ハンナの木イチゴつみ
おおきなおおきなバスケットをりょうてでかかえて、女の子が森の中へ入ってゆきます。女の子の名前はハンナ。森にほど近いお屋敷に住んでいる、ちいさなお嬢さまです。
ハンナがかかえるバスケットのおおいの布のすきまからは、ほんわりとあまいにおいがながれてきます。そのバスケットを左右にふりふりハンナは森のおくへと歩いてゆきます。そのにおいにつられるように動物たちがついてゆきます。シマリス、野うさぎ、子じかにヒグマ。ハリネズミも小さな足をけんめいにかけ出してハンナのあとを追いかけます。
ハンナは森のおくのさくでかこまれた場所までやってきました。そこはお屋敷の庭師のキースが手入れをしている木イチゴ畑でした。赤い色の木イチゴがどっさりとその実をつけています。ハンナはその木イチゴのしゅうかくを母親から言いつけられてやってきたのでした。
ハンナはバスケットをどすんと地面におろします。いいにおいがふわっとただよいます。
「今日は何をして遊ぶの?」
子じかがハンナにといかけます。でもその鼻はひくひくとバスケットの方に向いています。
「このバスケットの中に遊びどうぐが入っているのでしょう?」
野うさぎがぴょんぴょんはねながらハンナに問いかけますが、やっぱり鼻をひくひくさせています。
ハンナはあつまってきた動物たちの方をむいていいました。
「今日はお仕事でやってきたの。キースおじさんが育てている木イチゴをしゅうかくするためなの。みんなてつだってくれるかしら?」
てっきり、バスケットからおいしい何かが飛び出してピクニックをするのだろうと思っていた動物たちは、おたがいの顔を見合わせました。お仕事はあんまりしたくないなあ、と動物たちはそれぞれ、そう思いました。
ハンナは動物たちをぐるりとみまわして
「もちろんタダでなんて言わないわ。このバスケットにはパンケーキがどっさりと入っているの。それをお昼にごちそうするから、いっしょに木イチゴつみをやりましょうよ」
そういって、バスケットをおおっていた布をはずしました。あたりにあまいパンケーキのにおいが広まりました。
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