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朝早く、焼き立てのバゲットをかかえておうちに帰るとき、マリエルはいつもうさぎになったような気分になります。二本の長いパンのあいだから顔をのぞかせて歩いていると、ぴんと立った二つの耳が頭にはえたようです。ときどき、ぴょんとうさぎをまねてはねてみます。そうすると焼き立てパンのこうばしいかおりがマリエルの鼻さきでふわっとゆれます。朝のひかりの中で、それはいつもマリエルの心をうきうきとさせ、おなかのむしをぐう、といわせました。
タンポポのわたげのようなふりをして、それはやってきました。ふわふわとしていて、さわりごこちもやわらかなそれは、マリーの耳たぶにぶつかってはずむと、耳のなかにするするとはいってゆきました。 「きゃあ! くすぐったい!」 おもわずマリーは声をあげました。 「わたしのあたまのなかにはいってきた、あなたはだあれ?」 タンポポのわたげのようなそれは、口をつぐんでだまっています。 マリーは、うさぎのぬいぐるみで、しんゆうのセバスチャンにたずねてみました。 「わたしのあたまのなかに