【蝦夷幽世問わず語り】ウパシチロンノプ
霊獣に近い存在。極めて強い巫力を有するカムイであり、しばしばそれを用いてヒトを助ける。字義は【雪の狐】と言う意味であるが、食肉目イヌ科のキツネの事ではなく、生物学的には食肉目イタチ科のオコジョの事を指す。
〈容姿〉
名前の通り雪のように真っ白な毛皮を持つ。その大きさは「ヒトが用いるマキリ(小刀)の刃影に隠れてしまう位に」小さいと形容される。これは冬毛のオコジョの特徴と生物学的に一致する。
〈性質〉
善良であり、決してヒトに害を為す事は無い。ウウェペケレ(昔ばなし)では常にヒト(時には他のカムイをも)を助ける善なる存在として登場する。
〈備考〉
なりが小さい為か天界では目立たないカムイと強調される事が多く、地上での活躍を認められて初めて周囲のカムイがその武勇を称える、と言った描写がウウェペケレにはしばしば見受けられる。
また、山に入った狩人がこのウパシチロンノプ(≒オコジョ)を見つけた場合は捕らえて直ぐにイナウ(木幣)で包み、誰にも見せずに秘宝として大切にする(アイヌ語でこうした秘宝を【マンプリ】と呼ぶ)と、その狩人は運が向き猟に恵まれ、良い暮らしを送る事が出来るとされた。
参考資料
アイヌの物語世界(中川裕著、平凡社)