「自分がどこまで通用するのかを試したい」 アカデミックの世界から、ビジネス界への挑戦
DXソリューション統括部でデータサイエンティストとして活躍する中井克典。
入社後、メーカーをはじめ幅広い業界のプロジェクトに従事し、データサイエンティスト育成事業にも講師として参加。直近はDXやAI事業の立ち上げの支援業務に従事中。
データサイエンティストとしてのキャリアパスについて語っていただきました。
アカデミックの世界からビジネスの世界へ──チャレンジのきっかけ
東北大学の研究室で物理化学を専攻。博士号を取得後、東京大学で博士研究員、特任助教として経験を積む。
……こう書くと、アカデミックの世界で順調にキャリアを積み上げてきたように見えるかもしれません。
たしかに、前職は研究者としても満足のいく環境ではありましたが、その一方で私が専攻していたベーシックサイエンスは研究費が抑えられてしまっている分野でした。そのため、いつもコストと進めたい研究とのせめぎ合いが続き、制限される世界でもありました。
さらに将来を踏まえると、教授職に就任するには非常に狭き門をくぐる必要があります。もちろん、研究職として残る道もありましたが、ここで得た研究手法や物事の本質を探る視点が、もっと広いビジネスの世界で通用するのかどうかを試してみたくなりました。
それともう一つ、転職を考えた理由があります。前職のときに投げかけられた「その研究は一体いつ、誰の役に立つの?」という言葉です。
この言葉は、シンポジウム発表や講義の際に、ほかの研究者や社会人からたびたび投げかけられた質問でもありました。その場ではなんとか返答をしていましたが、ふと考えると自分が今携わっている研究が実用的な領域に応用されるのは100年先かもしれないな、と思い始めたのです。
もちろん、自分の興味がある分野を突き詰めることができるのは幸せな環境です。しかし、自分の手掛けたもので社会が少し良くなれば、誰かのためになっているという実感があれば、その道に進んでみたい。そんな想いが日増しに強くなっていきました。
また、マネジメントに興味が湧いたことも転職の想いを後押ししました。
趣味で某スポーツ団体をスタートアップしたのですが、ここで数年間、地道に自分なりに工夫を重ねていくうちに少しずつ団体組織として整ってきて、「組織づくりのおもしろさ」を実感し始めていました。これは利害関係もほとんどない趣味の段階ではありましたが、マネジメント・組織づくりについても興味が沸いて実社会で学んでみたいと考えるきっかけになりました。
どの会社に行きたいかは明確に定まっていませんでしたが、転職活動を進めていく中でテクノプロ・デザイン社を知り、興味を抱きました。
なぜなら「データサイエンティスト育成コース」という言葉に惹かれたからです。今までの研究分野とは少し違いましたが、機械学習、データ統計や整理、そこから読み取れる情報の分析など、私の経験がこのフィールドで活かせるのではないかと思ったのです。 正直なところ、社名もよく知りませんでしたが、まずはチャレンジしてみよう!と思い立ち、2018年にビジネス界へと飛び込みました。
データサイエンティストの視点から見えてきた、 市場価値が高まる人材像
入社後はデータサイエンティストとしての視点を少しずつ身につけ始め、医療機器メーカー、センサーメーカー、金融業界、建設業界、小売業界などあらゆる分野のプロジェクトを経験する機会に恵まれました。しかしその一方で、クライアントが欲する開発現場のニーズに対して、本当に応えきれているのかという疑問が残りました。
技術系アウトソーシングは、クライアントから委託されたニーズに対して適切に応えていく。それはもちろん重要なことです。しかし、DX戦略やIoTの導入といった技術とマーケティングデータの掛け合わせが求められる昨今、今後クライアントから求められる人材は一つの工程に従事するエンジニアではありません。
“手を動かせる+AIの知見がある人”こそが市場価値を高め、今後のエンジニアリングを制していくのではないかと思ったのです。しかし、AIビジネスに絡むプロジェクトでは、データ分析やライブラリ、ソースコードの使用など高い専門性が求められる領域でハードルも決して低くはありません。いくらエンジニアの技術力が高くても、AIビジネスの知見となるとレベルにバラツキが目立ちました。
つまり、知見が属人化している側面があり、提供できるソリューションの品質安定化は大きな課題となっていたのです。そこでデータサイエンスのアルゴリズムについて、社内のエンジニアが着実に学べる機会をつくってみることを思い立ちました。
基礎的な部分を習得することで、少なくとも「顧客が望んでいることをAIで実現しようとしたら、なにが必要になってくるか」を自分の眼で判断できるようなレベルに、当社全体を引き上げていくことができます。
そうなると、クライアントとのお付き合いのレベル感もぐっと高くなり、双方にとってメリットの多い機会創出へとつながっていきます。
ナレッジを情報資産化し、高品質なライブラリをつくる。 それが会社の強みに直結する
もっと端的に表現すると「今まで蓄積したナレッジを情報資産化し、高品質なライブラリを構築する」ということです。そのライブラリを当社の技術者育成プログラムに組み込めば、より市場価値の高い人材を輩出できるかもしれない。そう考えたのです。
もちろん、論理背景だけを伝えても、“論理+結果”がわかるだけでは机上の空論になり育成につながりません。しかも“データサイエンス”という言葉だと、受講する側もハードルが上がってしまうので“物事を改善する技術”という切り口で、より具体的な事例を盛り込むことにこだわりました。さまざまあるAIライブラリの、どのコードを使えば最適な課題解決に導けるのか、過去事例をもとにお手本となるコードがわかる人材育成ツールの構築を目指しました。
プロジェクト現場ではAIの分析データに基づく課題解決が遂行されていく中で、クライアントとデータサイエンティストの間で共通言語を持ち、“翻訳”ができるエンジニアが中心にいれば、プロジェクト全体の効率化にも直結していきます。
たとえば“データ分析の結果、◎◎なことをやりたいんです”というご要望に対して“それはですね……”と横断で話ができる人。こうした人材が開発現場では重宝されていきます。
当社は「総合技術ソリューションカンパニー」を標榜している以上、AIデータ解析といった最上流から開発〜構築・運用までをシームレスに手掛けられる会社、クライアント様に寄り添ったソリューションを提供できる会社というブランドを社会に根づかせていくべきだと考えています。
こうしたAI人材の育成面での課題は、他社でも多く発生しています。
そこでこのAIライブラリの内容をさらにブラッシュアップし、社外のクライアント向けにAI人材教育としてのサービス化を展開し始めています。
博士号取得者の新しいキャリアパスの可能性。データサイエンティストという道
日本では“ポスドク”と呼ばれる非正規雇用の博士の割合が多く、何年も苦労して博士号を取得してもその先のキャリアパスが描きづらい環境にあります。
しかし博士号を取得したということは、専門知識はもちろん、専門外であってもロジックの組み立て方や思考・アイデアなどが豊富にある人が多いでしょう。
これからの社会では博士号取得者が活躍できるステージが増えていくはずです。
データサイエンティストは新しいキャリアパスの一つになりうるのではないかと思います。
しかし当の本人たちは「社会に出ても慣れない」「ビジネスの経験がない」といった理由で可能性を感じていないかもしれませんが、一つでも活かせる知見があるならばそこから想像を超えるような未来を描くことはできると思います。
最後にテクノプロ・デザイン社の社名について、少しお話させてください。
「デザイン」という単語がついているのは、ちょっと不思議に思いませんか?エンジニアの会社なのにクリエイティビティな響きがついている社名。
これは私自身の解釈にすぎませんが、きっと技術者個人のキャリアデザイン、技術を通して新しい社会を実現するデザイン力など、これからの時代、社会をより良く変えていく使命がある名前だと思っています。当社発のAI人材教育サービスが少しでも付加価値を創造していける手助けとなれば、これ以上のやりがいはないですね。
※こちらの記事は2022年11月時点の情報となります。
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