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モロカイ島への聖なる旅 2


太陽が遠い西の水平線に沈んだ頃

サーフボードを片手にオアフ島のマカプウ岬から海へ出た

数えきれないほどの波を越えて

主人公のダンは3日間も海を彷徨い続け

海流に乗ってモロカイ島へ辿り着いた

しかもなんと食べ物もサンスクリーンも持たずに、、、





その頃わたしはベッドの上に寝っ転がって

明日乗る飛行機のチケットとターミナルの確認をしていた

するとすぐに何かがおかしいことがわかった

てっきり飛行機のチケットを取ったものと思っていたら

オアフ島からモロカイ島へはモクレレと言うセスナ機に乗るらしいのだ

物心がついた頃から飛行機やエレベーター

子供なら好きな観覧車という類の乗り物が大の苦手だった

あの揺れときたら心臓が止まるかと思うし

生きた心地なんてしたもんじゃない

モクレレは席が5列の11人乗りの小型機で

想像しただけで一気に恐怖のボルテージが上がってくるのを感じていた

ベッドの上でモクレレの写真を見ていると

急に天井が

グルグル

と回り出した

まるでテキーラを立て続けに一気飲みして酔っ払った時みたいに

自分ではコントロールすることができない

幸いベッドの上だったので、倒れることはなかったけど

仰向けになったまま目を閉じてひたすら過ぎ去るのを待った

数秒間で目眩は静まって

それと引き換えに不安がぐるぐると身体中にまとわりついてきた

今回の旅は一人旅

モロカイ島に知り合いもいないし

モオ(ドラゴン)の滝のツアーへ参加するのに1時間ほど運転しなくてはならない

そしてその後は数時間のハイクが待っている

そんなことわたしにできるだろうか、、、

もし途中でまた目眩を起こしたらどうしよう、、、


恐怖が次から次へと波のように押し寄せてきて


モロカイ島に行くことが果てしない夢のことのように思えてきた


ネットには

自律神経失調症 パニック症候群 不安症

そんな言葉たちが並んでいた

薬を飲む代わりに安定剤の旦那の横で数時間の眠りについた



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アラームが鳴るより5分ほど早く目が覚めて

まだ深い眠りについている旦那を起こさないようにそっとアラームを消した

ベッドから起き上がると比較的元気な自分がいた

「うん。大丈夫だ」

と自分に言った

窓の外はまだ暗い

そっと身支度を整えておにぎりを2つ握った

残りのご飯は子供達が食べてくれるようにと鍋に残した

その頃、眠い目を擦りながら

「おはよう。準備はできた?」

と階段を降りてきた旦那が言った

わんこのお世話を簡単に終えて

ドア越しに子供たちに行ってきますと言い残し空港へ向かった

モクレレのターミナルはホノルル空港のはずれにあって

受付をしている小屋があるくらいで

搭乗者はまだ薄暗い空の下、名前が呼ばれるまで各々の時間を過ごしていた

受付で名前と体重を聞かれる

なんで体重!?と思ったが、どうやら体重によって乗る位置が決まるらしかった

出発まであと20分くらい

ベンチへ座ろうとした瞬間またあの目眩が襲いかかってきた

立っていられずすぐにベンチに腰をおろして落ち着くのを待った

恐怖が水となってじわじわと目から溢れ出してくる

もう無理かもしれない

そんな言葉が頭をよぎりそうになって

ゆっくり深呼吸してお腹にぎゅっと力を入れた

何回も何回もそれを続けた

空は段々明るくなりホノルルの街を照らし始めていた

落ち着いてきた頃には時計は6時をさしていた

もう出発の時間だ

係の女の人が名前を呼び始める

どうやらモロカイ島行きの便ではないらしい

徐々にベンチから人が消えていくのと同時に覚悟を決めた

乗ってしまえさえすれば大丈夫

勝手にそんなルールを決めて自分を保った

しばらくすると、また同じ女の人が戻ってきて紙を読み上げた

724便 モロカイ島行きの便だ

名前を呼ばれて小さな女の子がピョンと

座っていた塀から飛び降りてお父さんの手を取った

我が子と同じ年くらいの女の子がワクワクしながら

列に並ぶ姿は不思議とわたしを安堵させた

ベンチに人が居なくなった頃ようやくわたしの名前が呼ばれた

一番最後だった

一番最後ということは後部座席に乗ることを意味していた

簡易なフェンスの扉が開いて列が流れていく

目と鼻の先に既にモクレレが出発の準備を終えて待っている

これから乗るモクレレ




一歩一歩

踏み締めながら

大丈夫 目眩は起きてない

なんとか無事5列目に腰を下ろし

シートベルトをしめるとホッと一息ついた

もう大丈夫 ここまできたらもう心配いらない


パイロットが乗り込むと振り返って笑顔で乗客に挨拶をした

操縦席が見えるなんて変な感じ

機内の様子





口頭で機内時効を伝え終えるとすぐにモクレレは動き始めた

スピードがどんどん早まり陸から離れるのを感じた

その頃には機内に眩しいくらいの光が差し込み

オアフ島を美しく染めていた

朝日がキレイ






大丈夫 

なかなか腕のいいパイロットみたいだ


オアフ島





いよいよモロカイ島へ


つづく

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