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行政はなぜスタートアップを支援するのか? #078KOBE で開催された「行政×スタートアップ」のセッションが面白かったので内容をまとめてみる

5/2,3の2日間(前夜祭入れたら3日)で開催されていた「078KOBE ONLINE」の中の「行政はスタートアップの夢を見るか? ー仙台・姫路・芦屋・神戸の、最先端の行政xスタートアップー」が面白かったので、復習がてらその内容をまとめてみたいと思います。

31:50~ 該当セッション始まります

神戸市役所の歴代スタートアップ支援担当が揃い踏み&仙台市・芦屋市の事例紹介

自分がスタートアップのクライアントを多く抱える特許事務所に所属していることもあり、昨年神戸に移住してから、

・500 KOBE ACCELERATOR

・Urban Innovation Japan(Urban Innovation Kobe)

・UNOPS誘致

など、神戸市のスタートアップ支援施策の多さには興味を持っていました。

今回のセッションでは、これらのプロジェクトの企画から実施までを神戸市職員として進めてきた3名

・多名部 重則さん
神戸市・広報戦略部長兼広報官。2020年3月まで神戸市の新産業課長を務め、上記施策を主導している。情報学(博士)。
※日本の行政の人で理系博士持ってる人初めて見た気がします…

・吉永 隆之さん
Urban Innovation Japan事務局 / NPO法人コミュニティリンク。2020年3月まで神戸市のイノベーション専門官として勤務。現在は独立されて、Urban Innovation Japanの全国展開に向けて活動中。
※神戸に移住してから2度ほど、神戸の医療産業やスタートアップ事情についてお話聞かせていただきました。

・中沢 久さん(モデレーター)
神戸市の現役イノベーション専門官。Urban Innovation Japanの運営を担当。

さらに、他自治体の事例紹介として

・白川 裕也さん
仙台市のスタートアップ支援担当。Sendai for Startups!など担当。
※所属事務所のメンバーが「TOHOKU GROWTH Accelerator」の「スタートアップと知財戦略」のセッションに登壇したことがあり、勝手に親近感がわいてました。イベントページを見てみたら、「スタートアップと都市」セッションでは白川さんも登壇していた模様

・筒井 大介さん
芦屋市のマネジメント推進課。総合計画や行政改革を担当しながら、Code for Kobe・Code for Japanと連携し、地域フィールドラボ・データアカデミーなどを実施し、データ利活用を推進。総務省地域情報化アドバイザー。

と、なかなか豪華な顔ぶれでした。登壇者に関連する過去記事を漁るだけでも勉強になる…

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登壇者の様子。視聴者だけでなく、登壇者もオンラインで参加してました

セッション構成は下記の通り。

31:50~ オープニング・登壇者自己紹介
43:41~ 登壇者が考えるスタートアップの定義とは
53:30~ なぜ行政がスタートアップを支援するのか
1:10:16~ 具体的にどのようにスタートアップを支援しているのか
1:28:28~ 登壇者が考える今後の展望

このnoteでは、自分が特に興味深かった部分にフォーカスして内容や所感など書いていこうと思います。

なぜ行政がスタートアップを支援するのか

モデレーターの中沢さんが「けっこう重たい話題になるかもしれませんが…」と切り出したのが、「なぜ行政がスタートアップを支援するのか」というテーマ。市場原理で生き残ったスタートアップだけが存在すればいいのではないか、地域への経済的なインパクトとしてはスタートアップ支援は決して大きくないではないか、という問いに対して、各登壇者がコメントしていきました。

仙台市の白川さんは「行政の仕事は、地域の持続可能性を高めることと思っている。地域に働く場所がないと人は残らない。その観点で考えると、地域に多様な働き方があるべきで、おしゃれなカフェで働きたい人もいれば、社会課題を解決したい人もいれば、スタートアップで働きたい人もいる。」とコメント。おしゃれなカフェとスタートアップを「地域の働き方の多様性」という観点で同列に見る目線はなるほどなと感じました。

続いて、芦屋市の筒井さんは「これまでの行政は、自動販売機のように税金を投入されて型にはまったサービスを提供することに特化していた。今はそれではだめで、スタートアップと一緒に、お互いリスクを取って新しいサービスを作っていかなければいけないと感じている」とコメント。さらに、「スタートアップを支援している=開かれた自治体というアピールにもなる」という話があり、これには他登壇者も大きくうなずいていました。

神戸市のスタートアップ支援を立ち上げた多名部さんは「雇用創出や自治体のブランディングより、もう少し先を見据えてスタートアップの支援をしている」と話し、その原点となった体験を紹介。

2015年頃にオープンデータ・オープンガバナンスについてロンドン・ニューヨーク・サンフランシスコに視察に行った際に、「オープンガバナンスに取り組む中で、行政内の仕事の仕方も、市民とのインターフェースも、ICTで大きく変革しようとしていると感じた。そして、その変革に行政のカウンターパートとして関わっている事業者が、日本でいうSIerや大手ベンダーではなくスタートアップや若いエンジニアたちだった。さらに、市役所側のインターフェースになっているのも民間から転身してきた人だった」とコメント。今回登壇している吉永さんが2016年に外部人材としてイノベーション専門官として採用(その後、中沢さんも同じ枠で採用)されているのは、この視察結果を受けてのことなのかもという気がしました。

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オープンガバナンスで開く地域の未来 より引用

神戸市がスタートアップ支援施策を始めた最初のころは「行政の変革」との結びつきが明確になっていなかったとのことですが、Urban Innovation Kobeの取り組みを経て「スタートアップ×行政」の意味が明確になり、さらにUNOPS誘致を経て、「世界の社会課題に向き合うスタートアップを支援することは、行政がやるべき仕事である」と、行政とスタートアップの関係についてその位置づけが明確になっていったとコメントしていました。

吉永さんも、自身の原体験である東日本大震災の復興プロジェクトの話を紹介。「福島県浪江町で行政の中に新しいテクノロジーを導入する取り組みをしていたが、いわゆる委託事業で持続可能性が低いと感じていた。テクノロジー導入の持続可能性を模索するうえで、スタートアップとの協業という選択肢が注目されるようになってきたと考えている」とコメントした。

最後に中沢さんからUrban Innovation Japanの取り組みについて、「行政の中で説明するときは、『調達の改革だ』と話すようにしている。それによって、これまで解決できなかった課題が解決できるようになれば行政としてはやる価値がある。それが結果的にスタートアップの支援にもなっている」と説明。行政・スタートアップ・市民など、プロジェクトに関わるプレイヤーそれぞれにメリットがある三方良しな設計になっているなと改めて感じました。

・地域の働き方の多様性という観点では、地域におしゃれカフェがあることとスタートアップがあることは同じ
・これまでの行政は自動販売機のように定型の調達をしてきた。行政の調達改革のパートナーとしてスタートアップとの協業が有効
・スタートアップこそ、持続性を持った変革のパートナーになり得る

など、これまで見えていなかった行政とスタートアップの関係性が可視化されたように思います。

とても仲が良さそうな神戸市のスタートアップ支援メンバー

セッションの内容自体ではないんですが、印象的だったことを補足。

「支援施策を始めたとき、神戸にはスタートアップらしい会社はほぼ無かった」という多名部さんは「いかに神戸の外からスタートアップを呼び込むか、起業家やスタートアップが挑戦できる街として神戸をブランディング化するか、を考えていた」とコメント。

「他自治体で一度も行われていない、国内初の施策に絞って進めてきた」「決断は大胆に。決断した後の行政内での説明は丁寧に。」など、多名部さんがこれまでの取り組みを楽しそうに語り、元部下であった吉永さん・中沢さんがとても良い笑顔で聞いているのがとても印象的でした。会場でのイベントに比べて、登壇者の表情などがアップで物理的によく見えるのもオンラインイベントの1つの魅力のように思いました。

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多名部さん(上段中央)の話を聞いている中沢さん(上段左)、吉永さん(下段左)。みんな楽しそう。

すごい良いチームだったんだろうなぁと思いつつ、自分もせっかくスタートアップに関わる仕事をしながら神戸に来たので、この皆さまとなんかしら一緒にお仕事できるといいなと思いました。

078KOBEについて

最後に本セッションが開催された「078KOBE」について簡単に紹介しておきます。

テクノロジー、エンターテイメント、エデュケーションを横断的させて、行政、企業、教育機関など、異ジャンルが交わり、実験都市を推進する市民参加型フェスティバル、それが「078KOBE」

例年は毎年5月に開催されているのですが、新型コロナウイルス流行の影響を受けて、フェス自体は8~9月に延期。トークセッションなど、一部のセッションをオンライン配信する「078KOBE ONLINE」が5/2,3に開催されることになりました。

自分もまだ参加したことがないので、コロナウイルスの状況次第かとは思いますが、延期になった他企画についてもぜひ参加したいと思っています。

078KOBE ONLINE初日には「078KOBE」も含めた国内4フェスティバルの実行委員長・事務局長が集まって、都市型フェスティバルについて語るセッションも放送されてます。自分はまだ見れていないですが、こちらも後で見てみようと思ってます。

1:52:40~ から都市型フェスの未来に関するセッション

このセッションと前夜祭については、下記アカウントが内容ツイートしてくれてるので気になる方はぜひこちらもどうぞ。

執筆:@tech_nomad_

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