義姉で推しの飛鳥さんの本音を聞いた日。
飛鳥:私、部屋で食べるから。
〇〇:え、あ...はい。
バタンッ 僕の義姉の飛鳥さんは、夕飯を持って自室へと消えていく。
いつも怒っているのか、顔を赤くしながら。
〇〇:はぁ....
何故こんな状況に...
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1ヶ月前
〇〇父:〇〇。大事な話があるんだけど、いいか?
〇〇:なに?そんな改まって。
〇〇父:お父さん....再婚することになりました!
〇〇:うぉお!まじで!?
小さい頃から父の手一つで育ってきた僕にとって、父が幸せそうにしている所を見るのは嬉しかった。
〇〇父:それでさ、今日来てもらってるんだ。
〇〇:今日!?いきなりだな。もう来てるの?
〇〇父:おう。今ちょっと迎えに行ってくるから。
父は玄関の扉を開いて出て行った。なんとなくソワソワしながら再び玄関の扉が開くのを待っていた。
ガチャ
〇〇父:〇〇ー!挨拶ー!
玄関から父の声が聞こえる。僕は椅子から立ち上がって急いで玄関へ向かった。
〇〇:あ....よ、よろしく?お願いします!
??母:君が〇〇君ね? 今日からよろしくお願いします。
今日から僕の母になるであろう女性は丁寧に頭を下げた。
〇〇:えっ......
僕は固まってしまった。
飛鳥:.......よろしく。
僕の母になるであろう人の後ろから現れたのは、元乃木坂46だった、あの"齋藤飛鳥"だったからだ。
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〇〇:じゃあ、行ってきます。
飛鳥:.......ん。
飛鳥はテレビを見ながら、こちらを見ずに答える。
〇〇:今日は.....遅くなりますか?
飛鳥:.....撮影あるから遅い。
〇〇:わかりました。じゃあ料理は、あっためてくださいね。
飛鳥:ん。.......はや.....ってくるボソッ
〇〇:え?
飛鳥:なんでもない// 早く行け。
〇〇:あ...はい。行ってきます。
バタンッ 悲しく扉を閉じた。
母と父は仕事の関係で遅く帰ってくる。だから家にいるのは僕と飛鳥さんの二人。最初は中々慣れなかったけど、なんとか自然に振る舞おうと頑張っている。
でも、飛鳥さんはずっと冷たい。いくら料理をあっためられても、ずっと冷たい。
目も合わせてくれないし、会話も少ない。推しと姉弟になれたのは良いとしても、なんだか悲しい気持ちに陥ってしまう。
〜〜
高校
〇〇:へい!
自分の手にバスケットボールが渡る。そのままゴールまで一直線。
男1:ナイッシュー!
〇〇:ふぅ...
監督:よし。10分休憩。ちゃんと水分補給しとけよー。
男1:うぃー。ナイッシュー。調子いいじゃん。
〇〇:おー。最後の大会近いからな。頑張らないと。
男1:気合い入ってんな。新しくできたお姉ちゃんの為にも、かっこいい所見せねぇとな。
〇〇:たぶん見に来ないけどな笑 仲悪いし。
男1:えぇ!? 仲悪いのかよ....
〇〇:冷たいしなぁ.....あ、水筒忘れた...
男1:まじ?
〇〇:んー....あれ?
バックの中を漁ると、一本の水筒が入っていた。確かに自分は家に忘れてきた筈なのに。
〇〇:んん?
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自宅
〇〇:ふぃー.....疲れた...ただいま...
気だるい足を動かして家に帰る。
〇〇:ん?靴ある。
遅くなると言っていた筈の飛鳥さんの靴が玄関に並んでいる。
〇〇:早く終わったのかな、撮影。
手洗いをうがいをして、部屋に戻る。
ガチャ
飛鳥:へっ!?
〇〇:ん!?!?
僕のベッドに寝ていたのは、飛鳥さんだった。
〇〇:あ、飛鳥さん!?何して・・
飛鳥:うぅ// 帰ってくるの忘れてた//
よく見たら僕のパーカーを身につけている。
飛鳥:......隣座って。
顔を赤らめながら、飛鳥は僕のベッドに座っている。隣を少し空けて、隣に座る様に促してくる。
訳がわからない状況に僕は困惑しながらも、隣に座る。
〇〇:っ.......
急に"推し"の隣に座っているという状況が、自分の鼓動を高める。
飛鳥:...〇〇は...私のこと...嫌い?
〇〇:え?き、嫌い?
飛鳥:うん....だって...私冷たくしちゃってるし...〇〇は自然に接してくれようとしてるのに...
〇〇:.....嫌いなんかじゃ無いです。ずっと昔から好きですし...
飛鳥:え!?
〇〇:実は推しだったんです笑 ....でも僕が飛鳥さんに嫌われたと思ってました。
飛鳥:嫌いなんかじゃなくて!....その...恥ずかしいからどう接すれば良いかわかんなくて...
〇〇:ん? なんで恥ずかしいんですか?
飛鳥:んん// それはまだ言えないけど....
〇〇:?? と、とにかく僕の事が嫌いなわけじゃ無いですね?
飛鳥:うん...むしろ...好きボソッ
〇〇:え?
飛鳥:いいから! ....あ!それと今日の朝水筒忘れてたよ?
〇〇:あ!あれ入れてくれたの飛鳥さんだったんですか?
飛鳥:うん。忘れてたから。
〇〇:言ってくれたら良かったのに...
なんとなく普通に話せる様になってきた。推しと話しているという感覚も、僕の中で段々と薄れていった。
〜〜
〇〇:よし。僕はそろそろ料理作りますね。
飛鳥:あ、ちょっとまって。
〇〇:はい?
飛鳥:これ....
飛鳥が差し出したのは一つのお守りだった。
〇〇:これ飛鳥さんが作ったんですか?
飛鳥:うん。部活の大会近いって言ってたから..
お守りには"必勝祈願"と書いてあった。
〇〇:嬉しいです!ありがとうございます!ギュッ
飛鳥:うあ.....//
〇〇:あ、すんません笑
興奮して思わず手を握ってしまった。
飛鳥:あの....その...頑張って。
〇〇:はい!
飛鳥:それと....敬語じゃなくていい。
〇〇:あ、兄妹だから、それもそうですよね笑
飛鳥:あと.....飛鳥ちゃんって呼べ//
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大会後
あの日以降、飛鳥さんとは普通に喋れる様になった。まぁ今でも顔を赤くしているのには気になっているけど。
飛鳥:お疲れ!
〇〇:ありがと!優勝したよ!
飛鳥:見てたよ。活躍してたね。
〇〇:うん!飛鳥姉が見てるって思ったら頑張れた笑 あとお守りのおかげだよ。
飛鳥:いひひ// そ、それでさ....その...
〇〇:ん?
飛鳥:お、お守りの中見てみて。
〇〇:え?こういうのって開けない方がいいんじゃ...
飛鳥:いいから!
飛鳥さんの圧に押されて、慎重にお守りの中を開ける。
〇〇:紙?
中には一枚の紙が入っていた。恐る恐る紙を見ると、
"好き"
〇〇:え!?
僕は驚いて飛鳥さんのことを見た。
飛鳥:えへへ// 好き//
推しの本音を聞いた日は、推しに想いを伝えてもらった日だった。
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Finish