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ささやかにして大いなる喜び

(2008年にmixiにて投稿した記事を、若干編集した上でこちらで公開します。尚、ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより拝借しました)

長い時間をかけてその意味する所処を探していた事柄が、ある日ある時、ふとした切っ掛けで解明する…その瞬間にワタクシは大いなる喜びを感じる。例え他の人にとっては些細な事でも。

嘗てワタクシは、古生物…特に古代哺乳類のイラストを中心としたブログを切り盛りしていた事があった。このブログにて古生物を紹介するに当たり、自らに科した条件の一つが【学名(属名)の意味が判明している事】。理由は特に無いのだが、ブログ開設の折から一貫して拘り続けていた事のひとつだ。
己に課したこの条件故に、掲載したかったけど残念乍ら掲載に及ばず…と言う古生物が、実は結構な数になる。

そのような古生物群の中で、幸いな事にふとした切っ掛けで属名の意味を理解する事が出来た動物が幾つかある。今回はその中でも、チャパルマラニアと言うアライグマの仲間にクローズアップしたい。

チャパルマラニアはアルゼンチンやコロンビアで化石が見つかっているアライグマの仲間である。化石からの復元によるとその体重は150kg程度、体長は1.5〜1.8メートルとツキノワグマ並みに大きい。グリプトドン類(絶滅した巨大なアルマジロ)の骨にこの動物の歯型が残された例があると言い、一部の学者はチャパルマラニアをスカベンジャー(腐肉食者)だったとしている。他方、どっしりとした胴体は長い消化器官を収める事が可能である為、この動物がメガネグマやジャイアントパンダのように特定の植物に食餌の大半を依存していたと分析する学者も居る。仮にチャパルマラニアが特定の植物に依存した食生活を送っていたとしても、グリプトドンの遺骨に歯型が残る事とは必ずしも矛盾しない。メガネグマもジャイアントパンダも、必要に迫られれば屍肉を口にする事があるからだ。

チャパルマラニア(テクパン・クリエイト筆)
水彩色鉛筆、色鉛筆使用
近年の調査で、現存するアライグマ類のひとつ、
ハナグマ(ヘッダー画像参照)に近縁である事が
判明している

このチャパルマラニアと言う属名の意味が長い事解明出来ず、悶々としていた次第である。
何分マニアックにも程がある古生物のひとつなので、日本のサイトを検索した位じゃ詳細な情報など得られはしない。其処で勢い海外のサイトを辞書片手にハシゴする羽目になるのだが、このチャパルマラニアと言う動物は海外でも相当知名度が低いと見えて、最近まであまり有益な情報を得る事が出来なかった。

ところがある日、別の古生物について調べていた折、ふと興味を惹かれて飛んだリンクの先に、チャパルマラニアの発掘と記載に関わった科学者(フロレンティーノ・アメギノと言う南米の著名な古生物学者)の事を記したページを発見したのだ。
早速アクセスし、Google翻訳にかけてみたら、その記事の中にチャパルマラニアの属名の由来になった事柄が詳しく記されていた。
…こうして積年(?)の謎は、あっさりと解明したのである。

一介の好事家としては、この千にひとつとも言える奇しき偶然に、ただただ感謝、感謝…である。

因みに、チャパルマラニア(Chapalmalania)とは【チャパルマラン(ブエノス・アイレス周辺の旧い地名)所縁のもの】と言う意訳が可能である。
チャパルマラニアに関しては、~laniaの語にラテン語で"引き裂く"と言う意味がある事から、この属名を「チャパルマと呼ばれる何か(例えば特定の植物等)を引き裂く動物、と言う意味なのかな」と思って調べていたのだが、蓋を開けてみればその予想は甚だしく的外れだった訳で、全く思いもよらなかった。
…こうした発見が面白いから、動物ヲタクは辞められない。

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