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運がいいかも、マネージャー。



中西母:アルノー、お餅食べる?

中西:食べるー!!


私は、こたつから上半身を出して、寝転がりながらテレビを見ていた。

至福...とはこの事だろう。

いつも出張続きの父母は、お正月に長く休みを貰えたらしい。


中西母:ほら、ちゃんと起きて。お餅出来たよ。

中西:んー....


テーブルの上にはすでにお雑煮が置いてある。


中西:いただきます....モグッ...んまぁ..

中西母:...........


母は、私が雑煮を食べる姿をじっと見ていた。


中西:なにぃ....ずっとこっち見てるけど..

中西母:あんた...やっぱちょっと太ったわね。

中西:なっ!? えっ!? はぁ!?

中西母:そりゃ、食べて寝てを繰り返してれば太るわ。

中西:えー...いやだー! 痩せないと...

中西母:学校もうすぐ始まるんでしょ?課題は終わったの?

中西:.......まだ...

中西母:じゃあ運動がてら図書館にでも行って、そのまま勉強して来なさい。

中西:えー....


そうしたいのはやまやまだが、中々こたつが体を離さない。


中西母:ほら!早く行く!

中西:ぎゃぁー! 無理矢理引っ張りだすなぁー!

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プシュー ガタンッ


中西:さぶいよ〜....


電車を降りると、肺に冷たい空気が満ちる。図書館は、駅から大分離れた所にある。

母はこれを見越して運動と言ったんだろう。


中西:こたつが恋しいよ〜.......あ....


一つ気づいてしまった。この前までは何も知らなかった事。ついこの間知った事。

駅から、図書館へ行く為には...

あいつの家の前を通らなきゃならない。


中西:......ま、まぁ...そんな偶然外に出てるなんて事あるわけないよねぇ..


普通に考えればそうなのだが、こういう時は悪い予感が気持ちを支配する。


"悪い"って言うのは、あいつに少し失礼か、、

〜〜

〜〜

前に、あいつを看病しに行った時に通った覚えがある道に出た。


中西:.......///


その時のことを思い出して、恥ずかしくなる。


ダムッ ダムダムッ


中西:お?


聞き覚えのある音がした。


"久保家"の表札の前を、恐る恐る通りかかる。


中西:あ.....

〇〇:ん?....あれ、マネージャーじゃん。何してんの?


庭で、汗だくになりながらバスケットボールをついていたのは、あいつこと〇〇だった。


中西:何してんの?

〇〇:見りゃわかるっしょ。バスケだよ、バスケ。


私と話しながらも、ボールをつく。年が明けたというのに、相変わらず敬語を使わない。


中西:...お正月もバスケしてんだね。

〇〇:お正月? もう一週間くらい過ぎたじゃん。

〇〇:あれ笑 もしかしてまだお正月気分抜けてない?笑

中西:いいだろー! 楽しいんだからー!

〇〇:ふっ笑 ....だからか。

中西:だからかってなんだ!

〇〇:ちょっとぽっちゃりしたの笑

中西:なっっっ.....ぬぁーにー!!!


クソ生意気な小僧め....貴様こそ...


中西:〇〇こそ、寂しいお正月送ってそー! だからこんな寒い中一人寂しくバスケしてんだ!部員で行った初詣も〇〇だけ来なかったしね!

〇〇:あぁ....まぁそうかも笑

中西:え?

〇〇:父さん母さん帰ってこなかったし...姉ちゃんは帰って来たけど、今日いないかんなー...

〇〇:初詣とか何年行ってないんだろ....


そう言って〇〇はエアーでシュートフォームをした。


中西:...........


これは...申し訳ない事をしたかもしれない。


〇〇:あ、そうだ。

中西:ん?

〇〇:近くに神社あるからさ、一緒に行こうよ。

中西:へ?い、一緒に?

〇〇:うん。行こ。久しぶりに行きたい。

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〇〇:とーちゃく。

中西:あんた....神社にまでボール持ってこなくていいじゃん...


〇〇は、歩きながらボールをハンドリングしていた。


〇〇:いいじゃん。神様にこんな努力してんだから、勝たせてくださいってお願いすんだよ。

中西:お願いする事、口に出しちゃダメ。

〇〇:あ、そなの?....じゃあ他の事お願いしよ。


鳥居をくぐり、真ん中を避けて歩く。

前は嫌だったけど...何となくこいつの隣を歩くのも...悪くない。


〇〇:5円でいいよね。

中西:うん。


お賽銭にお金を投げ入れて、鐘を鳴らす。

二礼二拍手一礼。〇〇と拍手のタイミングが全く一緒だった。


中西:(んー...2回目だから何お願いしよ...部活の事はもう済んだし...あ...私今年から受験生か..)

中西:(結局、高校生活で恋愛とかなかったなぁ..高三で恋愛するか?...いやぁ...相手もいないし...)


そんな事を考えていると、頭に浮かんだのは〇〇の顔だった。


中西:(え...〇〇...いやいや...ないない// あんな生意気な奴ないって///)

〇〇:ぷっ笑

中西:ん?


横を見ると、私の顔を覗き込んで笑っている〇〇がいた。


中西:な、なによぉ...

〇〇:いや、そんな長い事手合わせて何お願いしてんのかなぁって笑 顔赤くなって来てるし、何考えてんの?笑

中西:なっ...は、はぁ!? べ、別にぃ?


そんな長い事手を合わせていたのか...。


中西:〇〇こそ何お願いしたんだよー!

〇〇:それは...マネージャーともっと話せますようにって。

中西:へ?


え?


〇〇:ぷっ笑 うっそー笑 

中西:はぁ!?//

〇〇:顔赤くなってるよ笑 本当のお願いは口に出しちゃダメって言ったの、マネージャーじゃん笑

中西:ぐぬぬぬぬ.....舐め腐りおって...


ちょっと期待した私がバカじゃないか。

.....期待した?...なにいってんだ...//


〇〇:あ、おみくじあんじゃん。やろ。

〜〜

〜〜

〇〇:あれ、マネージャーは初詣でおみくじ引いたの?

中西:引いたよ。もちろん大吉。

中西:あ、そうだ。運が良かった方が勝ちね。

〇〇:なんそれ笑 まぁ、やるけど。


お金を支払い、二人同時におみくじを手に取った。


中西:えぇっと....あ!また大吉だ!やった!


また大吉だった。今年は運がいいのかも。


中西:〇〇は?

〇〇:..........小吉。

中西:はいー!私より運悪いー!

〇〇:くっそ....


〇〇は小吉のおみくじをじっと見ている。次第に、何故か顔が赤くなっている。


中西:まぁまぁ、悪い事あったなら結んでいくといいよ。確か利き手と逆で結んでいくといいんだよ。

〇〇:いや.....持っておく。

中西:え、なんか良い事書いてあったの?

〇〇:まぁ、うん....一個だけだけど...

中西:見してよ。

〇〇:絶対やだ。


そう言われると、人間は見たくなるものだ。


中西:えい。

〇〇:あ!ちょっ...まっ...


〇〇の手から、するりとおみくじを奪う。


中西:えーと..なになに...


確かに良い事は書いてないな....じゃあ〇〇が結んでいかないのはなぜ?

当たり障りのない事ばかり書いてある小吉のおみくじを見る。


中西:あ.....


恋愛運 運命の相手は、すぐ近くにいる


中西:ふぇ?


横を見ると、〇〇は顔をさらに赤らめて、手で覆い隠している。


〇〇:いや...だから見ないでって言ったじゃないすか...///

中西:.............


いや...それってもう...え?...いやいや..


中西:いやぁ..え?...あはは...えぇー...

〇〇:..........


神社に、何とも言えない空気が広がる。


〇〇:......マネージャーのも見せろ。

中西:あっ!


今度は〇〇におみくじを取られてしまった。


〇〇:なになに....体調 すぐ太るから気をつけろだって。

中西:なっ!? そんなこと書いてないだろぉー!

〇〇:あははは笑


そうそう。この感じこの感じ。私と〇〇はこんな感じの空気感がいい。


じゃないと...


さっきの空気だと....なんか恋人みたいじゃないか。


〇〇:はぁ...笑った笑 そろそろ帰ろ。

中西:好き勝手笑いおって...


笑っている間も、〇〇とは目が合わなかった。おまけに顔まで赤くして....


くそぅ....可愛いって思ってしまったじゃないか...

〜〜

〜〜

??:あ!〇〇だ!

??:.....あの子だれ?


そんな中、神社を遠くから見ている女性が一人。


??:....愛しの弟に手を出すとは....許さん...

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             to be continued?

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