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レイチェルのかさ

「レイチェル! 夕がたから雨になりそうだから、パパにかさを届けてちょうだい。あなたはレインコートを着ていきなさいね」
 お母さんにそう言いつけられてレイチェルは、すばやくレインコートを取りに自分のへやへと向かいました。黄色に白い水たまもようのレインコートはレイチェルのお気に入りです。レインコートをはおるとすぐに
「いってきます!」
 お父さんのおおきな黒いかさをひきずって出かけていきます。空はあつい雲におおわれて、いまにも雨がふりだしそうです。
 レイチェルはかさをひきずるのがたいへんなので、広げてかたにかついで歩きます。
 レイチェルは池のあるおおきな公園にはいります。入り口には赤や青の花を咲かせたあじさいがこんもりとしげっていました。そこから声がかかります。
「やあ、レイチェル。こんにちは。そのレインコート、とってもすてきだね。なにせこれからいいお天気になりそうだものね」
 あじさいの葉のあいだからレイチェルに声をかけたのはカタツムリの親子でした。
「あら、カタツムリさんたち。ごきげんよう。すてきなレインコートでしょう」
 カタツムリの親子にレインコートをほめられたレイチェルは、その場でくるりと回ってみせます。
 カタツムリの親子はつののひとみをたがいに見あわせ、なにかをおしゃべりしています。お父さんカタツムリがレイチェルにいいます。
「レインコートはすてきだけれど、そのかさはなんだかつまらないかさだね。ぼくたちにまかせてくれれば、おしゃれなかさにすることができるよ」
 レイチェルは、そう聞くとたちまちうれしくなりました。
「おねがい! わたしもこのかさが、なんだかつまらないもののような気がしていたの」
 カタツムリの親子はあじさいの葉っぱからのろのろと動き出して、まっ黒なかさのうえにわたりました。そして二匹がならんで、かさのふちのあたりをぐるりといっしゅうしました。するとどうでしょう。ただのまっ黒なかさは、赤と青の二本の線でふちどられたとてもおしゃれなかさにかわりました。
「この赤と青の色はあじさいの花からもらったんだ。いつかつかってみたいと思っていたんだよ。気に入ってくれたかな?」
 カタツムリの親子は目をいっぱいにのばしてレイチェルを見つめます。
「すごくおしゃれ! とても気に入ったわ。きっとパパも喜ぶはずよ。ありがとう。それでは、またね。カタツムリの親子さん!」
 カタツムリの親子は両目をふってレイチェルを見おくりました。

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