紅くらげに告ぐ #4
和:ご飯出来たよー。
「やったぁ!皆んなご飯だってー!」
和:そんな焦らなくても大丈夫だよ笑
大きめのテーブルを何個か並べ、その上に料理を並べていく。
「「いただきまーす!」」
嬉しそうに食べてくれる子供達を見ると、こっちまで笑顔になれる。
イチノセ孤児院に来て、わかった事がいくつかある。
・皆んな普通に学校に通っている事。
・〇〇、九条が帰らない日が多い事。
・美空がこの孤児院を仕切っている事。
そして
"何でも屋"が必要不可欠な存在である事だった。
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数日前
和:.....私を...ここに住まわせてください。
九条:おっけー!じゃ、決まり!えっとー...
プルルルル プルルルル
電話が鳴った。
九条:ごめんね、ちょっと待ってて。
九条:はい、こちら"何でも屋" 用件は。
和:あっ.....
私が電話した時と同じ文言だった。
九条:....はいはい、報酬は?
報酬?私の時はそんなの聞かれなかった。
九条:...1,000万ね。了解です。
1,000万!?
ガチャン
九条:ごめんごめん笑 さてと....
和:....私が電話した時も九条さんが出たんですか?
九条:え?
和:何でも屋に電話したんです。私も。
九条:あー...俺じゃないよ。
和:....じゃあ〇〇さんですか。
九条:違うよ笑 それだと〇〇が自分で家に呼んだ事になるからね笑 何でも屋には他に2人メンバーがいるんだよ。その内のどっちかだと思うよ。
和:....報酬とか聞かれなかったですけど。
九条:子どもだからね。そもそも俺達は困ってたり、異変を感じてる子どもを助ける組織だから。だから君にもメモを渡したんだよ。最近は大人からの依頼が多いけどね笑 資金集め資金集め。
和:...なんで〇〇さんの家に行かされたんですか。
九条:うーん...それは電話取った人にしかわからないけど....君の依頼って結構イレギュラーなんだよね笑
和:イレギュラー?
九条:家出の受け入れなんてやってないしね。ここにいる孤児は全員が親を亡くしたか、家を出ざるを得ない環境の子を引き取るかだからさ。
九条:ちゃんと親がいて、その上で家出してきた君はイレギュラーなの。だからリーダーである〇〇に任せたって感じじゃないかな。
あの人...リーダーなんだ。
和:...わかりました。
九条:これで結構説明しちゃった感じだな笑
ガチャ
〇〇:終わったか?
部屋に入って来たのは〇〇だった。足には子どもが引っ付いている。
「和ちゃんここに住むのーー?」
「早く一緒に遊ぼー!」
九条:決まったよ、〇〇。ここで保護する事になった。
〇〇:ん。わかった。
九条:後は...部屋だね。
〇〇:あー.....俺んちでいいだろ。
和:え....えぇ!?
九条:部屋余ってなかったっけ。
〇〇:あぁ、もうパンパン。
和:み、美空と一緒の部屋でもいいです!
九条:あー...美空は1人部屋じゃないとダメなんだよね...
〇〇:我慢しろ。殆ど家にはいねぇから。
男と2人。しかもまったく全容が掴めない人間。すぐ頷ける程、気持ちの整理はついていない。
〇〇:...ま、嫌だったら帰れ。夢諦めて両親に情けなく「無理でしたぁー」って言えば・・
和:わっ、わかりました!〇〇さんの家で良いですよ!
九条:ごめんね笑 性格悪いの〇〇。
〇〇:...よし、じゃあチビ共、部屋の外出てな。
「えー!和ちゃんと遊びたいー!」
〇〇:後で遊ばせてやっから、な?
「....はーい」
バタンッ 子ども達が出ていくと、部屋には私と九条と〇〇の三人。
空気が変わった気がした。
〇〇:さてと.....今度はBB弾じゃねぇからな。
和:へっっ!?.....
〇〇は私の顔に銃を突きつけた。
〇〇:ここは"何でも屋"。文字通り何でもする。殺しでもな。そこで得た金でここを経営してる。
〇〇:つまり、お前がここの存在を他言したり、俺達の正体を他言した時点で、チビ共は路頭に迷うって訳だ。
〇〇:良いか?お前の命は俺達が握ってる。お前が約束を守っている限りは、命の保障はしてやる。
〇〇:約束を破った時、それはお前が死ぬ時だ。
恐怖でガタガタと震える体を抑えつつ、助けを求めようと九条の方を見る。
九条も真顔でその様子を見ているだけだった。
和:....わ、わかりました...絶対言いません...
〇〇:わかればよし。
パンッ
和:ひっ.....
〇〇:バカだなぁ笑 実弾なんて持ってねぇよ笑
撃たれたのは、黄色い小さな弾。
〇〇:ほれ、チビ共と遊んでこい。
まるでつまみだされるかのように部屋の外に出された。
〜〜
〜〜
九条:はぁ........これで満足か?
〇〇:......あぁ、ごめんな。
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和:.....ただいまー。
子ども達が眠りについてから、〇〇の家に帰る。
今までは朝食も昼食も美空が作り置きしていたみたいだ。高校に通いながら。
凄いなぁと、日々感じていた。
和:あー.....疲れた...
着替えもせず、ベッドに寝転がる。最初は男の人の匂いがしたけど、すっかり自分の匂いに変わった。
ガチャ
和:ん?
〇〇:ただいまー。
和:え!?
〇〇の声が聞こえた。何日かぶりに帰ってきたんだ。
〇〇:ん? あぁ...そうか。俺んちに住むんだったな。
〇〇のあの雰囲気を思い出して、体が硬直してしまう。
〇〇:なんだ?死んでんのか?
和:あ...いや...その..ごめんなさい..
〇〇:あ?....まぁ良いや。お前、飯食ったか?
和:た、食べました。
〇〇:そか。どうだ、暮らしには慣れたか?
和:はい...皆んな良い子で...楽しいです。
〇〇:なら良い。これ給料な。
和:え?
手渡されたのは、封筒に入ったお金。中を見ると、10万円が入っていた。
和:え!? こ、こんなに....
〇〇:お前の出生調べたけど、バイトもした事ないんだろ?きっと。 働いて金を得る大変さを知れ。
〇〇:それに多い訳じゃない。そんくらいの働きをした。 アイドルになりたいんだろ?だったらダンススクールにも通え。ボイトレもな。服とかも自分の金で揃えろ。
〇〇:今日はそれ渡しにきただけだ。じゃあな。
そう言い残して、すぐ彼は家を出て行った。
「俺んちに住むんだったな」とか言って家に入って来たくせに、これを渡しに来たと言う。
和:ふふっ笑
不器用な人だと思い、笑ってしまった。
和:ん?
封筒にまだ何か入っている。
和:これ....
封筒に入っていたのは、私の名前が刻まれている完全に偽造された身分証だった。
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翌朝
偽造された身分証と、本当の身分証を見比べながら孤児院へ向かう。
出身地と生年月日が変えられた、本物そっくりの身分証。
こんなものを簡単に作れてしまうなんて、やはり怖い組織なんだろうか。
地下の階段を降りながら、そんな事を思っていた。孤児院が地下にあるのも、世間にバレたら面倒臭い事になるかららしい。
ガチャ
和:あっ.....
九条:あ、和ちゃんおはよー。
まだ誰も起きていない孤児院に、1人いたのは九条だった。
九条:ここの生活には慣れた?
和:は、はい。
九条:そう。なら良かった〜。
和:な、何やってるんですか?
九条:ん?あぁ、床の穴をパテで埋めてるの笑
そういえば、私も気になっていた。床に無数の小さい穴が空いてる事を。
和:私も手伝います。
九条:いいよいいよ笑 またすぐ空くだろうし。
和:え?この穴って何なんですか?
九条:あー笑 これはね・・
ガチャ
??:帰ったぞー.....ん?
和:え?
扉を開けて入って来たのは、今まで見た事ない人間。服の下の首に、少しだけ刺青が見える。
九条:おー、おかえり笑 穴の元凶が帰って来たよ笑
穴の元凶? え、この怖そうな人もここの人間なの?
??:あ?....なんだお前、見ねぇ顔だな。名前言え。
パァン!
男がポケットから手を出すと同時に、轟音が響いた。
それと同時に、私のすぐ横に小さな穴が空いた。
九条:こらこら笑 だからそうやってすぐ実弾撃つ癖やめなよ。鬼木。
鬼木:あぁ?
白い煙をあげて、床が嘆く。私に当たるギリギリの所に撃たれたのは、BB弾ではない。
それは確かに実弾だった。
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