朝、目が覚めてもベットからすぐはでない。カーテンも閉め切ったままで、とりあえずもう一度目を閉じる。そのまま二度寝に入ることも多々ある。仮に目が覚めても、ベットの中でうねうねしているか、充電器につないである携帯を引っこ抜き、SNSで情報をあさる。昨晩も寝付くまで見ているので、そんなに更新はされていない事を確認して、携帯を閉じる。 朝の尿意は一番ベットから出させる力を持っている。怠いなぁと感じながら体を起こす。近くに転がっているリモコンを手に取り、テレビをつけて、トイレに行く。
六畳一間のアパート、売れない芸人、上原武田。 男二人住まい。 そこに現れる幽霊。 上原 「折り入ってお願いがあります。」 武田 「毎晩毎晩、押し入れでシクシクシクシク泣かれているあなたに。」 幽霊 「・・・・・」 上原 「あのぉ・・」 幽霊 「・・・びっくりしてます。」 上原 「しゃべった。」 武田 「うんしゃべった。これは行ける!」 幽霊 「いやいやいやいや・・・そもそもですよ。私、死んでますし・・・」 上原 「やっぱり、幽霊だ。」 武田 「お陰様で、ここの家賃安くて助か
二人 「はいどうも」 若杉 「若杉です」 齋藤 「齋藤です」 二人 「今日テコです。」 若杉 「すっかり桜も散りまして、春の終わりを感じますね。」 齋藤 「そうですね。お花見なんかしました?」 若杉 「今のご時世、しててもしたっていえないんだから聞かないで。」 齋藤 「あらあら」 若杉 「所で齋藤君。この時期と言えば入学式ですよ。」 齋藤 「ちょっとすぎましたけどね。」 若杉 「いいのよ。4月は全部入学式で。」 齋藤 「拡大解釈。」 若杉 「ちょっと久々にどうですか?」 齋藤
枕 「随分とご無沙汰をしてるような感覚になります。三週間に一遍のこの講座であります。桜の季節も過ぎてしまいましたねぇ。「行く春や 鳥啼き魚の 目は泪」なんて歌を松尾芭蕉も詠っております。過行く春に鳥は悲しく啼き、魚は目に涙をためてその春を見送るのでしょう。春と言うのは旅立ちの季節でもあります。幼稚園から小学校に上がり、小学生は中学生へ、これも一つの別れであり、旅立ちであります。まだまだ、小さい背中に大きなランドセルを背負う姿なんてのは一入の思いでございますね。 皆さんの中にも
飲み屋の閉店。 店が閉まる間近、店の中には 客一人と店主一人 店主 「お客さん、料理どう?」 客 「美味しいです。お値段も安いし、良いでよね。」 店主 「ありがとうね。でも、このお店今日で閉店なんだ。」 客 「張り紙見ましたよ。寂しくなりますね。」 店主 「せっかく気に入ってもらったのに・・・」 客 「あ~、明日からどこのお店いこうか・・・」 店主 「お客さんこの店初めてかい?」 客 「十年通ってます。」 店主 「えっ・・・」 客 「毎日来てました。」 店主 「・・・・えっ
二人 「はいどうも今日テコですよ」。 若杉 「というわけでですね。」 齋藤 「どういうわけですか?」 若杉 「優君はグルメバーガーと言う食べ物知ってますか?」 齋藤 「グルメバーガー?」 若杉 「やはり知りませんか。」 齋藤 「はい」 若杉 「簡単に説明しますと。オリジナルハンバーガーです。」 齋藤 「マックだってロッテリアだってモスだってオリジナルだろ!」 若杉 「違うんだよぉぉぉ。もちろん各店舗もおいしいさ。もうすっかり日本人にもおなじみの味さ。」 齋藤 「私は三角チョコ
枕 えぇ~最近は少しづつ暖かい日も多くなってまいりました。とは言ってもまだまだ、寒い日もあります。昨日はポカポカしてたのに、今日は震えが出るほど寒い。一枚羽織ってくかぁ、なんて、外に出ると昼頃には暑く成る。温度調整が中々難しい季節になってまいりました。朝晩の冷え込みと、昼の陽気。中々間が取れないものでございます。 しかしまぁ、なんといってもこの陽気、冬の間はブルブルと震えて縮こまった体が、グーっとほぐされていくような、何とも気持ちの良いことでございます。しかしまぁ、弊害と
昼間、ごみ捨てに出た男二人が偶然出会う。 井戸端会議。ご近所さんである。 井上 あ、こんにちは。 坂上 こんにちは。どうもどうも。 井上 最近はこの辺りもめっきり静かになりましたね。 坂上 本当に。若い人間はどんどん都会に出てしまってねぇ‥ 井上 坂上さんの所ももう始まりました? 坂上 うちはむしろもう終わりましたよ。 井上 ああ、お疲れさまでした。 坂上 いえいえ、ウチは大分昔からだったんで。もう慣れてしまってむしろ今、寂しいくらいですよ。 井上 そうだ
若杉 はい。 齋藤 どうも。 二人 今日テコです。 若杉 突然なんですけどね。 齋藤 ハイハイ 若杉 先日、人生初の胃カメラをね、飲み込んできたんですよ。 齋藤 良いね。 若杉 いいの? 齋藤 もう、我々も中性脂肪蓄えた立派なおっさんですからね。ちゃんと検査するのは良い事ですよ。 若杉 それな。そう思うよ。でもね、 齋藤 でもねと! 若杉 病院に笑いが一つもないのよ。 齋藤 必要ないからじゃないですか? 若杉 そうかもしれないんだけどもね、あんなん
枕 いやぁ…のびましたなぁ。緊急事態宣言。いつまでこの話題をまくらにするのでしょうね。まぁ、特にしなくてもいいわけですけど、ついついこの話になってしまいます。久々に会った友人知人なんかに、一発目に声をかけるのは「そっちどう?コロナ影響ある?」なんて聞いてしまいます。ちょっと前、本当に昨年の頭や、一昨年なんか何の気兼ねなく暮らしていたわけでございます。仲間と飲みに行くのも、夜思い立って飯屋に行くのも自由なものでした。今なんて八時まででしょ?ちょっと仕事が押したら夜ご飯にありつけ
#3 秋・誘い 男は一人山道を歩いていた。夏も終わり、空気はすっかりと秋のそれに代わっていた。日も暮れかけた薄暗い山道をたった一人、何かに誘われるように歩いている。服装は軽装でハイキングや登山と言った感じは微塵もしない。どちらかと言えば都内のカフェにでも行きそうなラフな服装であった。男は歩く。カバン一つを持ち、布の帽子を目深に被り、微かに息を切らせながら山を登る。それほど標高の高い山ではないが、日の沈みかけた今頃を狙ってわざわざ登る人間もいない。整備された山道を登ると、そこ
#2 呼び声 【山廻の衆】 その昔、四国のとある山中に又吉という盗賊を束ねる頭領がいた。又吉は毎晩のようにその峠を通る人間を男ならば身包みを剥いでは殺し、女であれば老若問わず、身包みを剥いではいたぶり、犯し、殺した。欲望のままに動いていたその盗賊も、ついにある夜、町の役人に追われる日が来る。手下はその場で次々と打ち取られ、又吉は必死に一人、山中を逃げていた。山の事ならだれよりも詳しい。そう自負があった。役人の追っ手をまき、山中で息をひそめ身を隠す。明るくなる前にこの山を抜け
#1 かわり・まじわり そこに居たから悪いのだ。私は悪くはない。そこに居たあなたが悪い。私は悪くはない。その場に居なければあなたと出会わなければ私は何もすることはなかった。あなたはただ、道を歩き、私も道を歩く。たまに交差することが起きようとも、それは大した交わりではなかったはず・・。あなたは私に触れてしまった。あなたは私を認識してしまった。それと同じように私もあなたを感じてしまった。ただそれだけの事。ただそれだけの世界はゆがんでいた。まっすぐに居ようとすればするほど、他の人
チャイムが鳴る 校舎裏に呼び出され大谷が向かうと、 知らないおじさん北村が立っている。 二人に面識はない。 北村 「 いいねぇ。こう言うの!実にいい!青春だね。」 大谷 「はぁ・・・」 北村 「なんだよ!もっとこうさ、ワクワクして行こうよ。」 大谷 「・・・・う~・・・ん・・・」 北村 「 こういう甘酸っぱい思い出ってのはね、中々ないものなんだよ。今の内に満喫しとかないとねぇ。」 大谷 「あの…」 北村 「大人になってからでは味わえないんだよ。あ、こ
二人 「 はいどうもぉ。今日テコです。」 若杉 「 はじめましての方もいらっしゃると思いますので自己紹介を。若杉啓と申します。」 齋藤 「わたくしが齋藤優と申します。」 二人 「名前だけでも憶えてくれたらうれしいです。」 若杉 「もうすっかり冬だね。」 齋藤 「寒いよねぇ。」 若杉 「寒いねぇ。」 齋藤 「寒い。」 齋藤 「もういいよ!寒いばっかじゃないか!」 若杉 「ちょっとあったまりましたか?」 齋藤 「何が?」 若杉 「 怒ったか
枕 「 あぁ~…旅は道ずれ世は情けなんて言葉がございます。今のご時世、思 い立って簡単に旅に出る事が中々難しい世の中になってしまいました。先日の正月やこれから来る大型連休など、毎年旅行に行くのを楽しみにしていた方々も少なくはないと思います。海外や遠く離れた南の島なんて大それた旅行ではなくても、同じ関東圏内でフラッと休みの日に出かける。所謂小旅行ってやつでございますな。それすら、中々難しい世の中だ。私なんかもね、その日に思いついて、車をピューっと走らせて温泉になんか浸かり