利尻島は「北のサイクリング聖地」
台風10号が日本列島を横断した8月末。札幌から稚内まで車を走らせ、最北の島々を旅してきました。まずは自転車で1周約60キロを巡り、見所満載だった利尻島の魅力を紹介します。
稚内発7時15分のフェリーに乗るため、前日は無料駐車場の「北臨港北駐車場」で車中泊しました。隣りの道の駅にはキャンピングカーなどがびっちり。芝生でテント泊している旅人もいます。
道の駅はJR稚内駅に併設しています。駅構内の「セイコーマート」は午前6時にオープン。ここでホットコーヒーと海苔弁当を買い、徒歩10分のフェリーターミナルに向かいました。
2008年にリニューアルオープンしたターミナルは、立派な施設。地方都市の空港のような雰囲気です。定時に出発したフェリーは1時間40分で利尻島の鴛泊(おしどまり)港に着きました。
鴛泊港には島内の「旅館 雪国」が営むレンタル自転車があります。かご付きのママチャリにマウンテンバイク、ロードバイクの3種類から選ぶことができ、午前9時~午後5時までの1日フリーで1500円。この日、雪国で宿泊予定の私は半額の750円でロードバイクを借りました。うーん、島にしては安い!
利尻島の巡り方ですが、朝に出発するのであれば私は時計回りをおすすめします。
地図を見ればイメージできますでしょうか?
湧き水の補給がスムーズであることに加え、西岸の街・沓形(くつがた)で遅めの昼食を取れること、そこからは残り15キロ程度なので、食事を終えた後は余力でペダルをこいでゴールできることなどが理由です。
自転車で鴛泊港から5分足らずの所に「旅館 雪国」はあります。建物の隣に湧き出ているのが「長寿の泉水」。宿泊客じゃなくても、ここで水を汲むことができます。時刻はまもなく午前10時。よし出発だ!!
出発して1時間余り。石崎灯台を越えて進むとまもなく、島最大の湖沼「オタトマリ沼」を見下ろす展望台に到着します。その名も「白い恋人の丘」。石屋製菓の「白い恋人」のパッケージに描かれている利尻山が、ここからの眺めに近いため名付けられたそう。この日午前は小雨と曇り模様で、残念ながら秀峰を望むことはできませんでした。
展望台を降りてオタトマリ沼へ。6年前に天皇皇后両陛下が訪れており、行幸の記念碑も建っています。雨が止んだこともあり、歩いて20分ほどの周回路の散策も楽しみました。土産と飲食の店も2軒あるので、お腹がすいた場合はここで食事もできます。
そう言えば鴛泊、沓形と、オタトマリ沼のある鬼脇の3カ所にはセイコーマートがあります。それぞれ15~20キロほどの等間隔にあり、栄養補給がしやすい点もサイクリング向きの島と言えるでしょう。
オタトマリ沼の先には南浜湿原も。ここでも自転車を止め、野鳥などの観察を楽しみました。
中間地点を越えてまもなく。利尻山登山口にある「甘露泉水」と並んで有名な「麗峰(れいほう)湧水」の汲み場が見えてきます。周回コースの2カ所で水を補給できるため、500ミリリットルの水筒1本で走れるのは有難いです。
出発から約4時間。西岸の沓形に到着。この集落にはミシュラン北海道にも掲載されている利尻昆布だしのラーメン店「味楽」がありますが、午後2時閉店に間一髪で間に合いませんでした。
沓形には飲食店が割と多くあります。私がこの日選んだのは、昆布問屋だった商店兼古民家を改装し、10年ほど前にオープンした「カフェ自休自足 利尻に恋し店」。人気メニューの石焼きチーズカレーを味わいました。
店の奥にある石蔵はギャラリーになっており、無料で見学可能。6年前に来訪した両陛下にプレゼントされたという「利尻山」のアートは昆布やウニなど島の動植物を使ってつくられた労作で見ごたえがありました。
午後3時過ぎ。ご飯も食べたし、後はのんびり行きましょう。集落を抜けた所にあるウニ種苗生産センターでは稚ウニの生育の様子を見ることができます。
すぐ先には、利尻の名物と言ってもいい乳酸飲料を扱う「ミルピス商店」があり、にぎわっていました。1本350円のミルピスはすっきりして飲みやすく、疲れた体を癒してくれます。よし、ゴールはもうすぐだ。
沓形から鴛泊間は自転車専用道も整備されているのですが、遠回りする箇所もあるため、車道と併用しながら歩を進め、午後5時に鴛泊港に到着。宿泊客なので旅館まで自転車で向かい、乗り捨てることができました。
私は13年前に礼文島、昨年は奥尻島(https://note.com/tec_note1133/n/n5386feaf3c2d)も自転車で周っており、北海道の三大離島を自転車で踏破しました。結論から言うと、サイクリングをして楽しいのは断トツで利尻でした。
奥尻はほぼ同じ大きさで周回道路もありますが、アップダウンがけっこうあり、電動自転車でなければ延々と自転車を押して歩く必要があります。
礼文は面積的には少し小ぶりですが、周回道路がなく、南の香深(かふか)港から北端のスコタン岬まで同じ道路を折り返す必要があり、単調な割に疲れました。今回の旅で港のレンタル自転車屋を再チェックしたのですが、料金が1時間500円と高い割に、走りにくいママチャリしかない点もマイナス要素でした。
利尻島は旅館の宿泊客じゃなくても1500円で60キロ余りのサイクリングを楽しめます。4年前に走った「瀬戸内しまなみ海道」も距離は75キロ余りでしたが、島ごとに陸地へ降りる起伏があり、距離以上に疲弊しました。
真夏に60キロもの距離を風を受けながら爽やかに走ることができる。各所に見どころがある。食べ物はもとより、湧き水も2カ所で補給できるという点で、利尻島を「北のサイクリング聖地」に認定します。