【くちばし】の思い出
【くちばし】は、イタリア系ロシア人の小説家ヴィタリー・ビアンキ作による絵本のタイトルである。
ヒタキ(原作では詳しい種類は不明。絵本では恐らくサメビタキかコサメビタキとして描かれている)がシメ、イスカ、様々なシギ類、ヨタカ、ペリカン等の嘴の役割を知って驚く…だいたいそんな骨子の内容で、ワタクシが子供の頃、大事に読んでいた一冊だ。
鳥類画や動物画を描かせたら日本でも並ぶ人がない画聖、故・藪内正幸さんが作画されている事でも有名であり、リアルな鳥類のイラストを堪能出来る。
少し前になるが、外出先でたまたま時間潰しに図書館に寄った際にこの絵本の新装版【くちばし〜どれが一番りっぱ?〜】が存在する事を知った。懐かしさに駆られ、手に取って読んで昔日の思い出が蘇った。
新装版【くちばし〜どれが一番りっぱ?〜】は訳者と底本が違うらしく、随所に旧版【くちばし】とは異なる箇所が見られる。
例えば登場するシギ類の内、ダイシャクシギとソリハシセイタカシギが旧版では男性として描かれるのに対し、新装版では女性として描かれている。
また、鳥の名前が日本で標準和名として用いられている名称に変更された事も無視は出来ない。ざっと下記の如し。
シギ→タシギ
きりがたくちばしのシギ→ソリハシセイタカシギ
かまがたくちばしのシギ→ダイシャクシギ
カモ→ハシビロガモ
キツツキ→アカゲラ
※因みにペリカンだけは【ペリカン】のまま。藪内正幸さんがお描きになった種類はモモイロペリカン
この絵本は、ワタクシが藪内正幸さんと言う画家の存在を知る切っ掛けになった本でもある。
今現在、この絵本が装いも新たに再び世に出て、子供達の目に触れられる事は何だか我が事のように嬉しい。
それにしても改めて読んで思ったのは、藪内正幸さんの描く【くちばし】に登場する鳥達は、リアルテイストで描かれて居るにも関わらずちゃんと「表情」があるのが面白い。
図書館で併せて藪内正幸さんによる【日本の野鳥】と言う鳥の画集を書庫から出して貰って、ペリカン以外の鳥の絵を比較してみたのだが(ペリカンは日本では野生の個体は居ませんからね)、【くちばし】の鳥達は同じくリアルテイストで描かれているにも関わらず、【日本の野鳥】に描かれた鳥と異なり明らかにハッキリと喜怒哀楽(?)が見てとれるのだった。
改めて、プロって凄いな…と思う。