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リコリスガール|そらのたね、届く

 わたしは何冊かの雑誌を定期購読しているのだけれど、それらはずいぶん前から積読状態で、いつか読まれることはあるのだろうか、と訝っている。
 また入院することができたら読めるんだけれどな、とか思ったりもするけれど、それよりは作家となり、物書きとして必要最低限の所作として読書を行うことができるようになりたい。ずいぶん前から同じことばかりを話している。

 それでも、ものを書くことについて、ひとつの大きな気づきが与えられたので、それでわたしは、なんとかやってゆけそうだ。近いうちに、そのことは投稿したいと思っている。わたしは、だいたいロマンチックだけれど、その気づきは輪をかけて素敵なエピソードだと思うよ。

 今日は、その気づきに導いてくれた出来事のひとつ、水色の封筒で送られてきた購読誌を紹介しようと思う。
 購読誌、と書いたけれども、販売されているわけではなくて、いわゆるフリーペーパー。わたしはシートの切手をあらかじめ渡して、それで送ってもらっている。

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 絵描きであるカトウジュリさんの『そらのたね』。
 今号が110号となっていて、いくつか欠けはあるけれど、そのほとんどを手元に持っている。創刊号は1999年7月だって! シーモアグラスとか、カフェで配布されていたこともあったから、手元に持ってるよ、という人もいるかもしれないね。

 写真はA4用紙のほんの一部で、その紙全体が文字とイラストで埋め尽くされている。

 くるりのライブ、いいなあ、とか、美術展ゆきたいよね、とか、本も洋服も新しいものが欲しいよね、とか、そういうことをシンプルに、気取りなく思い出させてくれる。
 そうそう、こういう日常だったし、今も、こうであってよかった。
 憧れが詰まっている。
 でも、わたしも、それを憧れのままにしないで、行いたいと思う。それが、リコリスガールを(ルートを少し増やして)再開した理由。今はまだ『そらのたね』のように気持ちよく楽しく届けることはできないけれど、続けているうちに、読む人の嬉しいになったらいいな、と思っている。

 わたしの影も好んで、そらのたねを読む。
 モノクロの世界が自分に親しいのだって。
「ジュリちゃんのカラフルな作品も好きよ、とっても。カラフルだけど、そこにはちゃんと緊張があるの。ただの色の洪水でないことを知っている。計画されていなくても、秩序と理由があり、それは音楽に似ている」

 それは、分かる気がする。楽しませようとするだけのものではないこと。未知の理由があり、もしかしたらいつか、それは明らかになるもの。

「そらのたねは、のびのびと嬉しい。紙の上を滑って、文字をくぐり抜けてゆく楽しさがあるよ」

 そういう楽しいを届けてくれてありがとう。
 その空は蒔かれ、読む人の心を、ほんの少し広くする。

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 同封されていた手紙に、ステキな本、作家さんを教えて、とあったので、ここからは私信になるけれど、それを伝えたいと思う。

 冒頭に話した通り、今はあまり本がうまく読めないでいるので、今日は本当は病院帰りに大きな公園に寄って、聴こうと思っていた本がある。

『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川 洋子 (著)

 書籍版の頃から大好きな作品。チェスのお話。
 あらためて朗読で聴くと、どれだけ大雑把に読み進めていたのかがよく分かる。ナレーションは、まだ完璧にしっくりきてはいないけれど、それでも「慌てるな、坊や」と聴くたびに、それはわたしに対する警句となる。
 詩がなんだかよく分からないという人も読んだり聴いたりしたらいいと思う。描かれるのは盤上の、棋譜としての詩ではあるけれど、その美しさは心に迫ってくる。難しいことを書くのじゃない、言葉の海に深く潜るうちに、それは美しく浮かび上がってくる。美しいものが易しいわけじゃない。触れることさえ不可能な鋭利であることも珍しくない。
 すでに読んでいたとしても、この機会に再読してみて欲しい。わたしも続きを早く聴きたい。今日は暑さに慄いて、まして熱中症になることだって大きなリスクとなる緊急事態宣言下なのだから、外歩きを断念したけれど、早くリトル・アリョーヒンとミイラに会いにゆかなくては。

 ここからは、以前もエントリーしたことがあるけれど、オーディブルで聴いたものでおすすめをいくつか挙げておくね。特に『モモ』のナレーションは最高。

『モモ』 ミヒャエル・エンデ (著)

『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ (著)

『クララとお日さま』 カズオ イシグロ (著)

『クララとお日さま』は福田利之さんが表紙を描いているから、それで選んでもいいかもしれないね。そうなると単行本という選択肢がベストになるかも。物語も切ないけれど、とても好き。こちらももしかしたら持っているかな?

 他にも挙げたい物語があるけれど、ひとまずはこのくらい。どれを読んだとしても間違いなしです。お楽しみあれ〜。

 私信のついでに尋ねるけれど、『そらのたね』は今は、どのようにして入手が可能ですか? 教えてくれたら、そのことアナウンスするね。

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