学習完了モジュール100以上 / 獲得スコア50000以上)を獲得してみましょう。
Developer Edition で取引先 / 取引先責任者 / 商談 / 活動を触りまくる
Developer Edition でSalesforce 環境を作成し、ログインできたら、Salesforce の中でもとてもよく使われる標準オブジェクトである「取引先」「取引先責任者」「商談」「活動」のデータを作成しまくりましょう。この時、普段の営業活動や商談の時にどのように情報を得ているかをイメージすると学習効果は高まるでしょう。各画面でツッコミどころを探りながら入力をしてみましょう。なるべくすべての項目を入力するようにしましょう。
新しい取引先の方と会う
取引先を新規作成する
(ん?取引先名にフリガナあったほうがいいかも)
(取引先の住所をエリアで区分できたら便利かも)
(業種の選択リスト、英語だし、多すぎない?)取引先を保存する
取引先の中に取引先責任者を新規作成する
(取引先責任者にもフリガナがあったほうがいいかも)
(性別を入力できると便利かも)同じ取引先の中に取引先責任者を数人登録する
取引先の中に商談を新規作成する
商談を保存する
商談の中に「取引先責任者の役割」を新規作成する
商談の中に活動を作成する
(活動の件名、英語だな・・・)
入力項目が何も追加されていない状態のSaleforce でも、すべての項目を入力するのはめんどくさいかもしれません。これら最低限の入力でもめんどくさいのに、現在の自社のSaleforce はどれだけたくさんの項目があり、そして入力されていないのでしょう?
Salesforce の最初の状態が「これだけでだいたいなんとかなる」として用意されている便利な機能です。まずは最初からある標準項目を知り、それを徹底的に活用することからが学習のスタートです。
表計算力を磨け
Salesforce の初期の状態のシンプルな画面構成を体験したところで、画面へのツッコミどころもたくさん見つかりましたので、では新しい項目を作っていこうか!というわけにはいきません。そのツッコミの観点がイケてないものだとしたら、イケてないものを最速で作ることになってしまうのです。
例えば、ある取引先の2021年1月から12月までの毎月の売上を管理したい!
と思い立ったとします。
取引先オブジェクトの中に
2021年1月売上(カスタム通貨項目)
2021年2月売上(カスタム通貨項目)
2021年3月売上(カスタム通貨項目)
・
・
・
2021年11月売上(カスタム通貨項目)
2021年12月売上(カスタム通貨項目)
を最速で実装しよう!と、思うかもしれません
このような売上管理表は「ピボットテーブル」という機能を使うことで瞬時に出力できます。
取引先オブジェクトの子レコードである商談に、
・取引先名 ・完了予定日 ・金額
が12ヶ月分のデータとして12件作成されていたら、
ピボットテーブルのようにSalesforce のレポート機能での出力ができます。
Excel やGoogle スプレッドシートで複数のシートにまたがる管理シートを作れて、ピボットテーブルとVLOOKUPと選択リストを作れるようになると、データベース構築の観点の基礎ができます。これらの表計算の基礎を学んでからSalesforce ではどうやろうか、を考えてみましょう。
Excel やGoogle スプレッドシートの操作を体系的に学んだことがない人は、
いい本を用意していますのでぜひ読んでみてください。
※最新の年度のがおすすめ
データベースの正規化を学ぼう
表計算ソフトの基礎を身につけられたら、データベースをどう構築するのがよいかを学びます。「データベースの正規化」とは、複数の関連しあうデータベースをどのように設計するか、というものです(厳密に知りたい方はググって!)
Salesforce が用意している標準オブジェクトも正規化されたデータベース(RDB:Relational Data Baseともいう)です。Salesforce の標準オブジェクトがどのような構造になっているのか、自分の組織で新しく作りたいオブジェクトや入力項目は、どのように設計したらよいかという観点を身につけましょう。
Salesforce では
取引先
└ 取引先責任者
└ 活動
└ 商談
└ 活動
※活動だけすべてのオブジェクトの子になりうる特殊なオブジェクト
のように主従関係や参照関係が定義されています。
このようなデータベースの構造を理解できるようになるには、
図書館の本の貸出記録
学校の部活動の名簿
大学での自分の授業の出席記録
などのデータベースを表計算ソフトで、複数のシートにまたがって作れるようになっているとバッチリです。
ここから、Saleforce のカスタマイズがはじまる
ここまでの勉強をしているころには、すっかりSaleforce への禁断症状が起こっています。Salesforce の活用力を高めたいのに、Saleforce 触れてない・・・。Salesforce 触りたい触りたい・・・。
ここから、もう一度、Developer Edition のSalesforce の標準機能の不便を探っていきましょう。この不便を解消するために「カスタマイズ」というマウス操作を基本とした開発を行います。
カスタマイズは、
入力項目の新規作成
ページレイアウトの変更
リストビューの作成・編集
カスタムオブジェクトを作成
参照関係項目 主従関係項目 でリレーションを定義
くらいができるようになっていると、入力画面を便利にするスキルと観点が身についています。Salesforce のカスタマイズを体系的に学びましょう。
ここで、先ほど作成したTrailhead での学習が役に立ちます。Salesforce を活用するための観点が身についたら、あとはスキルを学びましょう。
開発者初級というこちらのモジュールは、
17 時間 50 分 で学習完了するそうです!
このモジュールをすべてやる前は、システム活用の観点は身についている状態ですが、実際に手を動かすことができない状態です。
これを、
「眼高手低」
視野だけが高くて手を動かしていない、スキルは低い状態
というそうです。
目線が低くて表面上の実装スキルがあるだけでも良くないですし、
知識だけがあって実装スキルが伴わないのもよくありません。
このnote を読み終えて、開発者初級のモジュールを終える頃には、
Salesforce の標準的な開発手法、システム活用のためのそもそもの考え方 がきっと身についています。
自分の組織のSalesforce を見てみるぞ
Salesforce ってそもそもどうやって使ったらいいんだ?
Salesforce を便利にする実装ってどうやるんだ?
ということがわかったところで、ようやく自分の組織のSalesforce についてみる時がやってきます。
自分たちはSalesforce をシンプルに使いこなしていただろうか?
主従関係や参照関係を活用して、入力項目を最少となるように設計できているだろうか?
などの、今ある無駄を削ぎ落す方面での改善案がたくさん出ると思います。
今実現できていないことは、管理項目が足りないから、もっと入力させないとダメだという観点しかなかった学習開始前と違い、本質的な改善のアプローチができるようになっています。
本質的に考えて、
この構造ではうまくいかない、
この入力項目を追加するべきだ、
などの改善を行いましょう。
Salesforce の改善ができたら、自分たちのSalesforce が今度こそ便利に使われるように現場のメンバーを支援してあげましょう。
現場のメンバーの入力定着や、Salesforce への入力のモチベーション向上は、Salesforceを使って見えるかできる主要な営業指標の改善を導くことができます。
営業指標の改善、チームとしてのSaleforce 活用を推進したという実績とスキルがあれば、営業部門の方は昇進や転職などのたくさんのチャンスをえられるようになります。
私も営業部門に転職しよっかな。。。
やみくもにSalesforce の使い方だけを学ぶのではなく、Salesforce だけでなく、さまざまなシステムを活用して組織を成功に導ける人材に成長していきましょう!
まとめ
Developer Edition とTrailhead を個人アカウントで作成する
Salesforce の最もシンプルな使い方を体験する
表計算ソフトの基礎スキルを身につける
データベースの正規化を理解する
Saleforce のカスタマイズを学ぶ
開発者基礎(約18時間)のTrailhead のモジュールを学ぶ(土日でやろう、ワンチャン1日徹夜でイケる)
自社のSalesforce 環境の本質的な改善
営業部門みんなで活用できるように推進
昇進!
最後にひとこと
スキルアップとかキャリアアップをしたいと本気で望むなら、Trailhead を18時間学ぶくらい、どうってことないよね?だいじょうぶ。こわくない。