"情報"に価値をつける
「通信社」は「新聞社」とどう違うのか?
現在、新聞やメディア情報には「ワシントン25日=ロイター共同」や「AFP時事」などの文字が記事の頭についている。この「ロイター」や「AFP」が「通信社」と呼ばれるものである。
各新聞社は、それぞれ海外に支局や通信部を置き、各国・地域から記事を配信しているが、一つの新聞社がカバーし得る地域には限界があり、地上のすべての地域に取材拠点を置くことは不可能である。そこで、新聞社は通信社から配信される記事を買い、文頭にその記事の配信を受けた通信社の名前を書き、責任の所在をはっきりさせたうえで自社の記事として紙面に載せている。
ロイター通信社は、1875年、日本が開国して以来初めて特派員を派遣してきた通信社である。ロイターの歴史を調べると世界三大通信社の一つといわれる、AFPの前身であるフランスのアヴァス通信社にいきつく。
アヴァス社の開業者シャルル・アヴァスは、1832年にパリに事務所を開設した。当時の通信手段は、馬車や飛脚便、そして腕木通信などが一般的であった。
アヴァスは、こうした時代に「伝書鳩」という手段を使って、ブリュッセル・パリ・ロンドンを結ぶニュースを空輸させた。彼はこうして得た情報を取引所の会社員や銀行・商社に売り込むことで「情報」に価格がつくことを経験した。
このアヴァス事務所で翻訳係を務めていたのが、後にロイター通信社を作ったドイツ出身のユダヤ人、ポール・ジュリアス・ロイターである。ロイターは1851年、ロンドンにある株式取引所の中に、従業員である12歳のメッセンジャーボーイ1人と2部屋の小さな事務所を開設する。
時はビクトリア女王の統治中期にあたり、イギリスは自由貿易体制の下で世界の富の7割を占めるともいわれた繁栄の直前にあたる時代であった。
彼は当初、この世界の中心たる金融街で、開通した英仏海峡の海底電線を使い、ヨーロッパ大陸からの金融関係ニュースを輸入し、「ロイター速報」として売った。つまり金融街で情報を売ることから出発したのである。
AFP、ロイターともに情報をいかに速く収集し、情報に価値をつけて配信するか、当時の新しい手法をいち早く取り入れる事で、注目され成長してきた。