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続・感覚のズレ

ワタクシが物心ついた頃、丁度20世紀から21世紀への過渡期と言う事もあってか、しばしば近未来をイメージしたCMや漫画やアニメがメディアを賑わせていた。
その【近未来】を描いた作品群では、どう言う理由からか若い女性は大抵、レオタードタイプの装束を身に着けていた(男性も割と体にフィットするタイプの装束を身に着けていた気がする)。
幼いワタクシはそれらの光景を見て
(嗚呼、未来のトレンドはあんな感じなんだろうな…)
等とぼんやり考えていた。

そして時は流れワタクシは成人し、社会に出て、幾度かドロップアウトと寛解を繰り返しながら日々を過ごしていた。
21世紀の服飾のトレンドはどうなったかと言えば、多少変化はあるものの概ね20世紀のそれとは変わらず、20世紀に想像されていた21世紀の様相はそのまま近未来の世界をテーマにしたフィクションのそれへと変わっていった。例えばゲーム【女神転生】シリーズに登場する悪魔達には、丁度20世紀に想像されていた近未来的な装束を身にまとうものが少なくない。

然し、ワタクシが知らない間に世間では、レオタードタイプの装束に対する世間のイメージが一気にネガティブなものになっていた。

先ず1990〜2000年代の頃(だったと思う。この辺少し記憶が曖昧である)に【ブルセラ】なる文化(それを文化と呼ぶのが許されるなら…の話だが)が生まれた。女子高生が身に着けていた衣類…特にスクール水着、新体操用のレオタード、ブルマーなどなど…が一部界隈で売買の対象になったのである。売買の目的については語るのも悍ましいので伏せるが、こうした流れを受けてスクール水着やレオタード、引いてはボディスーツや女性用水着全般に対するイメージが【常軌を逸脱した性癖の男が欲情する為のアイテムまたはデザイン】と言う風に変わったのは、間違い無いだろう。
(この延長線上に、近年盛んになった動きとして【児童の制服や体操着をユニセックスなデザインに切り替える】と言うものがあり、この流れ自体は児童を守る為に必然の措置だと個人的には思う)。

次に、レースクイーン(バブル末期からバブル崩壊黎明期の頃、この職業に就く女性は足が長く見えるハイレグデザインのレオタードを着用していた)に対する一部過激派フェミニストの糾弾が始まった。最近でもX…旧Twitter界隈でしばしば白熱化する「こう言う服装が日常化している職業は性的搾取が云々」と言うあれである。こちらはレーシングチームを抱える各企業がレースクイーンの服装をやや地味(ジャケット&ミニスカートタイプ)に変更する動きがあったものの糾弾の声は止まず、最終的にレースクイーンと言う職業そのものが大幅に衰退する結果となった…らしい。「らしい」と曖昧に結んだのは理由があり、日本では嘗ての華やかさは鳴りを潜めたもののレースクイーンと言う職業そのものは絶えてない事に拠る。海外では既にレースクイーンと言う職業そのものを排した国もあり、そこでは失業した元レースクイーンが憤懣遣る方無し…と言う有様だったと聞く。

こうした出来事が重なる内に、いつしか巷間におけるレオタードタイプの装束そのものが何と言うか、ネガティブな意味でフェティッシュなアイテムとしてイメージが固定されてしまった訳だ。

上記に連ねた出来事は(当時は自覚がなかったとは言え)アセクシュアルの当事者たるワタクシにとってはいずれも蚊帳の外の出来事だった。
若い頃のワタクシは世間の目を気にもしないで、しばしばレオタードタイプの装束を身に着けた女性の絵を描いた。特に理由は無く、本当に何となく、である(照れ隠しに自虐的なコメントを添えたりはしていたが)。
これが、一部の人間にあらぬ誤解を与えてしまったらしい。ワタクシが絵を描いていた時分にはしばしばR18的な内容のイラストリクエストが来たし、今もカスタムキャスト(3DCGアバター作成用アプリ)でレオタードタイプの装束を身に着けたキャラを作る度にムッツリスケベ呼ばわりされる。
その度、レオタードタイプの装束にリビドーを感じない事を懇切丁寧に説明するのだが、相手はまず理解してくれない。
この認識のズレは、多分この先もずっと続くのだろう。ある意味アセクである事を理由に差別されるよりも堪える。

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